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第1章
86話 【過去編】狂い出す歯車
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3年後、ブリケード王国王城の庭にて――
「おらぁっ! スキありだぜ、兄貴!」
「ぐっ!!」
ライルは弟ガルドからの攻撃を受けた。
ダメージを受け、地面に倒れ込む。
「くそっ! 負けたか……悔しいな」
ライルがそう呟く。
「へへっ。俺も強くなったもんだぜ」
「そうだな。ガルドは強くなったよ」
数年前までは、彼らには明確な実力差があった。
ライルの方が3歳年上で体の成長具合が違ったし、剣術の才能や日々の努力という点でもライルの方がやや上だったからだ。
だが、今の彼らの立場は逆転している。
「へへん。そりゃあどうも。ま、兄貴にはまだ未覚醒のスキルがあるだろ? 確か、『竜化』とかいうやつだろ?」
「ああ。確かに俺はS級スキル『竜化』を得た。だが、2年経った今でも、まだ使いこなせていないからな」
ライルは苦笑しつつ答える。
スキルの発動自体はできるのだが、何度挑戦してもただの巨大トカゲにしか変化できないのだ。
スキルのランクや名前を把握できるのは、本人のみ。
王城の一部では、『第一王子ライルが得たスキルはトカゲ化なのではないか』などと囁かれていた。
「はは、情けねぇぜ。そんなんじゃ、いつまで経っても結婚できねえぞ、兄貴」
「うるさい。ほっといてくれ」
ライルは顔をしかめる。
彼は現在婚約者がいない。
国王の息子という立場を考えれば、本来ならば既に婚約していてもおかしくはない年齢なのだが、本人が積極的に婚約を進めようとしない。
そして何より、スキルをまともに使いこなせていないのがマズかった。
王族は強力なスキルを得る傾向にある。
B級スキル持ちが多い。
C級スキルは王族としては弱い部類だが、一般的に見れば有用だ。
使いこなせて見せれば、一定の立場は確立できる。
A級スキルを得れば、王族の中でも比較的有望株とされる。
S級スキル持ちは王族とはいえども100年に1人いるかいないかのレベルだ。
ライルが得たスキルが本当にS級スキルであれば、ブリケード王国の輝かしい未来は約束されたようなものだ。
だが、なにせスキルのランクや名前は本人にしか確認できない。
そのため、王城の雰囲気はやや怪しいものになりつつある。
「そう言うガルドも、ついに来年に成人の儀式があるな」
「おう! 俺の勘じゃ、たぶん剣術系のスキルをもらえそうな気がするんだよな」
「確かにその可能性はあるな」
「まっ、期待しといてくれや。俺のスキルで、この国の平和を守ってやるからよ」
ガルドがニッと笑う。
やや粗暴な彼だが、王族として教育を受けているだけあり、決して愚かではない。
むしろ、愛国心は強い方だ。
「頼もしいな。お前なら立派になれるさ」
「へへ、あんがとよ」
こうして2人は笑い合う。
第一王子ライル。
16歳。
2年前の成人の儀でS級スキル『竜化』を得るも、まだ使いこなせる気配はない。
第二王子ガルド。
13歳。
1年後に控えた成人の儀で、A級スキル『剣聖』を得ることになる。
それぞれの身に余るほど強大なスキルを得た、あるいは得ることになる彼らの運命の歯車は、少しずつ狂い始めていたのだった。
「おらぁっ! スキありだぜ、兄貴!」
「ぐっ!!」
ライルは弟ガルドからの攻撃を受けた。
ダメージを受け、地面に倒れ込む。
「くそっ! 負けたか……悔しいな」
ライルがそう呟く。
「へへっ。俺も強くなったもんだぜ」
「そうだな。ガルドは強くなったよ」
数年前までは、彼らには明確な実力差があった。
ライルの方が3歳年上で体の成長具合が違ったし、剣術の才能や日々の努力という点でもライルの方がやや上だったからだ。
だが、今の彼らの立場は逆転している。
「へへん。そりゃあどうも。ま、兄貴にはまだ未覚醒のスキルがあるだろ? 確か、『竜化』とかいうやつだろ?」
「ああ。確かに俺はS級スキル『竜化』を得た。だが、2年経った今でも、まだ使いこなせていないからな」
ライルは苦笑しつつ答える。
スキルの発動自体はできるのだが、何度挑戦してもただの巨大トカゲにしか変化できないのだ。
スキルのランクや名前を把握できるのは、本人のみ。
王城の一部では、『第一王子ライルが得たスキルはトカゲ化なのではないか』などと囁かれていた。
「はは、情けねぇぜ。そんなんじゃ、いつまで経っても結婚できねえぞ、兄貴」
「うるさい。ほっといてくれ」
ライルは顔をしかめる。
彼は現在婚約者がいない。
国王の息子という立場を考えれば、本来ならば既に婚約していてもおかしくはない年齢なのだが、本人が積極的に婚約を進めようとしない。
そして何より、スキルをまともに使いこなせていないのがマズかった。
王族は強力なスキルを得る傾向にある。
B級スキル持ちが多い。
C級スキルは王族としては弱い部類だが、一般的に見れば有用だ。
使いこなせて見せれば、一定の立場は確立できる。
A級スキルを得れば、王族の中でも比較的有望株とされる。
S級スキル持ちは王族とはいえども100年に1人いるかいないかのレベルだ。
ライルが得たスキルが本当にS級スキルであれば、ブリケード王国の輝かしい未来は約束されたようなものだ。
だが、なにせスキルのランクや名前は本人にしか確認できない。
そのため、王城の雰囲気はやや怪しいものになりつつある。
「そう言うガルドも、ついに来年に成人の儀式があるな」
「おう! 俺の勘じゃ、たぶん剣術系のスキルをもらえそうな気がするんだよな」
「確かにその可能性はあるな」
「まっ、期待しといてくれや。俺のスキルで、この国の平和を守ってやるからよ」
ガルドがニッと笑う。
やや粗暴な彼だが、王族として教育を受けているだけあり、決して愚かではない。
むしろ、愛国心は強い方だ。
「頼もしいな。お前なら立派になれるさ」
「へへ、あんがとよ」
こうして2人は笑い合う。
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16歳。
2年前の成人の儀でS級スキル『竜化』を得るも、まだ使いこなせる気配はない。
第二王子ガルド。
13歳。
1年後に控えた成人の儀で、A級スキル『剣聖』を得ることになる。
それぞれの身に余るほど強大なスキルを得た、あるいは得ることになる彼らの運命の歯車は、少しずつ狂い始めていたのだった。
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