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第1章

33話 散歩

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 メイド喫茶でオムライスを堪能した。

「ふう。食ったな」

「はい。お腹いっぱいです」

「ご馳走様。お会計はいくらになるのかしら?」

「ありがとうございますにゃ。お値段は、5000ゴールドになりますにゃ」

 シンカがそう告げる。

「では、これで」

 イリスが財布からお金を取り出し、支払う。

「毎度ありにゃーん!」

 こうして、余たち三人の昼食は終了したのであった。
 その後、喫茶店を後にした余は、城下町をぶらつく。
 日差しが強くなってきたため、木陰で休むことにした。

「暑いな」

 適温にする類いの魔法は、いくつも使える。
 余の体温のみを適切に調整する魔法の他、周囲数メートルを適温にする魔法、街レベルで気温を上下させる魔法、そして世界規模で天候を操作する魔法もある。

 しかし、今の余はただの一学生である。
 ただの日常生活では魔法の行使を控えるつもりだ。
 こうして暑さを耐えることも、学生生活の一部と言えなくもないだろう。

「はい。汗が流れますね」

「ふんっ。この程度で暑いだなんて、これだから庶民は……」

 フレアがそう言う。
 彼女は火魔法の名門であるバーンクロス家の生まれだ。
 暑さに対する耐性も持っている。
 魔法を使わない状態における生来の暑さ耐性だけで言えば、彼女は余よりも上だ。

 いかに魔王たる余とはいえ、万能ではないのである。
 だからこそ、有能な配下はいくらでも欲しい。
 世界の安寧を盤石にするためにな。

 それに、余の伴侶も欲しい。
 優秀な跡継ぎをつくり、平和な世を維持していくのだ。
 どこかに優れた伴侶候補はいないものか……。

 そもそも余が学園に入学したのは、伴侶を探すためである。
 優秀さだけで言えば、フレアとシンカが有力候補だろうか。
 イリスも優秀だが、余に異性としての興味は抱いていない様子である。
 余と彼女は主従の関係だ。
 こちらから強引に迫れば拒否はせぬだろうが、本人の意にそぐわぬ婚姻は余の望むところではない。
 余は真実の愛を見つけるのだ。
 と、そんなことを考えつつ、城下町を三人でぶらつく。

「あれ? シンカさんではありませんか」

 イリスがそんな声を上げた。
 彼女が見ている方向を見ると、そこには確かにシンカがいた。
 ただし、先ほどまで来ていたメイド服ではない。
 いつもの、ボーイッシュな服装である。

「あら、本当だわ。バイトの時間が終わったのかしら?」

「うむ。そうであろうな」

 余らはそう言って納得する。
 シンカは、余らの姿を認めると、駆け寄ってきた。
 どのようなことを言ってくるのだろうか。
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