S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

文字の大きさ
上 下
306 / 307
第1章

306話 前世の記憶?ー2

しおりを挟む
「……まさか、お前は」

「お?」

 俺はリリナの頭を撫でる。
 こうすると、彼女はとても喜ぶのだ。

「ど、どうしたのじゃ、急に?」

「いや……」

 俺は確信する。
 やはり、彼女は……。

「お前、リリアか?」

「ふふふ……。ようやく気付いたようじゃの」

 リリナが口角を上げる。
 顔立ちは、リリアとリリナではっきりと異なる。
 だが、その笑い方はまさにリリアと同じように見えた。

「……ルーシーとの愛の結晶に、こんな邪悪なものが紛れ込んでいたとは……。お前と暮らした日々は間違いなく宝物だった。しかし、悪を放ってはおけん。悲しいが、娘よ……」

「ちょっ……! ま、待つのじゃ!!」

 俺は諸悪の根源を排除するべく、魔力を開放する。
 後顧の憂いを断つには、殺すのが確実だ。
 最低でも、特殊な拘束をした上での軟禁は必要だろう。
 俺の魔力量や敵意に恐怖を感じたのか、リリナは弁解するように捲し立てた。

「余は父の娘で間違いないのじゃ!」

「だが、前世は竜王リリアなのだろう?」

「確かにそう言ったのじゃが……。正確には違うのじゃ! 母の体内にあった魂が余にも受け継がれていて、その中で特に自我の強かったものが竜王リリアで……」

「……ほう? つまるところ、お前は何者なんだ?」

「余は……リリナじゃ! 父と母の娘じゃ!」

 リリナが叫ぶ。
 詳しいことは理解しきれていないが、おおよその事情は分かった。
 リリナは『前世』という表現を使ったが、それは正確ではない。
 リリナの魂の中に、竜王リリアの魂が併存しているようだ。
 小さい頃から『余』とか『~なのじゃ』とか言っていたのも、その影響なのだろう。

 竜王リリアの魂は、いつどうやって紛れ込んできたのか?
 おそらく、俺との決戦に敗れた際に苦し紛れにルーシーの体内に魂だけで逃げ込んだのだろう。
 その後、妊娠のタイミングで赤子へ乗り移ったのだ。
 それが偶然の出来事か意図的なものかは分からないが……。

「分かった……。とりあえずは信じることにする」

「ほっ……」

「だが、なぜ今になってそれを伝えようと思ったんだ?」

「……子どもの頃は、体にいくつもの魂があるのが普通じゃと思っていたのじゃ。じゃが、大きくなるにつれ、その異常性に気付くようになった。そして、少し前にあった成人の儀で、余は強力なスキルを授かった。その影響か、竜王リリアを始めとする魂たちがより鮮明に感じられるようになって……。余もようやく、自分の状態を理解できたのじゃ」

「なるほどな」

 俺は納得する。
 リリナは、あくまで俺とルーシーの娘だ。
 竜王リリアではない。
 だが、竜王リリアの魂からも強い影響を受けているようだ。

「興味深い現象だ。そう言えば、リリナが授かったスキルは――ん?」

 俺は攻撃の前兆を感じ取る。
 これは……。

「うりゃあああぁっ! 【聖剣・エクスカリバー】!!!」

「なっ……!?」

「伏せろ、リリナ!!」

 俺は咄嗟に娘を押し倒す。
 それとほぼ同時に、俺とリリナのいた場所を光の刃が通過した。

「あ、危ねぇ!? この剣筋は……。おい、ルーク! またやったのか!?」

 俺は叫ぶ。
 直後、息子であるルークが血相を変えてこちらに走ってきた。

「す、すみません! お父さん! まだスキルの制御ができなくて……!」

「剣を宮殿近くで振り回すな! 危ないだろ!!」

「は、はい……。次からは気をつけます」

 ルークが頭を下げる。
 リリナの双子の弟であるルークは、姉に比べてややおとなしい子だった。
 しかし、彼が得たスキルもまた凄まじい。
 俺の後を継ぐのに十分な力だ。

「まったく……。それで、ルーク? 間に合いそうなのか?」

「はい。そっちの方の準備は、もう終わっています」

「さすがは俺の息子だ」

 俺は彼を褒める。
 聖竜帝国は、またもや戦争の危機に直面していた。
 ここ最近、はるかな海の向こうにある魔大陸から、魔族たちがたびたび侵攻してくるようになったのだ。
 もちろん、黙ってやられている俺たちではない。
 逆に魔大陸に攻め入るべく、新たな軍――遠征軍を編制中だ。
 その軍の副大将が、ルークなのである。

「外敵を粉砕しつつ……久しぶりの家族旅行といこうか。楽しみだな」

 俺はルークやリリナの頭を撫でつつ、そう呟いたのだった。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...