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123話 アリシアの思い

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 私は、フレッドとアリシアさんの間に割り込んだ。
 二人は一時的に止まってくれたが、その練り上げた魔力を手放してはいない。

「……イザベラ様? どうしたのですか? そこをどいてください」

 アリシアさんが私に問いかける。
 彼女の声は震えている。
 それは恐怖によるものなのか、それとも怒りによってか。

(どちらにしても、このままじゃいけない)

 私はアリシアさんの目を真っ直ぐに見つめ返す。
 アリシアさんの目つきが鋭くなった。
 彼女は怒っているのだ。
 それはそうだよね。
 自分の想いを傷つけられたのだから。
 私は覚悟を決める。
 ここで誤魔化しても意味がない。
 正直に話そう。

「……ごめんなさい。アリシアさん。私はあなたの気持ちに応えることはできないわ」

 私は謝った。
 これは必要なことだと思ったから。
 アリシアさんの顔色が変わる。

「…………どうして、ですか?」

「………………」

 アリシアさんは答えを求めているようだったが、私は何も言えなかった。
 その理由を説明することはできる。
 でもそれは、今この場で口にするには相応しくない気がする。

「……イザベラ様は、やっぱり男の人が好きなのですね。わたしの告白を断って、あの男を選ぶのですね」

「ち、違うの! それは誤解よ!」

 私が否定すると、アリシアさんは私を見据える。

「……何が違うというのですか? わたしのことが嫌いだと、はっきり言えばいいではないですか!」

「アリシアさんのことが嫌いなわけじゃない。むしろ好ましく思っているわ」

「嘘です!」

 私の言葉をアリシアさんは強く否定した。

「では、なぜわたしを避けるのですか!? わたしが話しかけても、いつもそっけない態度ばかり。せっかく二人きりの約束をしても、いつも誰かを新しく誘っておられますよね? わたしのことなんて興味ないと言わんばかり……」

「そ、それは……」

 確かに、今回の秋祭りでもそうだったかもしれない。
 アリシアさんと最初に約束をしていたのだけれど、新たにフレッドを誘ってしまった。
 言い訳をするならば、ここ最近の私の記憶力の悪化がある。
 何だか、頭の中にモヤがかかったように、記憶があやふやになるときがあるのだ。
 でも、そんな言い訳をしたところで、アリシアさんは納得してくれないだろう。

「それに、イザベラ様の周りにいる男たち! 彼らはみんなイザベラ様に好意を抱いています! よりどりみどりで、イザベラ様もさぞ誇らしいことでしょう!」

「それは違うわ。みんな友達なのよ。みんなで仲良くしましょう?」

「……友達? みんなで仲良く? そんなの偽善です。イザベラ様は本当は、男どもと遊ぶことが好きなんでしょう? わたしと仲良くしてくださったのは、光魔法が物珍しいからなんでしょう!?」

 アリシアさんの負の感情が強まっていく。
 駄目だ、私の言葉では届かない。
 アリシアさんの心の奥底に巣食う闇。
 それは、闇の瘴気によって増幅させられてしまっているようだ。

(アリシアさんも気になるけど……。この場を収めるには、まず――)

 私は次なる手を考え始めるのだった。
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