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54話 戦闘試験
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Cランク昇格試験の最後のテストが始まろうとしている。
内容は、近接戦闘の模擬試合だ。
俺は受験者の1人と向き合う。
「準備はよろしいですか? それでは、始め!!」
女性職員の合図で、戦闘試験が始まった。
「さて……。どこからでもかかってくるといいぜ」
相手の男は余裕の表情でそう言い放つ。
「そうか。なら遠慮なく行かせてもらうぞ」
「ああ、来い!」
その言葉を聞き終えると同時に、俺は一瞬で距離を詰めて蹴りを放つ。
「え?」
相手は予想もしていなかったのか、間の抜けた声を上げた。
「あがっ!?」
そのまま、後方へ吹っ飛んでいく。
ドゴォンッという音を立てて、壁に激突してめり込む。
男は起き上がってこない。
「そ、そこまで! 勝者、カエデ様!」
女性職員がそう宣言する。
「「「…………」」」
周囲が静まり返った。
「な、なんだ今の……」
「速すぎて見えなかった……。あいつ、本当に人間なのか?」
「直接的な魔法の発動はなかったはず……。魔力で身体能力を底上げしているのか?」
周囲の反応を見る限りは大成功だったようだ。
俺は満足しつつ、後方へ下がる。
そして、2人の女性が声を掛けてきた。
「いやはや……。楓殿の素早さを規格外でござるな」
「魔法に加えて、これほどの身のこなしなんてね。すごいわ」
2人とも褒めてくれている。
嬉しいな。
俺はいい気分のまま、その後の試合を眺めていく。
エリスは魔法専門というだけあって、近接戦闘はやはり不得手なようだ。
相手も同格ぐらいの魔法使いだったので、不格好なりに互角の試合をしていたが。
やはりCランクになろうとするような冒険者は、魔法専門だとしても最低限の身体能力はある。
エリスも、その辺の一般人に近接戦闘で負けることはないだろうな。
「では、次です! 桜様は前に出てきてください!」
「承知したでござる」
桜が呼ばれた。
「頑張ってくださいまし……」
エリスが心配そうな顔でそう声を掛けている。
「ありがとう。勝ってくるでござるよ」
桜は笑顔でそう答えて前に出る。
「そしてその相手は……楓様、お願いします!」
「え? 俺?」
俺は首を捻りながらも一応前に出る。
「俺は既に試合を終えているぞ?」
「もちろん存じております。先ほどの試合で相手を瞬時に撃破しましたので、この戦闘試験で一定以上の評価は確定しています」
「なら、2試合目は不要なんじゃ?」
「いえ、初撃で終わってしまったので、正確な実力の判断が難しいのです……。より正確な実力の把握のために、必要に応じて2試合目を設けさせてもらっています」
「なるほど。そういうことか」
さっきの男は、Cランク昇格試験に臨むくらいだし雑魚ではないのだろうが、俺の相手をするには不足している。
女性職員から見た俺の評価は、”Cランク昇格試験に臨む一般受験生を瞬時に撃破する程度の戦闘能力”ということまでは確定している。
しかし、現状ではそれ以上の情報がない。
だから、2試合目を行って判断しようというわけか。
「それなら仕方ないな」
俺は納得してそう答える。
「桜……。カエデさん……」
俺の背後から、不安げな声で俺の名を呼ぶ声が聞こえた。
振り向くと、そこには泣き出しそうな顔をして俺を見つめるエリスの姿があった。
「まさか、2人が戦うことになるなんて……」
「大げさだな。これはただの試験だぞ?」
俺はそう言う。
「エリス。心配ご無用でござる。規格外の楓殿が相手とはいえ、拙者もただで負けるつもりはござらぬ。拙者を信じてほしいでござるよ」
桜はそんなエリスの様子を見て、優しい笑みを浮かべながらそう言った。
「桜のことは信じていますわ。でも……」
エリスはまだ何か言いたそうだったが、それを遮るように女性職員が次の試合の開始を宣言したのだった。
さて、桜の実力を見せてもらうことにしよう。
内容は、近接戦闘の模擬試合だ。
俺は受験者の1人と向き合う。
「準備はよろしいですか? それでは、始め!!」
女性職員の合図で、戦闘試験が始まった。
「さて……。どこからでもかかってくるといいぜ」
相手の男は余裕の表情でそう言い放つ。
「そうか。なら遠慮なく行かせてもらうぞ」
「ああ、来い!」
その言葉を聞き終えると同時に、俺は一瞬で距離を詰めて蹴りを放つ。
「え?」
相手は予想もしていなかったのか、間の抜けた声を上げた。
「あがっ!?」
そのまま、後方へ吹っ飛んでいく。
ドゴォンッという音を立てて、壁に激突してめり込む。
男は起き上がってこない。
「そ、そこまで! 勝者、カエデ様!」
女性職員がそう宣言する。
「「「…………」」」
周囲が静まり返った。
「な、なんだ今の……」
「速すぎて見えなかった……。あいつ、本当に人間なのか?」
「直接的な魔法の発動はなかったはず……。魔力で身体能力を底上げしているのか?」
周囲の反応を見る限りは大成功だったようだ。
俺は満足しつつ、後方へ下がる。
そして、2人の女性が声を掛けてきた。
「いやはや……。楓殿の素早さを規格外でござるな」
「魔法に加えて、これほどの身のこなしなんてね。すごいわ」
2人とも褒めてくれている。
嬉しいな。
俺はいい気分のまま、その後の試合を眺めていく。
エリスは魔法専門というだけあって、近接戦闘はやはり不得手なようだ。
相手も同格ぐらいの魔法使いだったので、不格好なりに互角の試合をしていたが。
やはりCランクになろうとするような冒険者は、魔法専門だとしても最低限の身体能力はある。
エリスも、その辺の一般人に近接戦闘で負けることはないだろうな。
「では、次です! 桜様は前に出てきてください!」
「承知したでござる」
桜が呼ばれた。
「頑張ってくださいまし……」
エリスが心配そうな顔でそう声を掛けている。
「ありがとう。勝ってくるでござるよ」
桜は笑顔でそう答えて前に出る。
「そしてその相手は……楓様、お願いします!」
「え? 俺?」
俺は首を捻りながらも一応前に出る。
「俺は既に試合を終えているぞ?」
「もちろん存じております。先ほどの試合で相手を瞬時に撃破しましたので、この戦闘試験で一定以上の評価は確定しています」
「なら、2試合目は不要なんじゃ?」
「いえ、初撃で終わってしまったので、正確な実力の判断が難しいのです……。より正確な実力の把握のために、必要に応じて2試合目を設けさせてもらっています」
「なるほど。そういうことか」
さっきの男は、Cランク昇格試験に臨むくらいだし雑魚ではないのだろうが、俺の相手をするには不足している。
女性職員から見た俺の評価は、”Cランク昇格試験に臨む一般受験生を瞬時に撃破する程度の戦闘能力”ということまでは確定している。
しかし、現状ではそれ以上の情報がない。
だから、2試合目を行って判断しようというわけか。
「それなら仕方ないな」
俺は納得してそう答える。
「桜……。カエデさん……」
俺の背後から、不安げな声で俺の名を呼ぶ声が聞こえた。
振り向くと、そこには泣き出しそうな顔をして俺を見つめるエリスの姿があった。
「まさか、2人が戦うことになるなんて……」
「大げさだな。これはただの試験だぞ?」
俺はそう言う。
「エリス。心配ご無用でござる。規格外の楓殿が相手とはいえ、拙者もただで負けるつもりはござらぬ。拙者を信じてほしいでござるよ」
桜はそんなエリスの様子を見て、優しい笑みを浮かべながらそう言った。
「桜のことは信じていますわ。でも……」
エリスはまだ何か言いたそうだったが、それを遮るように女性職員が次の試合の開始を宣言したのだった。
さて、桜の実力を見せてもらうことにしよう。
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