上 下
51 / 94

51話 的あて試験

しおりを挟む
 Cランク昇格試験の続きだ。
 筆記テストは終わった。
 次は、演習場に出てきている。

「さて、皆さん揃いましたね。それでは今から、Cランク昇格試験の実技試験を始めましょう」

 俺たちが集合したのを確認すると、女性職員がそう言った。

「試験内容は至極単純です。攻撃魔法で、あちらの的を破壊すればいいのです」

 そう言って職員が指差したのは、少し離れたところにある的だった。
 全部で5つある。

「では早速始めましょう! まずはそちらの方、前に出てきて下さい」

 女性職員はそう言うと、1人の少女を指差した。
 彼女は……。

「わたしくが一番手ですか。腕が鳴りますね」

 1番最初に呼ばれたのは、エリスだった。
 彼女が前に出る。

「では、始めてください!」

 女性職員がそう告げた。
 そして、エリスが詠唱を始める。

「【ライトニング・バースト】!」

 バチッという音とともに、青白い光が放たれて的に直撃する。
 的の1つがバラバラに砕け散っていた。
 おお、やるな。
 彼女はその後も同様の魔法を発動していき、5つ全ての的を粉砕した。

「素晴らしい威力です。おめでとうございます」

 女性職員が拍手しながらそう言い、他の受験者たちから歓声が上がる。

「ありがとうございます。でも、わたくしは本職の魔法使いですし、この程度の魔法はできて当然ですよ」

 エリスはクールにそう答えていた。

「次は、そこの方ですね」

 そう言って次に呼ばれたのは、桜だった。

「むっ! 拙者でござるか……」

 桜が前に出た。

「では、始めてください!」

 女性職員がそう合図をする。
 そして、桜が詠唱を始めた。

「【火遁・微炎球の術】」

 彼女がそう叫ぶと同時に、掌から小さな火の玉が出現する。
 そして、的に向かってふらふらと飛んでいった。
 速度は遅い。
 そして、的に当たった瞬間、ボフンと音をたてながら消えてしまった。

 あまり威力は高くないな。
 桜は魔法が苦手のようだ。
 その後も数回発動し、ようやく1個目の的を粉砕したところで試験は終了となった。

「はい、そこまでです!」

「ふう……。最低限はできたでござろうか……」

 桜が額の汗を拭いながらそう呟いていた。

「それでは次の方は……。そちらの可愛らしい猫の服を着た方、お願いします」

「おう」

 俺は返事をして前に進む。

「あの子も可愛いよなー」

「ああ。しかし妙な格好だよな。舐めてるのか?」

「本当にな。あんなのが俺たちと同じくCランク冒険者を目指しているとは、世も末だぜ」

 そんな声が聞こえてきた。
 う、うるせえな。
 変な格好なのは自覚しているよ。
 俺は心の中で文句を言う。

「……よし」

 5つの的を破壊するだけの簡単なお仕事だ。
 猫耳装備があれば楽勝だろう。

「【ネコファイア】」

 俺は猫耳装備の能力を解放し、魔法を放つ。
 赤黒い閃光が一直線に伸びていき、的へ到達すると爆発した。
 ドガアアン!!
 けたたましい音が響き渡る。

「すげえ! なんだ今の!?」

「見たこともない魔法だぞ!」

 他の受験者たちがざわめいている。
 猫耳装備により俺は強力な攻撃魔法を使えるが、その中でもネコの名前を冠した魔法は段違いだ。

「さあて。次の的を撃つか」

 先ほどのネコファイアは、端の的1つに当てただけだ。
 残りの的を全部壊していかないと。
 俺はそう思ったが……。

「……ん?」

 残りの的は全て壊れていた。
 どうやら、最初の魔法の威力が高すぎたようだ。
 余波だけで他の的も粉砕してしまっている。

「あちゃ~。やりすぎちまったか」

 高威力はいいことなのだろうが、制御がイマイチだと思われると評価が低くなるかもしれない。
 俺は筆記テストの手応えも微妙だったし、少しマズいかもなあ……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

物理系魔法少女は今日も魔物をステッキでぶん殴る〜会社をクビになった俺、初配信をうっかりライブにしてしまい、有名になったんだが?〜

ネリムZ
ファンタジー
 この世界にはいくつものダンジョンが存在する。それは国ごとの資源物資でもあり、災害を引き起こすモノでもあった。  魔物が外に出ないように倒し、素材を持ち帰る職業を探索者と呼ぶ。  探索者にはありきたりなスキル、レベルと言った概念が存在する。  神宮寺星夜は月月火水木金金の勤務をしていた。  働けているなら問題ない、そんな思考になっていたのだが、突然のクビを受けてしまう。  貯金はあるがいずれ尽きる、生きる気力も失われていた星夜は探索者で稼ぐ事に決めた。  受付で名前を登録する時、なぜか自分で入力するはずの名前の欄に既に名前が入力されていた?!  実はその受付穣が⋯⋯。  不思議で懐かしな縁に気づかない星夜はダンジョンへと入り、すぐに異変に気づいた。  声が女の子のようになっていて、手足が細く綺麗であった。  ステータスカードを見て、スキルを確認するとなんと──  魔法少女となれる星夜は配信を初め、慣れない手つきで録画を開始した。  魔物を倒す姿が滑稽で、視聴者にウケて初配信なのにバズってしまう!  だが、本人は録画だと思っているため、それに気づくのは少し先の話である。  これは魔法少女の力を中途半端に手に入れたおっさんがゆったりと殴り、恋したり、嘆いたり、やっぱりゆぅたりする話だ。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話

猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。 バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。 『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか? ※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です ※カクヨム・小説家になろうでも公開しています

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...