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110話 ルート

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 フレッドの抵抗が激しさを増している。
 エドワード殿下、カイン、オスカーの三人がかりでも、なかなか攻めきれないようだ。
 フレッドは土魔法や植物魔法を展開して、三人の攻撃に合わせてカウンターを仕掛けている。
 そのため、彼らは思うように戦えないでいるのだ。

「くそっ! なぜフレッドがこれほどの力を!?」

「厄介な! 想定以上だぜ!!」

 エドワード殿下とカインは、焦った様子を見せている。
 フレッドがここまで強いなんて、完全に想定外だったんだろう。
 二人の顔に余裕がない。

「……そう言えば、聞いたことがあります」

「何か知っているのか? オスカー」

 エドワード殿下がオスカーにそう問う。
 この場にいるイケメン四人は、『ドララ』では親友という設定だった。
 今回の時間軸では親友とまでは言えないようだけれど、順調に仲を深めつつある。
 少なくとも、フレッドの暴走に対して力を合わせて対処しようという程度には、互いの実力を認めている。
 そして、オスカーの長所は氷魔法の他、知識が豊富なことにもある。
 授業で学ぶ事柄の他、自主的に王立図書館に通って様々なことを学んでいるらしい。
 フレッドの強化に関して、何か知っているのかもしれない。

「大地の遥か下――”奈落”から漏れ出た闇の瘴気。それはその者の欲望を刺激し、暴走させます。それだけでなく、秘めたる力を目覚めさせることもあるとか……」

「まさか、フレッドもそうだと?」

「あくまで噂です。ですが、可能性はあるでしょう。彼は入学時点から優秀でしたが、その後も順調に実力を伸ばしていましたから。本来の実力がこれほどであっても、不思議ではありません」

 オスカーがフレッドをそう評する。
 まぁ、『ドララ』の四大イケメンの一人だからねぇ。
 潜在能力も高い。
 もちろん、こんなことを言っているオスカーだって高い潜在能力を秘めている。

「へっ。だったら、そう悪いことばかりでもねぇってことか? 真の実力を引き出せるなら……」

「そうでもありません。闇の瘴気は、あくまでその者を暴走させているのです。放っておけば、魔力や身体の過剰行使によって命を落とすことになるかもしれません」

 カインの言葉に対して、オスカーが冷静に答える。
 そう言えば、『ドララ』でも展開次第で彼らが闇堕ちすることがあった気がする。

(確か、好感度の管理を間違えたらそうなるんだったかな?)

 単純に特定の攻略対象のルートに入るだけなら、簡単だ。
 その者とばかり話すようにして、他の者とは距離を取ればいい。
 そういった単純なルートの他、『ドララ』には凝ったエンディングがいくつか用意されていた。
 『逆ハーレムエンド』を狙うなら、全員の好感度を満遍なく上げていく必要がある。
 『両手にイケメンエンド』なら、四人の内の二人の好感度をバランス良く上げていくのだ。
 闇の瘴気によって攻略対象が暴走するのは、例えば途中までは二人の好感度を上げつつ、途中でどちらか一人を振ってもう片方とくっついたような場合だったかしら?

(私はハッピーエンド厨だから、バッドエンドには詳しくないんだよねぇ)

 そんなことより、目の前のフレッドだ。
 このまま暴走させてしまうと、身が滅びてしまうかもしれない。

(おっ……。そろそろ酔いが覚めてきたかも……。私も参戦しようかな。最愛の義弟のためだしね)

 私はそう考え、準備を整え始めたのだった。
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