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第1章

72話 連樹封縛

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 ヘルルーガが暴れている。
 彼女の氷魔法と格闘術の組み合わせに、教師陣は手を焼いている。

「くっ! ”氷結の戦士”ヘルルーガ……ノースウェリア出身の武闘家か!」

「しかも、氷魔法まで操っているぞ! 近接戦も遠距離戦も厄介だ!」

「うろたえるな! 氷魔法は、水魔法の亜種! 弱点は分かっているだろう!?」

「おうよ! 今度こそ、無力化してやるぜ!!」

 ヘルルーガと戦いつつ、教師陣がそう叫ぶ。
 この期に及んで”撃破”や”討伐”ではなく”無力化”と言うあたり、さすがは教師だ。
 余が見込んだ通りの精神性の持ち主である。

「いくぞぉっ! 【緑の縛り手】!!」

「【樹縛】!!」

「【木々の牢獄】!」

 教師たちが発動したのは、木魔法。
 それも、いずれも拘束に特化した魔法だ。
 氷に対して、木で攻める。
 一見すると、効果がイマイチにも見える。

 だが、これで良い。
 先ほど教師の1人が言及していたように、氷魔法はあくまで水魔法の亜種だからな。
 表層の物理現象を超え、魔術面における相性が良いのだ。

「甘いっ!」

 ヘルルーガはそれらをすべて躱していく。
 彼女は氷魔法使いであると同時に武闘家でもある。
 いくら魔術的に相性が良くても、身体能力を活かして避けられては意味がない。

「甘いのはそっちだ!」

「大人を舐めるなよ、子どもが!」

「いくぞぉっ!!」

 教師陣が魔力の波長を合わせる。

「「「【連樹封縛】!!」」」

 ヘルルーガの周囲から無数の樹木が出現し、彼女を拘束した。

「なっ! なにぃっ!?」

「よしっ! まずは1人を無力化したぞ!!」

「傷つけないように拘束するのは、手がかかるぜ」

「だが、これで一段落だな!」

 3人の教師は勝ち誇った笑みを浮かべる。
 確かにヘルルーガは無力化されたようだ。

「くぅーっ!! こんなことでやられてたまるかぁーっ!!」

 ヘルルーガが叫ぶ。
 魔力を開放し、その身体から冷気があふれ出す。

「ぬおおおぉっ! あたいが全力を出せば、こんな拘束なんて……」

「無駄だ」

 抵抗を続けるヘルルーガに対し、教師が動揺せずに言い放つ。
 その言葉通り、ヘルルーガがいくら力を込めようとも拘束が解かれることはなかった。
 いや、正確に言えば、力を込めようとする度に途中で脱力してしまっているのだ。

「な、なんだこれぇ!?」

「どうした? ”氷結の戦士”ヘルルーガ」

「ち、力が抜ける!? あたいの! あたいのパワーが吸われてるみたいだ!!」

「言ったはずだ。無駄だとな」

 教師が落ち着いた様子でそう言う。
 これが『連樹封縛』の効果だな。
 単純に力押しで縛るのではなく、特殊な効力が込められた拘束魔法だ。
 特に水系統の魔力に対する相性が良く、それを吸収してさらに拘束を強めてしまう性質がある。
 さすがは教師。
 このあたりをしっかり考えて、魔法を運用しているようだな。

 これを解くには、ヘルルーガの力では無理だ。
 もし解かれることがあるとすれば――
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