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第1章 初級冒険者として活躍 シルヴィ、ユヅキ
27話 ランクアップ
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エルカ樹海での狩りの成果を、冒険者ギルドに報告しているところだ。
ユーヤが報酬の取り分の辞退を申し出たが、俺が却下しておいた。
ユーヤ、ユヅキ、シルヴィ、セリアたちの俺に対する好感度が若干増したような気がする。
「では、最初の取り決め通りの七等分で処理しますにゃ」
受付嬢のセリアがそう言って、処理を進めていく。
しばらくして、無事に処理が終わる。
「まず、これが報酬ですにゃ。お受け取りくださいにゃ」
俺たちは、それぞれ報酬を受け取る。
シルヴィの分は、そのまま俺に渡される。
別に、俺が彼女の稼ぎを不当に掠め取っているわけではない。
奴隷の稼ぎは、購入時の金額を上回るまでは全て主人のものであるという法律があるのだ。
とはいえ、あまり厳格なものではない。
日々の生活費などが購入時の金額に上乗せされていく。
その上、奴隷の稼ぎを漏れなく記録するのはそもそもムリがある。
実際のところは、そのあたりが合算されてうやむやにされる傾向がある。
いつまでも長く働かされる奴隷も多いとか。
さらに言えば、購入時の金額を上回るほど稼いだ後の稼ぎについても、『適正な割合』で主人のものとなる。
奴隷が自身を買い戻すことは、現実的にはなかなか難しい。
奴隷社会の闇である。
まあ、俺はそんなことをするつもりはない。
シルヴィの購入金額の分割払いが終われば、機を見て解放するのも悪くないだろう。
解放した途端に『はい、さいなら』と言われるとショックなので、それまでにがんばって好感度を稼いでおかなければならないが。
「続いて、ランクアップ査定ですにゃ……。むむむ! コウタさん、ユーヤさん、ユヅキさんがDランク昇格となりますにゃ!」
「ふむ。Dランク昇格か。遅かったような、意外と早かったような」
冒険者登録をしてから、1か月以上が経過している。
『マジック&ソード・クロニクル』の感覚で言えば、間違いなく遅い。
しかし、ここはMSCに準拠しているだけの現実世界である。
安全マージンなどにも気を配って活動している。
そのあたりを考慮すると、遅いとも言い切れないだろう。
「俺がDランク昇格か……。コウタ兄貴の手柄を横取りしたみたいで、なんだか喜べないぜ」
「ユーヤ。素直に喜ぼうよ。僕たちが今までがんばってきた分もあるんだし」
ユーヤとユヅキがそう言う。
今回のランクアップは、もちろん今回のエルカ樹海への遠征の功績だけではなく、今までに蓄積してきた功績が評価されてのものである。
ユヅキが言うように、過度に気にする必要はない。
そんな感じで、冒険者ギルドへの報告を終えた。
今回のエルカ樹海への遠征は、ハプニングもあったが収穫も多かった。
今後の目標は何にするか。
まずは、シルヴィが『氷魔法使い』のジョブを得ることかな。
それ以外にも、目標の候補はいくつかある。
じっくりと検討することにしよう。
--------------------------------------------------
コウタがエルカ樹海での狩りを終えて数日後ーー。
エルカの領主邸にて。
2人の少女が、バルコニーにて優雅にティータイムを楽しんでいた。
「ふうん? なかなか有望な新人が出たみたいですわね。1か月でDランクに昇格した、『風魔法使い』のコウタ殿ですか。興味深いですわ」
そう言うのは、ここの領主の娘、ローズである。
桃色の髪をたなびかせながら、彼女は楽しげに手元の書類に視線を落とす。
「……うん。それに、人族で『風魔法使い』の適正があるのは少しめずらしい。ティータはエルフだけど、『木魔法使い』の適正しかないから……」
そう言うのは、客人としてここを訪れているティータである。
彼女はエルフ族。
風魔法や木魔法は、エルフのお家芸であった。
『風魔法使い』に適正のある人族は、もちろん皆無というわけではないが、ややめずらしい。
ティータは緑色の髪をかきあげつつ、言葉を続ける。
「……少し、羨ましいな……」
「何にせよ、強力な冒険者はたくさんいるに越したことはないですわ。最近、エルカ樹海の西部に異変が生じているそうですし……」
エルカの町の西部に、エルカ樹海はある。
そのエルカ樹海の中でもさらに西部……つまり町から見て森の奥地に、異変が生じているのである。
「……うん。ティータたちも、それは危惧してる。だからこそ、この町と手を取り合ってともに立ち向かいたい……」
ティータは、エルフ族の特使としてこの町を訪れている。
優雅にティータイムを楽しんでいるのは、趣味が半分で、残りは領主の娘であるローズと交友を深めることが目的であった。
もちろん領主本人とも交友を深めるべきなのだが、それはまた別のエルフが担当している。
具体的には、ティータと同行してきた彼女の父親である。
エルフの中でも重鎮であり、発言力を持つ男だ。
彼らは彼らで、今頃は領主邸の別室で打ち合わせをしているはずである。
エルカの町と、エルフ族。
彼らは手を取り合い、ともに森の異変という脅威に立ち向かっていけるのだろうか。
そして、それに対するコウタの動向はーー。
未来は、まだ定まっていない。
ユーヤが報酬の取り分の辞退を申し出たが、俺が却下しておいた。
ユーヤ、ユヅキ、シルヴィ、セリアたちの俺に対する好感度が若干増したような気がする。
「では、最初の取り決め通りの七等分で処理しますにゃ」
受付嬢のセリアがそう言って、処理を進めていく。
しばらくして、無事に処理が終わる。
「まず、これが報酬ですにゃ。お受け取りくださいにゃ」
俺たちは、それぞれ報酬を受け取る。
シルヴィの分は、そのまま俺に渡される。
別に、俺が彼女の稼ぎを不当に掠め取っているわけではない。
奴隷の稼ぎは、購入時の金額を上回るまでは全て主人のものであるという法律があるのだ。
とはいえ、あまり厳格なものではない。
日々の生活費などが購入時の金額に上乗せされていく。
その上、奴隷の稼ぎを漏れなく記録するのはそもそもムリがある。
実際のところは、そのあたりが合算されてうやむやにされる傾向がある。
いつまでも長く働かされる奴隷も多いとか。
さらに言えば、購入時の金額を上回るほど稼いだ後の稼ぎについても、『適正な割合』で主人のものとなる。
奴隷が自身を買い戻すことは、現実的にはなかなか難しい。
奴隷社会の闇である。
まあ、俺はそんなことをするつもりはない。
シルヴィの購入金額の分割払いが終われば、機を見て解放するのも悪くないだろう。
解放した途端に『はい、さいなら』と言われるとショックなので、それまでにがんばって好感度を稼いでおかなければならないが。
「続いて、ランクアップ査定ですにゃ……。むむむ! コウタさん、ユーヤさん、ユヅキさんがDランク昇格となりますにゃ!」
「ふむ。Dランク昇格か。遅かったような、意外と早かったような」
冒険者登録をしてから、1か月以上が経過している。
『マジック&ソード・クロニクル』の感覚で言えば、間違いなく遅い。
しかし、ここはMSCに準拠しているだけの現実世界である。
安全マージンなどにも気を配って活動している。
そのあたりを考慮すると、遅いとも言い切れないだろう。
「俺がDランク昇格か……。コウタ兄貴の手柄を横取りしたみたいで、なんだか喜べないぜ」
「ユーヤ。素直に喜ぼうよ。僕たちが今までがんばってきた分もあるんだし」
ユーヤとユヅキがそう言う。
今回のランクアップは、もちろん今回のエルカ樹海への遠征の功績だけではなく、今までに蓄積してきた功績が評価されてのものである。
ユヅキが言うように、過度に気にする必要はない。
そんな感じで、冒険者ギルドへの報告を終えた。
今回のエルカ樹海への遠征は、ハプニングもあったが収穫も多かった。
今後の目標は何にするか。
まずは、シルヴィが『氷魔法使い』のジョブを得ることかな。
それ以外にも、目標の候補はいくつかある。
じっくりと検討することにしよう。
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コウタがエルカ樹海での狩りを終えて数日後ーー。
エルカの領主邸にて。
2人の少女が、バルコニーにて優雅にティータイムを楽しんでいた。
「ふうん? なかなか有望な新人が出たみたいですわね。1か月でDランクに昇格した、『風魔法使い』のコウタ殿ですか。興味深いですわ」
そう言うのは、ここの領主の娘、ローズである。
桃色の髪をたなびかせながら、彼女は楽しげに手元の書類に視線を落とす。
「……うん。それに、人族で『風魔法使い』の適正があるのは少しめずらしい。ティータはエルフだけど、『木魔法使い』の適正しかないから……」
そう言うのは、客人としてここを訪れているティータである。
彼女はエルフ族。
風魔法や木魔法は、エルフのお家芸であった。
『風魔法使い』に適正のある人族は、もちろん皆無というわけではないが、ややめずらしい。
ティータは緑色の髪をかきあげつつ、言葉を続ける。
「……少し、羨ましいな……」
「何にせよ、強力な冒険者はたくさんいるに越したことはないですわ。最近、エルカ樹海の西部に異変が生じているそうですし……」
エルカの町の西部に、エルカ樹海はある。
そのエルカ樹海の中でもさらに西部……つまり町から見て森の奥地に、異変が生じているのである。
「……うん。ティータたちも、それは危惧してる。だからこそ、この町と手を取り合ってともに立ち向かいたい……」
ティータは、エルフ族の特使としてこの町を訪れている。
優雅にティータイムを楽しんでいるのは、趣味が半分で、残りは領主の娘であるローズと交友を深めることが目的であった。
もちろん領主本人とも交友を深めるべきなのだが、それはまた別のエルフが担当している。
具体的には、ティータと同行してきた彼女の父親である。
エルフの中でも重鎮であり、発言力を持つ男だ。
彼らは彼らで、今頃は領主邸の別室で打ち合わせをしているはずである。
エルカの町と、エルフ族。
彼らは手を取り合い、ともに森の異変という脅威に立ち向かっていけるのだろうか。
そして、それに対するコウタの動向はーー。
未来は、まだ定まっていない。
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