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184話 そして誰もいなくなった

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「……え?」

 イザベラは驚きのあまり硬直していた。
 無理もないことだ。
 目まぐるしく変わる状況。
 かつて親しくしていたエドワード王子、フレッド、オスカー、アリシアが次々に意識を失っていった。
 そして今、カインが自分に対して血走った目で殺意を向けているのだから。

「ひっ……!」

 そんなイザベラに対して、カインはゆっくりと近付いていく。
 一歩ずつ、確実に距離を詰めていく。
 獲物を追い詰めるように、じわじわと歩を進めていく。
 そうして少女の目の前までやって来ると――

「――ガアッ!! アアアアァッ!!!」

 剣を自分の腕に突き刺した。
 傷口からは大量の血が噴き出すが、カインはまるで意に介さない様子で更に深く突き刺す。
 何度も何度も繰り返していく。
 やがて皮膚が裂け肉が見え始めた頃になってようやく、彼はその手を止めた。

「……グゥ」

 荒い息を吐くカイン。
 彼は血まみれになった自分の手を見ると――最後に、剣を自分の胸へと突き立てた。

「……ぁ……え……?」

 一連の行動を見ていたイザベラの口から、小さく声が漏れる。
 目の前で起こった出来事に理解が追いつかないといった様子だ。
 訳も分からないまま呆然としていると――

「幸せになってくれ……イザベラ嬢……」

 ――その言葉を残して、カインは血溜まりの中に倒れ伏したのだった。
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