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198話 イザベラ嬢-1【カイン視点】
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俺の名前はカイン・レッドバースだ。
いや、正確に言えば、生まれてから十一歳になるまではただのカインだった。
俺は実の両親の顔を知らない。
物心ついた時には、とあるスラム街で浮浪児をやっていた。
ただ、親がいないというだけで、別に生活に困ることはなかった。
盗みや恐喝など、生きるために必要なことは自分で学んできたし、それができるだけの頭や腕っぷしも持っていた。
何より、この街はそういう奴らが大勢いる。
弱者が強者に淘汰される世界なのだ。
だが、ある時に転機が訪れた。
それは、俺が十一歳になった頃だった。
「おっと! ごめんよ!!」
俺は大通りで、身なりのいい少女にわざとぶつかった。
貴族の娘だろうか?
それならば、金を持っている可能性は高いと思ったのだ。
「いえ、こちらこそ……」
彼女は、すぐに謝罪を口にする。
貴族にしては珍しいことだと思った。
大抵の貴族は、平民などに絶対に謝らない。
ましてや、自分からぶつかってきた浮浪児になんて尚更だろう。
彼女はお人好しな貴族のようだ。
俺は彼女の謝罪を聞き流しつつ、その場を立ち去る。
もちろん、手にはこっそりと抜き取った財布を持っている。
(おっ!? 狙い通り、結構入ってそうだぜ……)
俺は内心ほくそ笑みつつ、路地裏へと入っていく。
ここなら、人目につくこともないだろう。
いや、正確に言えば、生まれてから十一歳になるまではただのカインだった。
俺は実の両親の顔を知らない。
物心ついた時には、とあるスラム街で浮浪児をやっていた。
ただ、親がいないというだけで、別に生活に困ることはなかった。
盗みや恐喝など、生きるために必要なことは自分で学んできたし、それができるだけの頭や腕っぷしも持っていた。
何より、この街はそういう奴らが大勢いる。
弱者が強者に淘汰される世界なのだ。
だが、ある時に転機が訪れた。
それは、俺が十一歳になった頃だった。
「おっと! ごめんよ!!」
俺は大通りで、身なりのいい少女にわざとぶつかった。
貴族の娘だろうか?
それならば、金を持っている可能性は高いと思ったのだ。
「いえ、こちらこそ……」
彼女は、すぐに謝罪を口にする。
貴族にしては珍しいことだと思った。
大抵の貴族は、平民などに絶対に謝らない。
ましてや、自分からぶつかってきた浮浪児になんて尚更だろう。
彼女はお人好しな貴族のようだ。
俺は彼女の謝罪を聞き流しつつ、その場を立ち去る。
もちろん、手にはこっそりと抜き取った財布を持っている。
(おっ!? 狙い通り、結構入ってそうだぜ……)
俺は内心ほくそ笑みつつ、路地裏へと入っていく。
ここなら、人目につくこともないだろう。
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