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136話 二人組

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 魔法演習の講義で、二人組を作ることになった生徒達。

「イザベラ殿」

「オスカー様」

 オスカーとイザベラが声を掛け合う。
 どうやら、二人の意思は固まったらしい。

「私とイザベラ殿で組みます。構いませんね、イザベラ殿?」

「ええ、もちろんですわ」

 オスカーの提案に、イザベラは何の迷いもなく了承する。
 オスカーはシルフォード伯爵家の跡取り息子であり、家格は申し分ない。
 座学でも実技魔法でもイザベラに次ぐ成績を修めており、将来有望だ。
 一時期はシルフォード伯爵家の領地経営が危ぶまれていたが、それも解決している。
 その上、彼は眼鏡が似合う知的な美男子だ。
 彼に言い寄る令嬢は多いと聞く。
 エドワード王子やカインに比べるとやや痩せ型ではあるものの、平均的な学園生徒に比べれば身体能力も高く、体は引き締まっている。
 一方のイザベラも、とても優秀な女性であることは改めて言うまでもない。
 かつてはシルフォード伯爵家の領地経営に有益な口出しをしたこともあり、オスカーはそのことに恩義を感じている。
 つまり、彼がイザベラと組もうとするのは、何も不思議なことではないのだ。
 むしろ、自然なことだと言える。

((なっ……!))

 生徒達の間に動揺が広がる。

「あ、あの、わたくしはオスカー様と組みたいのですが……」

 一人の女子生徒が恐る恐るオスカーに申し出る。
 彼女は子爵家の令嬢だ。
 しかし――

「申し訳ありません。イザベラ殿が先約ですので」

 オスカーに一蹴されてしまう。

「で、でも……。主席と次席が組まれては、バランスが……」

「そんなことは知ったことではありません。より優秀で魅力的な女性と組みたいと考えるのは、男として当然のことですから」

「……ッ!」

 オスカーの発言に、女子生徒の顔が真っ赤に染まった。
 そして、悔しそうに唇を噛み締めると、黙って俯いてしまう。

「そういうことです。では、行きましょうか。イザベラ殿」

「はい」

 二人が実技訓練場に向けて歩き出す。
 その足取りに一切の迷いはない。
 オスカーは以前からイザベラに想いを寄せてはいた。
 だが、学園内においてあまりにも露骨なアプローチは控えていた。
 また、こうした形式の授業では先ほど女子生徒が指摘した通り、生徒間のバランスも考慮していた。
 それがどうしたことか、今のオスカーにはそうした配慮は一切見られない。
 まるで自分のものだと言わんばかりに、堂々とイザベラの隣を歩いているではないか。
 エドワード殿下との婚約を発表したばかりのイザベラの隣を……。
 イザベラもイザベラで、何も恥じることはないと言わんばかりにオスカーに身を寄せて歩いている。
 生徒達は驚きつつも、残った者同士で二人組を作り、イザベラやオスカーの後を追ったのであった。
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