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第1章 初級冒険者として活躍 シルヴィ、ユヅキ

12話 白狼族の奴隷シルヴィとの主従契約

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 ルモンドとの相談の結果、シルヴィを購入する方向性で話を進めることになった。
 『高めの利子』『シルヴィに肉体的に手を出さないこと』『剣、防具、俺自身を担保に設定すること』が条件だ。
 最後の確認として、シルヴィ自身の意向を確認しようとしているところだである。

「お待たせしました。シルヴィを連れて参りました」

 ルモンドがそう言って、この応接室に戻ってきた。
 彼の言葉通り、後ろにはシルヴィがいる。

「あ、あの……。お久しぶりです。シルヴィです。よろしくお願いします」

 彼女がそう言って、礼をする。
 白色の髪と狼耳がかわいい。

 だが、少し緊張している様子だ。
 これから自分の主になろうかという人に会えば、緊張もするか。

「久しぶりだな。あらためて、俺はコウタだ。それでシルヴィ。俺の女になる気はあるか?」

 俺はシルヴィの手を取り、真正面から彼女の瞳を見つめる。

「あ、あう……。えっと、あの……」

 シルヴィは顔を真っ赤にして、しどろもどろになっている。

「うぉっほん! コウタ殿。先ほども言いましたが、肉体的な手出しは無用に願います。今の程度であればギリギリ構いませんが……」

 ルモンドがそう注意してくる。
 やべ。
 そうだった。

「失礼、言い直そう。シルヴィ、俺とともに冒険者として活動してみる気はあるか?」

 こっちが本題だった。
 彼女に手を出すのは、分割払いを終えてからとなる。

「冒険者、ですか……? わたしが……?」

「そうだ。気が進まないか?」

「……いえ! 逆です。わたしはずっと、世界を巡ってみたいと思っていました。コウタ様がよろしければ、ぜひわたしをパーティの末席に加えてください!」

 シルヴィがそう言う。
 予想以上に好感触だ。

「いや、末席も何も、今の俺はソロで活動しているのだ。シルヴィには、俺の最初のパーティメンバーになってほしい。戦闘や冒険者の心得はあるか?」

「わたしは残念ながら、氷魔法は使えません……。しかし、獣戦士としてならお役に立てると思います! 索敵も得意ですよ!」

 シルヴィがそう言う。
 白狼族は、種族全体として氷魔法使いと獣戦士のジョブ適正が高い。
 しかし、個体差はある。
 シルヴィの場合は、氷魔法使いへの適正はなかったといったところか。

「それならば問題なさそうだ。獣戦士は、前衛として頼りになるジョブだからな」

 獣戦士は、身体能力全体に強めの補正がかかるジョブだ。
 近接戦闘に向いている。
 覚えるスキルも、近接系のスキルばかりだ。

 それに、ゆくゆくは氷魔法使いとしても活躍できる可能性がある。
 俺の『ジョブ設定』のスキルを使えればだが。
 今現在のこの状況では、ジョブ設定の画面を開いてみても、シルヴィは対象として認知されていない。

 しかし、パーティメンバーとなれば可能性はある。
 もちろん、ただのパーティメンバーではなくて、システム上の『パーティメンバー設定』を使ったパーティメンバーとなればだ。

 そのためには中級以上の魔物を討伐する必要があるので、まだ先の話にはなる。
 風魔法使いとしての俺と、獣戦士としてのシルヴィの力があれば、中級の魔物を討伐することは十分に可能だろう。

「ふむ。お互いの意思を確認できたようで何よりです。では、さっそく売買契約を進めさせていただきます」

 ルモンドがそう言って、魔力を帯びた用紙を渡される。
 利子、担保、分割払いの期限などが詳細に書かれている。
 一般的には少し厳しめの条件だが、無法レベルとまでは言えない。

 様々なチート能力を持つ俺なら、十分に返済可能だろう。
 俺は内容をじっくりと確認し、サインをした。

「では続きまして、コウタ殿とシルヴィの間に主従契約を結びます。コウタ殿、これを……」

 ルモンドから、俺は小さな針を受け取る。
 これを自分の指に刺して、血を出す必要があるそうだ。
 少し怖いが、思い切って突き刺す。
 指先から血が流れてくる。

「これでいいのか?」

「ええ、十分です。それを、シルヴィの奴隷紋のところへ垂らしてください」

 シルヴィの奴隷紋は、胸元にあった。
 普段は服で見えないところだ。
 
「……んっ」

 シルヴィが服を少しずらし、胸元を出してくる。
 美少女の胸元。
 なかなか破壊力のある光景だ。
 しかし、まだ手を出すときじゃない。
 こらえるんだ。

 ポタリ。
 俺はシルヴィの奴隷紋に、指先から血を垂らす。

「いにしえの精霊よ。我が王国の定めにより、此の者コウタと彼の者シルヴィの間に主従契約を結ばせ給え。フェアトラーク」

 ぽうっ。
 シルヴィの奴隷紋が発光する。
 続けて、シルヴィ自身、俺、そして術者のルモンドも発光する。

「……これにて、無事に主従契約は結ばれました。コウタ殿、シルヴィとの繋がりを感じられますかな?」

「ふむ。確かに、シルヴィの位置を視覚以外でも感知できている気がするな」

「それが主従契約の効力の1つでございます。それ以外にも、奴隷は主人を害せない、無断で遠くに逃げられないなどの効力がございます」

 ルモンドがそう説明する。
 MSCの主従契約でも、同じような効果はあった。
 これなら、裏切らずに秘密を守るパーティメンバーとして、存分に活躍が期待できるだろう。

「では、これにて売買契約と主従契約は終了となります。次回の分割払いの期限は1か月後となります。遅れてもただちに返済不能とは認定されませんが、可能な限り期限までにお支払いください」

 ルモンドがそう言う。
 そのあたりの日程や額は、もちろん事前に確認済みだ。
 今さらどうこう言う話でもない。

「わかっている。いろいろとありがとう。いくぞ、シルヴィ」

「は、はい。ご主人様」

 俺とシルヴィは、奴隷商館を退出する。
 取り急ぎ、済ませておくべきことを済ませていこう。
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