6 / 94
6話 ゴブリン討伐を報告
しおりを挟む
冒険者登録を終えた。
受付を離れ、掲示板に向かう。
「さて、早速依頼を受けるかのう」
「そうだな。だけど、どの依頼を受けるんだ?」
「そうじゃな……、討伐系の依頼はどうじゃ? ゴブリンの群れなら、さっき討伐したじゃろう」
「ああ、まあな」
先ほど討伐した分がカウントされるなら、すぐに依頼が達成扱いとなるかもしれない。
だが、討伐したと証明する手段がない。
一応ゴブリンの魔石は回収済みだが。
とりあえず受付嬢に相談してみるか。
再び受付の方に向かう。
「よう。ちょっといいか?」
「なんでしょう? 初めて受けられる依頼のご相談ですか?」
「えっと、そういうわけではないのだが……」
「では、なんでしょうか?」
「俺たちは、討伐依頼を受けたいと思っている」
「はあ、でしたら依頼用紙を取ってこちらに提出してください」
「実は、この町に来る前にゴブリンを討伐したんだ。魔石は回収しているのだが……。これって討伐依頼を達成したことにはできないのか?」
俺はカバンから魔石を1つ取り出し、受付嬢に見せる。
「えっと、あ、はい。確かにゴブリンの魔石ですね。この大きさだと、D級相当です。融合前の魔石ですので、ちゃんと功績にも反映できます」
「融合?」
「ええっと。魔石は日常生活でよく使われていますよね。火の魔石や、水の魔石など……。意外に知らない方もいらっしゃいますが、魔物の魔石は基本的にそのままでは使えないのです。例えば火の魔石をベースにしてゴブリンの魔石を融合すると、火の魔石の魔力が充填されることになります」
「そうだったのか」
「魔物が残した魔石は、そのまま放置しておくと劣化していきます。そのため、なるべく早く各種の魔石に合成するのが一般的ですね。冒険者ギルドで買い取った魔石は、その日のうちに合成されます」
「なるほどな。で、ゴブリンの魔石もそうやって使うと?」
「はい。ですので、合成前の魔石を持っている方は、基本的には魔物を討伐されたとみなすことになります。魔石を買い取った上で、依頼の達成報酬をお渡ししますね」
「おお、それは助かる」
「いえ、当然のことです。では、ゴブリン1匹の討伐ということで……」
「ん? ああ、いや。それは見本としてとりあえず1つ出しただけだぞ。実はもっとある」
「へ?」
今度は鞄の中に手を入れ、大量の魔石を取り出す。
その数、およそ100個。
「ちょ、ちょっと待ってください! こんなにたくさんの魔石、一体どこで!?」
「もちろん、ゴブリンが落とした」
「そ、そんな…………。いくらなんでも多すぎです。劣化もしていない……。もしかして、本日だけでこれだけの量を!?」
「ああ、そうだ。今日は運良く大量に狩れたんでな」
正確には、ユーリの案内のもとこちらから出向いて殲滅していったのだが。
「す、すごいです! では、カエデ様とユーリ様のお二方の功績として加算しておきますね!」
「む? いや、これはカエデが1人で討伐したぞ。我には、これほどの戦闘能力はないのじゃ」
「え? でも、この量ですよ?」
「うむ。信じがたいじゃろうが、本当じゃ」
受付嬢は信じられないという顔をしていたが、しばらくして納得してくれたようだ。
「わかりました。カエデ様の実力を見誤っていたようで申し訳ありません」
「いや、別に謝ることではない」
「えっと、それではお預かりしたこの魔石はすべて査定いたしますので、少々お待ちください」
受付嬢がそう言って、魔石を何かの機械のようなものに入れ込む。
「なんじゃ、それは?」
「ああ、見るのは初めてですか? これは鑑定器と呼ばれる魔道具でして、魔石が含有している魔力を調べることができます」
「ほう、便利なものがあるのだな」
異世界には異世界なりの科学(?)が発達しているようだ。
「はい。他にも様々な用途がありまして、冒険者の方々のサポートに役立てておりますよ」
受付嬢がそう言う。
それから、しばらくして。
「集計が完了しました。こちらが、魔石の買い取り金となっております」
受付嬢が布袋を取り出した。
ジャラリという音が聞こえてくることから、かなりの額が入っていることが予想できる。
とてもありがたい。
何故なら、今の俺の所持金は……0だからだ。
「次に、カエデ様のランクアップの処理を行います。ギルドカードを提示ください」
「え? もう昇格か?」
「はい。こんなに大量の魔石を持ち込んでくださるなんて……。普通はありえないことです。なので、今回は特例としてランクアップの処置を取らせていただきます」
「そうか。ありがとう」
俺はギルドカードを取り出し、受付嬢に渡す。
彼女が何やら処理を進めていく。
「はい、これにてカエデ様はDランクに昇格となります。おめでとうございます!」
「おお、ありがとう。ちなみに、Dランクはどれぐらいの位置なんだ?」
「Dランクは一人前の平均的な冒険者ですね。もっとも人数が多いです」
「ふむ。では、Cランクは?」
「Cランクは各町のエース級の冒険者です。Cランクになるには、様々な依頼をこなさなければなりません。実績を積んでいく必要がありますね」
「なるほど」
「カエデ様の戦闘能力ならCランクにもいずれなれるでしょう。頑張ってください」
「おう。期待していてくれ。……ところで、俺はこの町は初めてなんだ。オススメの宿はあるか?」
「それなら、『憩いの宿』に宿泊されることをお勧めします」
「憩いの宿か」
「冒険者の方々の間で評判の宿屋です。夕食の味に定評があります」
「それはいいな。そこにしよう」
こうして、俺は無事に冒険者登録とゴブリン討伐の報告を終えた。
『憩いの宿』で休むことにしよう。
受付を離れ、掲示板に向かう。
「さて、早速依頼を受けるかのう」
「そうだな。だけど、どの依頼を受けるんだ?」
「そうじゃな……、討伐系の依頼はどうじゃ? ゴブリンの群れなら、さっき討伐したじゃろう」
「ああ、まあな」
先ほど討伐した分がカウントされるなら、すぐに依頼が達成扱いとなるかもしれない。
だが、討伐したと証明する手段がない。
一応ゴブリンの魔石は回収済みだが。
とりあえず受付嬢に相談してみるか。
再び受付の方に向かう。
「よう。ちょっといいか?」
「なんでしょう? 初めて受けられる依頼のご相談ですか?」
「えっと、そういうわけではないのだが……」
「では、なんでしょうか?」
「俺たちは、討伐依頼を受けたいと思っている」
「はあ、でしたら依頼用紙を取ってこちらに提出してください」
「実は、この町に来る前にゴブリンを討伐したんだ。魔石は回収しているのだが……。これって討伐依頼を達成したことにはできないのか?」
俺はカバンから魔石を1つ取り出し、受付嬢に見せる。
「えっと、あ、はい。確かにゴブリンの魔石ですね。この大きさだと、D級相当です。融合前の魔石ですので、ちゃんと功績にも反映できます」
「融合?」
「ええっと。魔石は日常生活でよく使われていますよね。火の魔石や、水の魔石など……。意外に知らない方もいらっしゃいますが、魔物の魔石は基本的にそのままでは使えないのです。例えば火の魔石をベースにしてゴブリンの魔石を融合すると、火の魔石の魔力が充填されることになります」
「そうだったのか」
「魔物が残した魔石は、そのまま放置しておくと劣化していきます。そのため、なるべく早く各種の魔石に合成するのが一般的ですね。冒険者ギルドで買い取った魔石は、その日のうちに合成されます」
「なるほどな。で、ゴブリンの魔石もそうやって使うと?」
「はい。ですので、合成前の魔石を持っている方は、基本的には魔物を討伐されたとみなすことになります。魔石を買い取った上で、依頼の達成報酬をお渡ししますね」
「おお、それは助かる」
「いえ、当然のことです。では、ゴブリン1匹の討伐ということで……」
「ん? ああ、いや。それは見本としてとりあえず1つ出しただけだぞ。実はもっとある」
「へ?」
今度は鞄の中に手を入れ、大量の魔石を取り出す。
その数、およそ100個。
「ちょ、ちょっと待ってください! こんなにたくさんの魔石、一体どこで!?」
「もちろん、ゴブリンが落とした」
「そ、そんな…………。いくらなんでも多すぎです。劣化もしていない……。もしかして、本日だけでこれだけの量を!?」
「ああ、そうだ。今日は運良く大量に狩れたんでな」
正確には、ユーリの案内のもとこちらから出向いて殲滅していったのだが。
「す、すごいです! では、カエデ様とユーリ様のお二方の功績として加算しておきますね!」
「む? いや、これはカエデが1人で討伐したぞ。我には、これほどの戦闘能力はないのじゃ」
「え? でも、この量ですよ?」
「うむ。信じがたいじゃろうが、本当じゃ」
受付嬢は信じられないという顔をしていたが、しばらくして納得してくれたようだ。
「わかりました。カエデ様の実力を見誤っていたようで申し訳ありません」
「いや、別に謝ることではない」
「えっと、それではお預かりしたこの魔石はすべて査定いたしますので、少々お待ちください」
受付嬢がそう言って、魔石を何かの機械のようなものに入れ込む。
「なんじゃ、それは?」
「ああ、見るのは初めてですか? これは鑑定器と呼ばれる魔道具でして、魔石が含有している魔力を調べることができます」
「ほう、便利なものがあるのだな」
異世界には異世界なりの科学(?)が発達しているようだ。
「はい。他にも様々な用途がありまして、冒険者の方々のサポートに役立てておりますよ」
受付嬢がそう言う。
それから、しばらくして。
「集計が完了しました。こちらが、魔石の買い取り金となっております」
受付嬢が布袋を取り出した。
ジャラリという音が聞こえてくることから、かなりの額が入っていることが予想できる。
とてもありがたい。
何故なら、今の俺の所持金は……0だからだ。
「次に、カエデ様のランクアップの処理を行います。ギルドカードを提示ください」
「え? もう昇格か?」
「はい。こんなに大量の魔石を持ち込んでくださるなんて……。普通はありえないことです。なので、今回は特例としてランクアップの処置を取らせていただきます」
「そうか。ありがとう」
俺はギルドカードを取り出し、受付嬢に渡す。
彼女が何やら処理を進めていく。
「はい、これにてカエデ様はDランクに昇格となります。おめでとうございます!」
「おお、ありがとう。ちなみに、Dランクはどれぐらいの位置なんだ?」
「Dランクは一人前の平均的な冒険者ですね。もっとも人数が多いです」
「ふむ。では、Cランクは?」
「Cランクは各町のエース級の冒険者です。Cランクになるには、様々な依頼をこなさなければなりません。実績を積んでいく必要がありますね」
「なるほど」
「カエデ様の戦闘能力ならCランクにもいずれなれるでしょう。頑張ってください」
「おう。期待していてくれ。……ところで、俺はこの町は初めてなんだ。オススメの宿はあるか?」
「それなら、『憩いの宿』に宿泊されることをお勧めします」
「憩いの宿か」
「冒険者の方々の間で評判の宿屋です。夕食の味に定評があります」
「それはいいな。そこにしよう」
こうして、俺は無事に冒険者登録とゴブリン討伐の報告を終えた。
『憩いの宿』で休むことにしよう。
0
お気に入りに追加
127
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最強のコミュ障探索者、Sランクモンスターから美少女配信者を助けてバズりたおす~でも人前で喋るとか無理なのでコラボ配信は断固お断りします!~
尾藤みそぎ
ファンタジー
陰キャのコミュ障女子高生、灰戸亜紀は人見知りが過ぎるあまりソロでのダンジョン探索をライフワークにしている変わり者。そんな彼女は、ダンジョンの出現に呼応して「プライムアビリティ」に覚醒した希少な特級探索者の1人でもあった。
ある日、亜紀はダンジョンの中層に突如現れたSランクモンスターのサラマンドラに襲われている探索者と遭遇する。
亜紀は人助けと思って、サラマンドラを一撃で撃破し探索者を救出。
ところが、襲われていたのは探索者兼インフルエンサーとして知られる水無瀬しずくで。しかも、救出の様子はすべて生配信されてしまっていた!?
そして配信された動画がバズりまくる中、偶然にも同じ学校の生徒だった水無瀬しずくがお礼に現れたことで、亜紀は瞬く間に身バレしてしまう。
さらには、ダンジョン管理局に目をつけられて依頼が舞い込んだり、水無瀬しずくからコラボ配信を持ちかけられたり。
コミュ障を極めてひっそりと生活していた亜紀の日常はガラリと様相を変えて行く!
はたして表舞台に立たされてしまった亜紀は安らぎのぼっちライフを守り抜くことができるのか!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる