上 下
53 / 1,251
第2章 ダンジョンへ挑戦 ミナ、リン

53話 『鍛冶師』の取得

しおりを挟む
 ミナとの昼食後、再び鍛冶場に戻った。
 鍛冶の再開だ。
 しかし、その前に……。

「ミナ。午前中の鍛冶で、少しだけ気になる点があったんだ。素人から要らんアドバイスかもしれないが、聞くだけ聞いてもらえないか?」

 MSCにて、俺は『鍛冶師』のジョブを取得したことがある。
 本職として育ててはいなかったが、ある程度のコツみたいなものは知っている。
 MSCでの経験と知識がこの世界の鍛冶に通用するかは不明だが、言うだけなら損はないだろう。

「ええっと。聞くだけなら構わないのです」

 ミナがそう言う。
 彼女は職人だが、頑固者ではない。
 『素人は黙っとれぃ!』と言われなくてよかった。

「まずは……」

 俺は、いくつかのアドバイスをミナにしていく。
 温度設定やタイミングなどだ。
 ミナの基礎はかなりしっかりしているので、あくまでちょっとした指摘だが。

「なるほど。悪くなさそうなのです。いきなり試すのは怖いので、まずはいつもの材料で練習してみるのです」

「ああ。それがいいだろう」

 いきなりオリハルコンで試して失敗されると、俺も嫌だしな。

「よければ、コウタくんもやってみるのです?」

「お、いいのか? ぜひやってみたい」

 俺はそう言う。
 オリハルコンの武具の作成という重要な仕事の邪魔をしないように、午前中はおとなしくしていた。
 それに、職人の領域を素人が荒らすのも悪いしな。

 今から彼女が行うのは、特に珍しくはない材料での練習だ。
 失敗しても致命的な損失は出ない。
 彼女が誘ってくれているのであれば、俺がそれを断る理由はない。

「コウタくんは鍛冶の知識があるのです。ひょっとして、経験もあるのです?」

「うーん。知識は確かにある。しかし経験は、有るような無いような……。できれば、基礎から教えてもらえるか?」

 MSCとこの世界の差異により、大火傷などを負ってしまうのもマズい。
 経験者のミナから、指導をもらいたいところだ。

「わかったのです!」

 そうして、午後はミナに指導してもらいつつ、鍛冶の体験をさせてもらった。
 彼女と体が触れ合うことも多く、いろいろな意味で有意義な時間だった。

 そのかいあって、俺は無事に『鍛冶師』ジョブを取得した。
 『鍛冶師』『料理人』『剣士』などのスキルは、実は取得難易度が低い。

 逆に言えば、各種魔法使い系統のジョブの取得難易度が高いとも言える。
 裏ワザじみた取得方法を除けば、高い適正を持つ者じゃないとなかなか取得できない。
 また、取得条件が細かい一部の上級ジョブも取得難易度が高いと言えるだろう。

「コウタくんのアドバイスは、かなり役に立ちそうなのです! ありがとうなのです!」

 ミナが目を輝かせてそう言う。
 彼女は彼女で、俺のアドバイスをもとに鍛冶の手順やタイミングを再調整していた。

「ああ。喜んでくれたのなら、俺も嬉しいよ」

 よしよし。
 かなり友好を深められたようだな。

 俺は画面でミナの名前を確認する。
 黒色で表記されている。
 今なら、『パーティメンバー設定』で『悠久の風』に勧誘することができるだろう。

 しかし、タイミングが少し微妙か?
 ミナは、明日もオリハルコンの鍛冶をする予定だ。
 今日の練習の成果をさっそく試す感じである。
 大事な用事の前に、『パーティメンバー設定』という少し込み入った事情を説明するのは避けたほうが無難だろう。

「では、俺は明日から冒険者活動に戻るぞ。ミナは、鍛冶の続きだったな?」

「はいなのです。きっと、素晴らしい武具を作ってみせるのです!」

「楽しみにしているぞ」

 とりあえず、明日からの数日は俺、シルヴィ、ユヅキの3人で狩りをしよう。
 エルカ草原あたりなら、今まで通り無難に狩りができる。

 ダンジョン攻略やミッション報酬の経験値で、それぞれのジョブレベルが上がっている。
 それに、今日俺は『鍛冶師』のジョブを取得した。
 そのあたりを、一度整理しておくことにしよう。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬
ファンタジー
旧題 努力=結果  異世界の神の勝手によって異世界に転移することになった倉野。  実際に異世界で確認した常識と自分に与えられた能力が全く違うことに少しずつ気付く。  異世界の住人はレベルアップによってステータスが上がっていくようだったが、倉野にだけレベルが存在せず、行動を繰り返すことによってスキルを習得するシステムが採用されていた。  そのスキル習得システムと異世界の常識の差が倉野を最強の人間へと押し上げていく。  だが、倉野はその能力を活かして英雄になろうだとか、悪用しようだとかそういった上昇志向を見せるわけでもなく、第二の人生と割り切ってファンタジーな世界を旅することにした。  最強を隠して異世界を巡る倉野。各地での出会いと別れ、冒険と楽しみ。元居た世界にはない刺激が倉野の第二の人生を彩っていく。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

神様との賭けに勝ったので異世界で無双したいと思います。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。 突然足元に魔法陣が現れる。 そして、気付けば神様が異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 もっとスキルが欲しいと欲をかいた悠斗は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――― ※チートな主人公が異世界無双する話です。小説家になろう、ノベルバの方にも投稿しています。

処理中です...