11 / 20
11話 【ギゼルside】王都への道中
しおりを挟む
時は少し遡る。
カイルがギゼルとリリサによりパーティを追放された翌日のことだ。
「ははっ。こんなシケた街ともおさらばだぜ!」
「まったくだわ! あんな奴が仲間だったなんて、信じられない!」
「足手まといがいなくなった今、俺たちを阻むものは何もない。さっさと王都に行くとするか」
「ええ。それにしても、あの男。本当に役に立たなかったわね」
「全くもって使えねえ野郎だったぜ」
「そうそう。荷物持ちすらまともにできないし」
「まあ、いいさ。次の街では、あいつの代わりになりそうな前衛を探すとしよう」
「賛成! あの男よりも強い人が見つかるといいけど!」
「大丈夫さ。そんな奴はいくらでもいる。『格闘王』の俺に『魔術師』のお前がいれば、加入希望者は殺到するだろう」
「ふふん。それもそうね!」
「まずは王都の冒険者に行って、仲間を募ろう」
2人は好き勝手なことを言いつつ、道を進んでいく。
と、そこで、1匹の魔物が現れた。
「ちっ。オークかよ。雑魚じゃねえか」
「しかも単体? ……まあいいわ。私が魔法で攻撃する」
「おう。任せた」
「……ウィンドカッター!」
リリサが放った風の刃は、的確にオークの足を切り裂く。
「今よ、さっさとトドメを刺しなさい! ……聞いているの!? カイル!」
「バカ! あの野郎はもういねぇよ! ……おらぁっ!!」
攻撃後にスキを晒したリリサを、ギゼルがかろうじてフォローする。
そして、オークは息絶えた。
「ったく。攻撃後に気を抜くんじゃねぇよ」
「何よ。それを言うなら、あなたもフォローが遅いのよ」
「オークぐらい、一撃で仕留められねえのか」
「魔力は節約しないと。また出てくるかもしれないんだから。足を攻撃して動きを鈍らせて、後は近接でトドメをさす。基本でしょう?」
「けっ。それだと時間がかかるんだよ。もっとこう、サクッっと倒せれば……」
「はいはい。文句ばっかり。そう言うなら、あんたが最初から前衛として戦って倒せばいいじゃない」
「うるせぇな。俺はパーティリーダーなんだから、ケガでもしたら大変だろ」
「何よ、2人しかいないんだからリーダーも何もないでしょ。女の子ばかり戦わせて、恥ずかしくないの?」
「ああん!? 何だと、こら?」
「何よ、やるの?」
ギゼルとリリサの口論が激化していく。
リリサが弱らせた魔物にトドメを刺していたのはカイルだし、このようにパーティ内に不和が生じたときに宥めるのもカイルが行っていた。
しかし、カイルはもういない。
カイルが抜けた穴は、彼らが思うよりもずっと大きかった。
彼らは不穏な空気を纏いながら、王都へ進んでいくのだった。
カイルがギゼルとリリサによりパーティを追放された翌日のことだ。
「ははっ。こんなシケた街ともおさらばだぜ!」
「まったくだわ! あんな奴が仲間だったなんて、信じられない!」
「足手まといがいなくなった今、俺たちを阻むものは何もない。さっさと王都に行くとするか」
「ええ。それにしても、あの男。本当に役に立たなかったわね」
「全くもって使えねえ野郎だったぜ」
「そうそう。荷物持ちすらまともにできないし」
「まあ、いいさ。次の街では、あいつの代わりになりそうな前衛を探すとしよう」
「賛成! あの男よりも強い人が見つかるといいけど!」
「大丈夫さ。そんな奴はいくらでもいる。『格闘王』の俺に『魔術師』のお前がいれば、加入希望者は殺到するだろう」
「ふふん。それもそうね!」
「まずは王都の冒険者に行って、仲間を募ろう」
2人は好き勝手なことを言いつつ、道を進んでいく。
と、そこで、1匹の魔物が現れた。
「ちっ。オークかよ。雑魚じゃねえか」
「しかも単体? ……まあいいわ。私が魔法で攻撃する」
「おう。任せた」
「……ウィンドカッター!」
リリサが放った風の刃は、的確にオークの足を切り裂く。
「今よ、さっさとトドメを刺しなさい! ……聞いているの!? カイル!」
「バカ! あの野郎はもういねぇよ! ……おらぁっ!!」
攻撃後にスキを晒したリリサを、ギゼルがかろうじてフォローする。
そして、オークは息絶えた。
「ったく。攻撃後に気を抜くんじゃねぇよ」
「何よ。それを言うなら、あなたもフォローが遅いのよ」
「オークぐらい、一撃で仕留められねえのか」
「魔力は節約しないと。また出てくるかもしれないんだから。足を攻撃して動きを鈍らせて、後は近接でトドメをさす。基本でしょう?」
「けっ。それだと時間がかかるんだよ。もっとこう、サクッっと倒せれば……」
「はいはい。文句ばっかり。そう言うなら、あんたが最初から前衛として戦って倒せばいいじゃない」
「うるせぇな。俺はパーティリーダーなんだから、ケガでもしたら大変だろ」
「何よ、2人しかいないんだからリーダーも何もないでしょ。女の子ばかり戦わせて、恥ずかしくないの?」
「ああん!? 何だと、こら?」
「何よ、やるの?」
ギゼルとリリサの口論が激化していく。
リリサが弱らせた魔物にトドメを刺していたのはカイルだし、このようにパーティ内に不和が生じたときに宥めるのもカイルが行っていた。
しかし、カイルはもういない。
カイルが抜けた穴は、彼らが思うよりもずっと大きかった。
彼らは不穏な空気を纏いながら、王都へ進んでいくのだった。
1
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった
さくらはい
ファンタジー
主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ――
【不定期更新】
1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。
性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。
良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。
パーティーを追放された装備製作者、実は世界最強 〜ソロになったので、自分で作った最強装備で無双する〜
Tamaki Yoshigae
ファンタジー
ロイルはSランク冒険者パーティーの一員で、付与術師としてメンバーの武器の調整を担当していた。
だがある日、彼は「お前の付与などなくても俺たちは最強だ」と言われ、パーティーをクビになる。
仕方なく彼は、辺境で人生を再スタートすることにした。
素人が扱っても規格外の威力が出る武器を作れる彼は、今まで戦闘経験ゼロながらも瞬く間に成り上がる。
一方、自分たちの実力を過信するあまりチートな付与術師を失ったパーティーは、かつての猛威を振るえなくなっていた。
転異世界のアウトサイダー 神達が仲間なので、最強です
びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中
ファンタジー
告知となりますが、2022年8月下旬に『転異世界のアウトサイダー』の3巻が発売となります。
それに伴い、第三巻収録部分を改稿しました。
高校生の佐藤悠斗は、ある日、カツアゲしてきた不良二人とともに異世界に転移してしまう。彼らを召喚したマデイラ王国の王や宰相によると、転移者は高いステータスや強力なユニークスキルを持っているとのことだったが……悠斗のステータスはほとんど一般人以下で、スキルも影を動かすだけだと判明する。後日、迷宮に不良達と潜った際、無能だからという理由で囮として捨てられてしまった悠斗。しかし、密かに自身の能力を進化させていた彼は、そのスキル『影魔法』を駆使して、ピンチを乗り切る。さらには、道中で偶然『召喚』スキルをゲットすると、なんと大天使や神様を仲間にしていくのだった――規格外の仲間と能力で、どんな迷宮も手軽に攻略!? お騒がせ影使いの異世界放浪記、開幕!
いつも応援やご感想ありがとうございます!!
誤字脱字指摘やコメントを頂き本当に感謝しております。
更新につきましては、更新頻度は落とさず今まで通り朝7時更新のままでいこうと思っています。
書籍化に伴い、タイトルを微変更。ペンネームも変更しております。
ここまで辿り着けたのも、みなさんの応援のおかげと思っております。
イラストについても本作には勿体ない程の素敵なイラストもご用意頂きました。
引き続き本作をよろしくお願い致します。
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始!
2024/2/21小説本編完結!
旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です
※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。
※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。
生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。
伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。
勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。
代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。
リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。
ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。
タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。
タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。
そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。
なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。
レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。
いつか彼は血をも超えていくーー。
さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。
一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。
彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。
コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ!
・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持
・12/28 ハイファンランキング 3位
職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!
よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。
10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。
ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。
同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。
皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。
こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。
そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。
しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。
その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。
そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした!
更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。
これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。
ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる