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6話 ゴブリン討伐を報告

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 冒険者登録を終えた。
 受付を離れ、掲示板に向かう。

「さて、早速依頼を受けるかのう」

「そうだな。だけど、どの依頼を受けるんだ?」

「そうじゃな……、討伐系の依頼はどうじゃ? ゴブリンの群れなら、さっき討伐したじゃろう」

「ああ、まあな」

 先ほど討伐した分がカウントされるなら、すぐに依頼が達成扱いとなるかもしれない。
 だが、討伐したと証明する手段がない。
 一応ゴブリンの魔石は回収済みだが。
 とりあえず受付嬢に相談してみるか。
 再び受付の方に向かう。

「よう。ちょっといいか?」

「なんでしょう? 初めて受けられる依頼のご相談ですか?」

「えっと、そういうわけではないのだが……」

「では、なんでしょうか?」

「俺たちは、討伐依頼を受けたいと思っている」

「はあ、でしたら依頼用紙を取ってこちらに提出してください」

「実は、この町に来る前にゴブリンを討伐したんだ。魔石は回収しているのだが……。これって討伐依頼を達成したことにはできないのか?」

 俺はカバンから魔石を1つ取り出し、受付嬢に見せる。

「えっと、あ、はい。確かにゴブリンの魔石ですね。この大きさだと、D級相当です。融合前の魔石ですので、ちゃんと功績にも反映できます」

「融合?」

「ええっと。魔石は日常生活でよく使われていますよね。火の魔石や、水の魔石など……。意外に知らない方もいらっしゃいますが、魔物の魔石は基本的にそのままでは使えないのです。例えば火の魔石をベースにしてゴブリンの魔石を融合すると、火の魔石の魔力が充填されることになります」

「そうだったのか」

「魔物が残した魔石は、そのまま放置しておくと劣化していきます。そのため、なるべく早く各種の魔石に合成するのが一般的ですね。冒険者ギルドで買い取った魔石は、その日のうちに合成されます」

「なるほどな。で、ゴブリンの魔石もそうやって使うと?」

「はい。ですので、合成前の魔石を持っている方は、基本的には魔物を討伐されたとみなすことになります。魔石を買い取った上で、依頼の達成報酬をお渡ししますね」

「おお、それは助かる」

「いえ、当然のことです。では、ゴブリン1匹の討伐ということで……」

「ん? ああ、いや。それは見本としてとりあえず1つ出しただけだぞ。実はもっとある」

「へ?」

 今度は鞄の中に手を入れ、大量の魔石を取り出す。
 その数、およそ100個。

「ちょ、ちょっと待ってください! こんなにたくさんの魔石、一体どこで!?」

「もちろん、ゴブリンが落とした」

「そ、そんな…………。いくらなんでも多すぎです。劣化もしていない……。もしかして、本日だけでこれだけの量を!?」

「ああ、そうだ。今日は運良く大量に狩れたんでな」

 正確には、ユーリの案内のもとこちらから出向いて殲滅していったのだが。

「す、すごいです! では、カエデ様とユーリ様のお二方の功績として加算しておきますね!」

「む? いや、これはカエデが1人で討伐したぞ。我には、これほどの戦闘能力はないのじゃ」

「え? でも、この量ですよ?」

「うむ。信じがたいじゃろうが、本当じゃ」

 受付嬢は信じられないという顔をしていたが、しばらくして納得してくれたようだ。

「わかりました。カエデ様の実力を見誤っていたようで申し訳ありません」

「いや、別に謝ることではない」

「えっと、それではお預かりしたこの魔石はすべて査定いたしますので、少々お待ちください」

 受付嬢がそう言って、魔石を何かの機械のようなものに入れ込む。

「なんじゃ、それは?」

「ああ、見るのは初めてですか? これは鑑定器と呼ばれる魔道具でして、魔石が含有している魔力を調べることができます」

「ほう、便利なものがあるのだな」

 異世界には異世界なりの科学(?)が発達しているようだ。

「はい。他にも様々な用途がありまして、冒険者の方々のサポートに役立てておりますよ」

 受付嬢がそう言う。
 それから、しばらくして。

「集計が完了しました。こちらが、魔石の買い取り金となっております」

 受付嬢が布袋を取り出した。
 ジャラリという音が聞こえてくることから、かなりの額が入っていることが予想できる。
 とてもありがたい。
 何故なら、今の俺の所持金は……0だからだ。

「次に、カエデ様のランクアップの処理を行います。ギルドカードを提示ください」

「え? もう昇格か?」

「はい。こんなに大量の魔石を持ち込んでくださるなんて……。普通はありえないことです。なので、今回は特例としてランクアップの処置を取らせていただきます」

「そうか。ありがとう」

 俺はギルドカードを取り出し、受付嬢に渡す。
 彼女が何やら処理を進めていく。

「はい、これにてカエデ様はDランクに昇格となります。おめでとうございます!」

「おお、ありがとう。ちなみに、Dランクはどれぐらいの位置なんだ?」

「Dランクは一人前の平均的な冒険者ですね。もっとも人数が多いです」

「ふむ。では、Cランクは?」

「Cランクは各町のエース級の冒険者です。Cランクになるには、様々な依頼をこなさなければなりません。実績を積んでいく必要がありますね」

「なるほど」

「カエデ様の戦闘能力ならCランクにもいずれなれるでしょう。頑張ってください」

「おう。期待していてくれ。……ところで、俺はこの町は初めてなんだ。オススメの宿はあるか?」

「それなら、『憩いの宿』に宿泊されることをお勧めします」

「憩いの宿か」

「冒険者の方々の間で評判の宿屋です。夕食の味に定評があります」

「それはいいな。そこにしよう」

 こうして、俺は無事に冒険者登録とゴブリン討伐の報告を終えた。
 『憩いの宿』で休むことにしよう。
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