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61話 vsアイシア

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 ギルドマスターの娘にして、Bランク冒険者でもあるアイシアと模擬試合を行うことになった。
 訓練場にて、俺たちは向かい合う。

「ルールはどうする? 何でも有りにするか?」

 パワードにそう問われた。

「いや。武器はなし。魔法も身体強化のみの使用で頼む」

 俺の剣技や魔法は対人戦には向いていない。
 特に魔法は、うっかり人を殺しかねないほどの威力がある。

「それですと、『闘神流』を修めた私の方が有利では?」

 闘神流……。
 確か、武闘の流派の一つだな。
 小耳に挟んだことがある。

「いいんだよ。ただの手合わせなんだから」

「分かりました。カエデさんがそうおっしゃるのであれば」

「審判はこの儂が務める。それでは……、始め!!」

 俺とアイシアの試合が始まった。

「先手必勝です! はあっ!」

 開始と同時に、彼女は距離を詰めてきた。
 速い。
 そして、重い拳を放ってくる。

「ぐっ!?」

 俺は咄嵯に腕を上げてガードするが、衝撃で後方に吹っ飛ばされた。

「カエデさん!?」

 エリスが驚いた声を上げる。

「大丈夫じゃ。あの嬢ちゃんはあれぐらいではやられん。直接戦った儂はよく分かっておる」

 パワードの言葉通り、俺は大したダメージを受けてはいない。
 すぐに立ち上がる。

「ほう。頑丈なんですね」

 アイシアも感心しているようだ。

「今の一撃で俺を倒せると思ったのか?」

「まさか。父に勝ってしまうような人を一撃で倒せるとは思っていません。さすがに、ノーダメージなのは想定外ですが……」

 そう言いつつ、再び構えをとる彼女。

「今度はこっちからだぜ」

 俺は【ネコダッシュ】で身体能力を強化し、一気に間合いへ踏み込む。

「速……ッ!!?」

 彼女が反応する前に、俺の拳が彼女の腹部を捉えていた。

「げほっ……」

 血を吐きながら後方へと吹き飛ぶアイシア。
 だが、空中で体勢を立て直し、綺麗に着地を決めた。

「素晴らしい速度の体術ですね……」

「その割に、あっさりと耐えるじゃないか」

「そこはまあ……。『闘神流』は肉体の強化を重視しますので」

「そうなのか」

「はい……。なので、魔法は苦手なんです」

 苦笑しながら答える彼女。

「でも、接近戦では負けない自信があります。まだまだ戦えますよ」

「そうかい。じゃ、これはどうかな」

 俺は右手に闘気を集める。

「そおいっ!」

 弾丸のような速度で放たれた無数のパンチ。
 そこから射出される闘気弾がアイシアを襲う。

「く……!」

 それを全て受け切るアイシア。
 かなりの集中力だ。

「なかなかやりますね……。素晴らしい威力と連射力です。でも、闘気弾なら私も使えます!」

 アイシアは両手を前に突き出す。

「はああぁっ! 気功砲!!!」

 すると、凄まじい勢いの闘気が噴き出した。

「なにぃ!」

 慌てて俺は後退する。
 ドゴーン!!
 アイシアの放ったそれは、訓練場の壁を破壊した。

「おいおい。マジかよ」

 俺は冷や汗を流す。
 こんなものを食らったらひとたまりもないぞ。

「はあ、はあ……。避けられてしまいましたか……」

「あんなもん、避けて正解だろ」

「くう……。しかし、まだ負けてはいません!」

 アイシアは再び構えをとった。
 彼女が闘気を練り上げていく。

「どうやら、これが最後みたいだな……」

 俺がそう呟いた直後だった。

「おおおっ!」

 アイシアは先ほどよりもさらに速く動いた。
 そして、一瞬にして俺の背後に回り込み、背中に向けて掌底を放つ。

「もらった!」

 勝利を確信したアイシアだったが、次の瞬間に驚愕の表情を浮かべた。
 何故ならば、俺の姿はそこになかったのだから。

「どこを狙っているんだ?」

 アイシアの背後から声を掛けて俺に、彼女はハッとして振り返る。

「なに!?」

「隙あり!!」

 動揺する彼女に回し蹴りをお見舞いした。
 ドゴォーン!!!
 轟音とともに吹っ飛んでいく彼女。
 地面に落下し、ゴロンゴロン転がって止まった。

「ぐ……うぅ……。強い……。強すぎますよ、カエデさん……。もう降参です」

 倒れ込んだアイシアがそう言う。

「うむ! そこまでとする! 勝者、カエデ!!」

 ギルドマスターのパワードが宣言をする。
 こうして、俺とアイシアの戦いは終わったのだった。
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