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第1章 初級冒険者として活躍 シルヴィ、ユヅキ

16話 エルカ樹海への挑戦の検討

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 シルヴィとともに冒険者活動を始めて、2週間ほどが経過した。
 エルカ草原での狩りは順調だ。

 この2週間で、多少の金もたまった。
 ルモンドへの分割払いに必要な額は稼げていけそうだ。

 余剰金で、もしものときのためにポーションを買っておいた。
 まあ、最下級のものだが。
 これで、俺やシルヴィが大ケガを負ってしまっても、ある程度は何とかなるだろう。

 そして、俺の風魔法使いのレベルは無事に10に達した。


コウタ
種族:人族
ファーストジョブ:風魔法使いレベル10
セカンドジョブ:剣士レベル8
HP:E++
MP:D+
闘気:E++
腕力:E++++
脚力:E+
器用:E+

システムスキル:
ジョブ設定
経験値ブースト

アクティブスキル:
ウインドカッター
エアバースト
ラッシュ


 ステータスが全体的に向上し、新しい風魔法も使えるようになった。
 新しい風魔法はエアバースト。
 空気の塊を発射する魔法である。

 ウインドカッターに比べると、致命傷は与えにくい。
 しかし、一時的に戦闘不能にするダメージは与えやすい。

 近接武器で例えよう。

 ウインドカッターは、小ぶりのカッターのようなイメージだ。
 急所を刺せば致命傷になる。
 急所以外へのキズでも流血を伴うため、戦闘が長引けば致命傷となり得る。
 しかし一方で、暴れ回る敵を即座におとなしくさせるような制圧力はない。

 エアバーストは、先端にクッション性がある重い鈍器のようなイメージだ。
 頭部などにヒットしても、なかなか致命傷にはならない。
 しかし一方で、暴れ回る敵をおとなしくさせる制圧力を持っている。
 クッション性があるとはいえ、重い打撃を受ければたいていの敵はよろめくからな。

 これで、中級の魔物に対しても有効打を得ることができたと言えよう。
 ウインドカッターでちくちく削る。
 エアバーストで体勢を崩し、近接職のサポートをする。
 この2つの戦法は地味ながらも有効である。

 俺のセカンドジョブである剣士も順調にレベルが上がっているし、戦況次第では俺も前衛に加わってもいい。

 そしてーー。

「シルヴィ。レベルが上がった実感があるのだな?」

「はい、確かな実感があります! それに、お見せしました通り新たなスキルも得ております。間違いないかと!」

 レベルが上がると、ステータスが向上する。
 本人にも知覚できる程度には違いが出る。

 加えて、各ジョブのレベル5やレベル10になったときには、新たなスキルを取得する。
 獣戦士の場合、レベル5で新たなスキルを取得する。

「それはよかった。確か、『ビーストストライク』というスキルだったな?」

「はい。人族の戦士が使う『ストライク』と大きな違いはありませんが……。速度と攻撃力が少し上がる代わりに、細かな制御力が落ちているようなイメージですね!」

 シルヴィがそう言う。
 彼女の言う通り、ビーストストライクとストライクに大きな違いはない。
 うまく今後の狩りに活かしていきたいところた。

「よし。そろそろ、中級の魔物の討伐に挑戦してみるか。まずは、冒険者ギルドで情報収集だな」

「そうですね。お供いたします!」

 俺とシルヴィは狩りを切り上げ、冒険者ギルドに向かう。
 中に入り、受付嬢のセリアに話しかける。
 青髪の海猫族の少女だ。

「おはよう。セリアちゃん」

「おはようございます!」

「おはようございますにゃ。コウタさんとシルヴィちゃん」

 俺とシルヴィのあいさつに、セリアがそう返す。
 彼女が言葉を続ける。

「今日はどうされましたかにゃ?」

 俺とシルヴィの場合、冒険者ギルドにそうそう頻繁に顔を出す必要はない。

 俺たちは、この2週間はひたすらエルカ草原でホーンラビットとゴブリンを狩っている。
 ホーンラビットとゴブリンは魔物なので、討伐後には魔石が残るだけだ。
 魔獣とは違い、素材などを剥ぎ取って売却することはない。

 魔石を売るにしても、日銭に困っているわけでなければ焦って売る必要はない。
 ある程度魔力がたまって黒く染まってきたら、売却すればいいのだ。
 セリアの問いは『本来であれば冒険者ギルドに特に用事はないはずなのに、なぜ今日はわざわざ来たの?』というような意味合いである。

「シルヴィと活動を始めてもう2週間が経過する。そろそろ、エルカ樹海の浅いところでの狩りに挑戦してみようと思ってな。その情報収集だ」

「なるほどですにゃ。でも、お二人ともまだEランクですし、ちょっと早いかもしれませんにゃ。実力的にはだいじょうぶかもしれませんけどにゃ」

 セリアがそう言う。
 確かに、俺たちはまだEランク。
 経験が圧倒的に足りない。

 俺はMSCの知識と経験がある上、いろいろなチートも持っているので何とかなりそうな気もするが……。
 傍目には、少し心配だといったところか。
 俺自身も、若干の懸念は感じている。

「ああ、そこを相談したくてな。やはりまだ早いか……」

「うーん、はっきりとしたことは言えませんにゃ。冒険者は危険がつきものですし、時には思い切って危険に飛び込むことで成長できる人もいますにゃ」

 本当に微妙なところだ。
 絶対にだいじょうぶだと太鼓判を押せるレベルではないが、絶対にまだ早いから止めておけというほどのレベルでもない。
 最終的には、本人である俺とシルヴィで判断を下す必要がある。

「相談に乗ってくれてありがとう。もう少し考えてみることにする」

 俺には『ジョブ設定』『経験ブースト』などのチート能力がたくさんある。
 焦らずとも、じっくりやれば着実に成長していけるはずだ。
 もう少しエルカ草原で様子を見るべきかもしれない。

 俺とシルヴィは冒険者ギルドの出口に向かおうとする。
 そのとき、背後から俺たちに声が掛けられた。

「あ、あの……。話は聞かせてもらったよ」

「エルカ樹海に挑戦するってか。奇遇じゃねェか。俺たちが付き合ってやるよ」
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