206 / 307
第1章
206話 ライル一行vs連合軍-1
しおりを挟む 入学当初は週の半分くらい休んでいたルイシャだが、入学して半年が経つ頃には月に数日休む程度まで学園生活に慣れ、体調管理も上手く出来るようになっていた。
学業の方は今のところ問題なく、先日行われたテストでは全教科平均点より上の点数を採れたので安心している。
気になる点があるとすれば、仲の良い友人が居ないことだった。
(休むことが多かったから仕方がないのだけど……)
入学当初体調を崩して休みがちだったルイシャは、見事に友人作りの機会を逃してしまったのだ。気がつけば既に仲の良いグループが出来上がっていた。今さらそこに入るコミュニケーション能力をルイシャは持ち合わせていなかった。
クラスメイトたちは親切で、困っていれば助けてくれるのは幸いだったが、友人と呼べる者が居ないのは寂しい気持ちになるルイシャだった。
そんな友人の居ないルイシャが、カインとジェイスを除いて一番話をする相手といえばクロエだった。
放課後、生徒会室に行けば顔を合わせる相手なので必然的といえばそうなのだが、前回のやり取りがあって少し苦手意識がルイシャにはあった。
それに、役員としてカインの隣で話しているクロエの姿は乙女ゲームの映像と重なって、とても複雑な気持ちになった。
クロエがカインに特別接近しているわけではない。ジェイスや他の役員たちとも同じ距離感で話している。本当に役員としての関わりだと、見ていれば分かる。
ルイシャに対しても普通に笑顔で話しかけてくれている。
(それなのに嫉妬するなんて、彼女にもカイン様にも失礼だわ)
そう思っても、モヤモヤする気持ちは払拭出来なかった。
時は流れ、季節外れの寒さが連日続いた。
このような寒暖の差が激しい時は体調を崩しやすいため、ルイシャはいつも以上に気を付けていたが、やはり熱を出してしまった。
久しぶりにあの絶妙な色と味と臭いの薬湯のお世話にもなった。
幼少期に比べて体力があるため、すぐに熱は下がり、何日も寝込むことはなかった。
心配してお見舞いに来てくれたカインも、思ったより元気そうなルイシャの様子をみて安心した表情を浮かべていた。
「コルトンさん、体の調子は大丈夫ですか?」
二日休んで学園に登校し、いつものように放課後は生徒会室へ行く。すると、ルイシャに気が付いたクロエが近づいてきて話しかけてきた。
少し苦手意識を感じていたが、生徒会室に行く度に話していれば慣れてくるもので、今ではルイシャも普通にクロエと会話する仲になっていた。
今のルイシャとクロエは、知り合い以上友人未満という微妙な関係だった。
「ええ、もう大丈夫です」
「それなら良かった。コルトンさん、体が弱いと聞いていたので気になってたんです」
ルイシャの返事を聞いて、にこりと表情を崩すクロエの様子は、本当に体調を案じてくれていたようだった。
しかし、続いた言葉にルイシャの胸はズキッと刃物が刺さったように痛んだ。
「最近寒かったですもんね。季節の変化くらいで体調を崩さないように、もっと健康に気を付けないと。会長も心配そうでした」
「そう、ですね」
絞り出すように返事をしたが、込み上げてきた涙でルイシャの視界が滲む。
(そんなこと、言われなくても私が一番わかっているわ。私だって、もっと健康になりたいのに……)
「すみません、ちょっと」
クロエに涙を見せたくなくて、ルイシャは急いで立ち上がると、小走りで生徒会室を出た。
背後で「え、コルトンさん?」とクロエの戸惑った声が聞こえたが、振り返ることは出来なかった。
学業の方は今のところ問題なく、先日行われたテストでは全教科平均点より上の点数を採れたので安心している。
気になる点があるとすれば、仲の良い友人が居ないことだった。
(休むことが多かったから仕方がないのだけど……)
入学当初体調を崩して休みがちだったルイシャは、見事に友人作りの機会を逃してしまったのだ。気がつけば既に仲の良いグループが出来上がっていた。今さらそこに入るコミュニケーション能力をルイシャは持ち合わせていなかった。
クラスメイトたちは親切で、困っていれば助けてくれるのは幸いだったが、友人と呼べる者が居ないのは寂しい気持ちになるルイシャだった。
そんな友人の居ないルイシャが、カインとジェイスを除いて一番話をする相手といえばクロエだった。
放課後、生徒会室に行けば顔を合わせる相手なので必然的といえばそうなのだが、前回のやり取りがあって少し苦手意識がルイシャにはあった。
それに、役員としてカインの隣で話しているクロエの姿は乙女ゲームの映像と重なって、とても複雑な気持ちになった。
クロエがカインに特別接近しているわけではない。ジェイスや他の役員たちとも同じ距離感で話している。本当に役員としての関わりだと、見ていれば分かる。
ルイシャに対しても普通に笑顔で話しかけてくれている。
(それなのに嫉妬するなんて、彼女にもカイン様にも失礼だわ)
そう思っても、モヤモヤする気持ちは払拭出来なかった。
時は流れ、季節外れの寒さが連日続いた。
このような寒暖の差が激しい時は体調を崩しやすいため、ルイシャはいつも以上に気を付けていたが、やはり熱を出してしまった。
久しぶりにあの絶妙な色と味と臭いの薬湯のお世話にもなった。
幼少期に比べて体力があるため、すぐに熱は下がり、何日も寝込むことはなかった。
心配してお見舞いに来てくれたカインも、思ったより元気そうなルイシャの様子をみて安心した表情を浮かべていた。
「コルトンさん、体の調子は大丈夫ですか?」
二日休んで学園に登校し、いつものように放課後は生徒会室へ行く。すると、ルイシャに気が付いたクロエが近づいてきて話しかけてきた。
少し苦手意識を感じていたが、生徒会室に行く度に話していれば慣れてくるもので、今ではルイシャも普通にクロエと会話する仲になっていた。
今のルイシャとクロエは、知り合い以上友人未満という微妙な関係だった。
「ええ、もう大丈夫です」
「それなら良かった。コルトンさん、体が弱いと聞いていたので気になってたんです」
ルイシャの返事を聞いて、にこりと表情を崩すクロエの様子は、本当に体調を案じてくれていたようだった。
しかし、続いた言葉にルイシャの胸はズキッと刃物が刺さったように痛んだ。
「最近寒かったですもんね。季節の変化くらいで体調を崩さないように、もっと健康に気を付けないと。会長も心配そうでした」
「そう、ですね」
絞り出すように返事をしたが、込み上げてきた涙でルイシャの視界が滲む。
(そんなこと、言われなくても私が一番わかっているわ。私だって、もっと健康になりたいのに……)
「すみません、ちょっと」
クロエに涙を見せたくなくて、ルイシャは急いで立ち上がると、小走りで生徒会室を出た。
背後で「え、コルトンさん?」とクロエの戸惑った声が聞こえたが、振り返ることは出来なかった。
0
お気に入りに追加
1,247
あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる