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第1章

53話 見張りってのは……こいつらのことか?

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 盗賊団のアジトの大部屋前に着いた。
 ミルカが大部屋内へと全裸で突撃していく。
 盗賊たちにとって、突如現れた侵入者は予想外の存在だったようだ。
 彼らは驚き慌てふためき始める。

「な、なんだテメエ!」

「どこから入ってきた!?」

「おい、見張りは何してやがる!」

 彼らが口々にそう言う。
 だが……。

「へへっ! よく見りゃ、ただの女じゃねえか!」

「それも服を脱いでるとは、準備万端だな!」

「見張りの2人組からのプレゼントってか? あいつらも粋なことしやがるぜ!!」

 すぐに落ち着きを取り戻し、下卑た笑いを浮かべ始めた。
 そして、30人ほどのメンバーの内の数人がミルカに近づいていく。
 完全に油断しているな。
 その上、多少とはいえ戦力を分散するとは。
 愚の骨頂である。

「おい」

 盗賊共の手がミルカに触れる前に、俺はそう声を掛ける。
 盗賊たちが俺の方に視線を向ける。

「だ、だれだテメエ!」

「やはり侵入者か!!」

「見張りは何をしてる!!」

 男たちが口々にそう言う。

「見張りってのは……こいつらのことか?」

 俺はそう言って、足元に這いつくばっている2人を前に押しやる。

「かひゅっ、かひゅっ……」

「うひひ……」

 2人とも、失血と痛みによりもはや虫の息だ。

「なっ!?」

「なんてひどいことを!」

 盗賊たちが騒ぎ出す。

「ひどい? ああ、確かにこの状態で放置するのはひどいかもな。なら……」

 俺は足を振り上げ、男2人を蹴り飛ばす。

「ぎえぇ!!」

「ぶべらぁ!!」

 蹴られた衝撃で弾け飛んでいく2人の男。

「ぐぅ……!」

「あば……!」

 そいつらはミルカに迫っていた男たちを巻き添えにしつつ、壁に激突した。
 これで、30人の内の数人は戦闘不能となったわけだ。
 死んでもいないはずである。
 まあ、ここまで道案内をさせてきた見張り役2人は今ので死んだだろうが。

「これでいいか?」

 俺はニヤリと笑みを浮かべる。
 中途半端に苦しめるよりも、一思いに殺した方が慈悲になる場合もある。
 盗賊のような世界のゴミを慈悲深く殺すなんて、俺はなんと優しいのだろうか。

 とはいえ、残りの盗賊たちはできる限り生け捕りにしないとな。
 ミルカにとっても、そちらの方がいいだろう。
 親しい者の仇は、一息に殺すよりもいたぶった方がスッキリするはずである。

「お、お前! よくも俺の弟分を!」

「この外道め!」

「ぶっ殺せ!」

 怒りの形相でこちらに向かってくる盗賊たち。
 ははは。
 こうでなくては面白くない。
 せっかくの機会だから、俺も少し暴れるか。
 洞窟を崩落させない程度に力を抑えてな。
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