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第1章
32話 みんなして私をいじめないで欲しいですにゃ!
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シンカがオムライスを持ってきた。
そして、何やら余のオムライスにケチャップでメッセージを書いてくれたところだ。
「愛を込めて作ったというメッセージか。なかなか粋なことをするではないか」
「シ、シンカさん! あなた、陛下に気はないようなことを言っておいて……」
「ち、違うにゃん! そんな意味で書いたんじゃないにゃん! 誤解にゃ!」
「では、どういう意味なのだ? 余にも分かるように説明せよ」
シンカは顔を真っ赤にし、恥ずかしそうに俯いた。
それから、しばらく沈黙した後、口を開く。
「……こ、これは店の決まりなのですにゃ。こう書くように言われているのですにゃ」
「そうなのか。つまりシンカは、金稼ぎのために誰彼構わず愛を囁いているというわけか」
「軽蔑します。シンカさん。陛下というものがありながら……」
「確かに、アクアマリンがやっていることを客観的に見ればそういうことになるわね。この淫売が」
余、イリス、フレアがそれぞれそう侮蔑の言葉を口にする。
「ちょ、ちょっと待つにゃ! みんなして私をいじめないで欲しいですにゃ! 私は淫売じゃないにゃ! メイド喫茶だから、こういうこともしないとダメだって言われただけにゃ!」
「何も違わないだろう。仕事のために、愛を振りまく。別に否定はしない。ただ、”流水の勇者”が今はこういう仕事をしているのだなあという感想を持つだけだ」
「な、何だか含みがあるにゃ。学費を稼ぐために、仕方ないのにゃ~!」
シンカが涙目でそう叫んだ。
やれやれ。
少しイジメすぎたか。
彼女は仕事中だ。
言葉責めはこれぐらいにして、一度解放してやることにした。
余、イリス、フレアの3人で料理を堪能する。
イリスとフレアは、出された料理を美味しそうに食べ始めた。
「おや? 意外ですね。フレアさんは、貴族家のお嬢様なのにこんな庶民的な料理が口に合うのですね」
イリスがそう言う。
「ふんっ! 平民の料理の中にも、そこそこのものは存在するわ。それを認めないほど、バーンクロス家は狭量じゃなくってよ」
フレアがそう返す。
「それは失礼しました。ところで陛下はいかがでしょうか?」
「ふむ……。味は悪くない。そして……」
「そして?」
「あのシンカが愛情を込めてつくったものと考えると、味わい深く感じるところだ。目下の者の心意気は、上に立つ者として受け取ってやれねばならぬ」
余はそう答えた。
「陛下……。そのお言葉だけで、シンカさんは感激の涙を流されることでしょうね」
「ええっと……。それは大げさじゃないかしら? まあ、私にはどうでもいいことだけれど……」
余たちはそんな会話をしつつ、オムライスを食べ進めていく。
そして、何やら余のオムライスにケチャップでメッセージを書いてくれたところだ。
「愛を込めて作ったというメッセージか。なかなか粋なことをするではないか」
「シ、シンカさん! あなた、陛下に気はないようなことを言っておいて……」
「ち、違うにゃん! そんな意味で書いたんじゃないにゃん! 誤解にゃ!」
「では、どういう意味なのだ? 余にも分かるように説明せよ」
シンカは顔を真っ赤にし、恥ずかしそうに俯いた。
それから、しばらく沈黙した後、口を開く。
「……こ、これは店の決まりなのですにゃ。こう書くように言われているのですにゃ」
「そうなのか。つまりシンカは、金稼ぎのために誰彼構わず愛を囁いているというわけか」
「軽蔑します。シンカさん。陛下というものがありながら……」
「確かに、アクアマリンがやっていることを客観的に見ればそういうことになるわね。この淫売が」
余、イリス、フレアがそれぞれそう侮蔑の言葉を口にする。
「ちょ、ちょっと待つにゃ! みんなして私をいじめないで欲しいですにゃ! 私は淫売じゃないにゃ! メイド喫茶だから、こういうこともしないとダメだって言われただけにゃ!」
「何も違わないだろう。仕事のために、愛を振りまく。別に否定はしない。ただ、”流水の勇者”が今はこういう仕事をしているのだなあという感想を持つだけだ」
「な、何だか含みがあるにゃ。学費を稼ぐために、仕方ないのにゃ~!」
シンカが涙目でそう叫んだ。
やれやれ。
少しイジメすぎたか。
彼女は仕事中だ。
言葉責めはこれぐらいにして、一度解放してやることにした。
余、イリス、フレアの3人で料理を堪能する。
イリスとフレアは、出された料理を美味しそうに食べ始めた。
「おや? 意外ですね。フレアさんは、貴族家のお嬢様なのにこんな庶民的な料理が口に合うのですね」
イリスがそう言う。
「ふんっ! 平民の料理の中にも、そこそこのものは存在するわ。それを認めないほど、バーンクロス家は狭量じゃなくってよ」
フレアがそう返す。
「それは失礼しました。ところで陛下はいかがでしょうか?」
「ふむ……。味は悪くない。そして……」
「そして?」
「あのシンカが愛情を込めてつくったものと考えると、味わい深く感じるところだ。目下の者の心意気は、上に立つ者として受け取ってやれねばならぬ」
余はそう答えた。
「陛下……。そのお言葉だけで、シンカさんは感激の涙を流されることでしょうね」
「ええっと……。それは大げさじゃないかしら? まあ、私にはどうでもいいことだけれど……」
余たちはそんな会話をしつつ、オムライスを食べ進めていく。
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