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第1章

101話 あ、あなたは……

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 村を襲うミドル・ボア。
 男衆は劣勢でケガ人も続出していましたが、私が加勢してミドル・ボアを殴り飛ばしました。

「お、おおぉっ! さすがはサテラさん!」

「凄えぞ! 一人で倒しちまった!!」

「あのミドル・ボアをあんなに吹っ飛ばすなんて……!」

 周囲の男衆は歓声を上げてくれています。
 どうやら、みんな私の力を信頼してくれているようです。
 まあ、それも当然のことです。
 だって、ライル様がくれたこの力で、これまで多くの魔物を倒してきましたし。
 いつの頃からか、”サテラさん”だなんてさん付けで呼ばれるようにもなりました。
 昔は”サテラちゃん”とか”嬢ちゃん”とか”そこの女”とか呼ばれていたのに……。

 これも全て、ライル様のおかげですね。
 感謝してもしきれません。
 というわけで、ミドル・ボアを仕留めましょう。
 私はミドル・ボアに駆け寄ります。

「これでとどめぇっ!!」

「プギイィイッ……」

 私が放った渾身の右ストレートが直撃したミドル・ボアは、断末魔の声を上げて息絶えました。
 その巨体はズシンという音を立てて崩れ落ち、辺りに血が広がっていきます。

「「うおおおっ! さすがはサテラさんだ!!」」

「さすがは村の救世主!」

「うむ! 頼もしいな!!」

 周囲を見ると、みんな嬉々として声援を送ってくれています。
 何だかくすぐったい気分です。
 みんなからこんな風に言われると、照れてきちゃいます。

「ふふっ……ありがとうございます。――って、あ、危ないっ!」

「へっ? ぎゃーーーーっ!!」

「ぐあああぁっ!!」

 新たに乱入してきた猪型の魔獣。
 そいつの突進を受け、他の村人たちも次々に弾き飛ばされていくではありませんか!

「くぅううう……! もう1匹いたなんて……!」

 私はすぐに立ち上がり、身構えます。
 さっきの戦闘でかなりの力を使ってしまっていますが、ここで倒れるわけにはいきません。

「はああぁっ! 私はまだまだ負けないんだから!!」

 タックルを右の竜手で受け止める私。
 ミドル・ボアの攻撃力なら、多少疲れた私でも大丈夫。
 そう思ったのですが――

「ブモオォッ!!」

「あぐっ!」

 想定以上に衝撃が大きかったのです。
 私はそのまま跳ね飛ばされてしまいました。

「……くうっ」

 地面に背中を強く打ちつけられ、一瞬呼吸ができなくなりました。
 それでも何とか立ち上がる私。

「くっ! よく見れば、こいつはギガント・ボアじゃ……?」

 ミドル・ボアの上位種。
 全快状態の私でもかなり厳しい相手です。
 ただ、諦めるわけにはいきません。

 村は私が守らないと!
 全身の痛みに顔を歪めながらも、再び拳を構えます。
 でも――

「ブオオオッ!!」

「ひぃっ!!?」

「「どわああああっ!!!」」

 さらに数匹のミドル・ボアが現れ、次々と村人たちを襲い始めます。

「こ、こんな……。魔獣の大発生? 一体どうして……」

 この数を私1人で倒し切るのは無理です。
 せめてギガント・ボアだけでも……。
 私は魔力を集中させ、右腕を変化させ――

「うっ!? た、体力が足りない……」

 ライル様にいただいたお力ですが、元は非力な私です。
 もう限界が訪れてしまったようです。

(ごめんなさい、私の赤ちゃん……)

 私は覚悟を決めて目を閉じます。
 愛しい赤ちゃんの顔を思い浮かべながら。
 しかし、いつまで経ってもミドル・ボアは私を攻撃してきませんでした。
 恐る恐る目を開けると、そこには見覚えのある少年の姿がありました。

「あ、あなたは……」

「よう。また会ったな」

 そこに立っていたのは、私の愛しい御方。
 ライル様でした!
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