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第1章 初級冒険者として活躍 シルヴィ、ユヅキ

32話 ユヅキの加入

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 冒険者ギルドの修練場で、チンピラ……もといアーノルドとレオンから稽古をつけてもらった。
 俺とシルヴィの実力に、彼らは感心していた。
 そして、彼らはユヅキやユーヤにも稽古をつけていた。

「よし……。だいたいわかったぜ」

「新人が順調に育ってくれて、アーノルドの兄貴も満足されているぜ! ギャハハハハ!」

 アーノルドとレオンがそう言う。
 彼らはチンピラ風だが、実は後輩冒険者への世話を焼く親切な人たちである。

「まず、コウタは基本はできている。お前に言うことは特にねえな。ただ、油断すれば万が一もある。気は抜くな。特に2人パーティだと、その万が一が起きやすいからな」

「チャンスがあれば、3人めのパーティメンバーを積極的に勧誘しろよ。ギャハハハハ!」

「わかった。そうしよう」

 彼らが言うことには一理ある。
 パーティメンバーが多ければ多いほど、安定感は増すだろう。
 目が増えることにより魔物や盗賊の奇襲を察知しやすくなるし、いざ戦闘のときも単純に戦力が伏せるからだ。

「シルヴィは、獣戦士としてはまあまあだ。だが、氷魔法使いとしてはまだまだ発展途上みたいだな」

「俺たちは、あいにく氷魔法は使えねえ。自力でがんばるんだな。知り合いに氷魔法使いはいるから、機会があれば紹介してやるよ。ギャハハハハ!」

「言われずとも、ご主人様のために頑張るつもりです!」

 俺もサードジョブに氷魔法使いを設定してあるし、ある程度は情報共有しつつ成長していけるだろう。
 単純にジョブレベルを上げていくだけでも、成長はできるし。

「ユヅキは、なかなかいい動きをしていたぞ。機動力を活かすには、もっと臨機応変な戦い方を身に着けてもいいかもしれねえな」

「土魔法使いのジョブを得れば理想的だが……。さすがにそう都合よくはいかねえか。何か環境を変えてみるのも手だぜ。ギャハハハハ!」

「わ、わかった。考えてみるよ」

 ユヅキのジョブは獣剣士だ。
 双剣を軽快に操り、敵を翻弄する。
 どちらかと言えば、攻撃力よりは機動力に長けた戦闘スタイルだ。
 ここに土魔法使いのジョブが加われば、確かに臨機応変な戦い方ができるようになるだろう。

 この世界には、各ジョブの裏技じみた取得方法はあまり広まっていない様子である。
 新たなジョブを得る際には環境を変えてみるというのが有効な選択肢の1つになっているようだ。

「ユーヤは、何かきっかけを掴めたようだな。見違えたぜ」

「太刀筋の1つ1つに込められている気迫が違う。何があったんだ?」

「俺は、コウタ兄貴のようになりたいと思っているんです! 命を救っていただいたので」

 ユーヤが、エルカ樹海での一件をアーノルドとレオンに説明する。
 ところどころ脚色されて美化されている。
 俺がまるで英雄のようである。
 実際には、迫りくるクレイジーラビットを必死に風魔法で迎え撃っていただけなのだが。

「……ほう、なるほどな。この7人で、エルカ樹海に挑戦したのか」

「危ねえところだったようだが、おかげで一皮むけたな。ギャハハハハ!」

「はい。俺はこれから頑張っていきますよ!」

 ユーヤが力強くそう言う。
 あのとき、彼は死ぬ一歩手前だった。
 結果的に見れば、あの件で成長できた側面もあるが。

 その後、『大地の轟き』の他の3人についてもアーノルドとレオンが評した。
 そして……。

「よし、いいことを思いついたぜ。お前たち『大地の轟き』は、俺たちに同行しろ。しばらく実戦で稽古をつけてやる」

「とはいっても、俺たちの本来のパーティメンバーがこの町に戻ってくるまでだがな! 長くても2か月くらいだ。ギャハハハハ!」

 アーノルドとレオンは、他の者と合わせてパーティを組んでいたようだ。
 今は何らかの事情により別行動であり、近いうちにこの町で合流予定といったところか。

「そ、それは勉強になりそうだね」

「よろしくお願いするぜ! アーノルドの兄貴!」

 ユヅキとレオンがそう言う。
 しかしーー。

「おっと。ユヅキは別だ。お前は、コウタのパーティに入れてもらえ」

「別のパーティで活動することは、いい経験になるだろう。それに、さすがに7人パーティになると報酬が不足しがちだという事情もある。ギャハハハハ!」

 パーティメンバーは多ければ多いほど安定する。
 それなのに、ほとんどのパーティは3~6人くらいだ。
 理由は、大きく2つある。

 1つは、隠密行動がしづらくなる点。
 魔物狩りなどで獲物に気配を察知され、場合によっては逃げられてしまう。

 もう1つは、報酬の問題だ。
 人数が多くなればなるほど、1人あたりの報酬は減る。
 それに、貢献度に応じた支払額の算定も難しくなる。

「え、えっと……。どうしよう?」

「いいじゃねえか、ユヅキ。アーノルド兄貴の言う通り、いい経験になると思うぜ。コウタの兄貴は構いませんか?」

 ユーヤが俺に話題を振る。

「ん? それはもちろん構わない。俺やシルヴィにとってもいい経験になるし、戦力としてもユヅキには期待できるしな。だが、ユーヤはそれでいいのか? 

「え? 何がです?」

「ユヅキとはいい仲だったんじゃ?」

 ユヅキは、『大地の轟き』の紅一点である。
 パーティメンバーのだれかとできていてもおかしくない。
 特に、ユーヤとは距離感が近かった気がする。

「ぷ、ぷはははっ! コウタの兄貴も、冗談を言うんですね」

「や、やめてほしいな。僕とユーヤがそんな関係だなんて……」

 ユーヤが笑い、ユヅキが渋い顔をする。

「そんな変なことを言ったか?」

「俺とユヅキは、兄妹ですぜ。コウタの兄貴になら、ユヅキを安心して任せられます。男と間違われるようなガサツな妹ですが、よければ仲良くしてやってくだせえ」

「むっ! ガサツは余計だよ。ユーヤ」

 ユヅキがそう抗議の声を上げる。
 この距離感の近さは、兄妹だからだったのか。
 要らん気を遣ってしまったな。

「ふむ。そういうことなら、遠慮なくパーティメンバーに迎えさせてもらおう」

 そしてあわよくば、俺の2人目のハーレムメンバーに……。
 いや、それはまだ気が早いか。
 ユヅキは、長くても2か月くらいの臨時メンバーだ。

 それに、そもそもシルヴィともそういう関係になっていない。
 分割払いを終えていないため、手を出せていないのだ。

「おうおう、話がまとまったようで何よりだぜ」

「さっそく、明日からこのパーティ割りで狩りを始めるぞ。ギャハハハハ!」

 そんな感じで、俺とシルヴィのパーティにユヅキが加わることになった。
 明日からの狩りも、より一層がんばっていこう。
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