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第1章

35話 ジョボボ

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 俺とリリアは、空を飛んで目的地の村に向かっている。
 俺の背中には女性を乗せている。
 やがて、目的地が見えてきた。

「……あれか」

 上空からその光景を見て、呟く。
 そこは森に囲まれた村だった。
 規模は小さく、家々はボロでみすぼらしい。
 おそらくは貧しい農村なのだろう。

「村の手前に降りよう。そこから徒歩で近づくぞ」

「了解じゃ。ライルよ」

 俺とリリアは地上に降り、竜化状態を解く。

「はあ、はあ、はあ……」

 女が、俺の背中から降りると同時に、地面に倒れ伏した。
 どうやら体力の限界を迎えたようだ。

「情けないのう」

「うぅ……。だ、だって、こんなことって……」

 女が倒れ込んだままそう言う。

「そういえば、我らの秘密をこやつに見せても問題なかったのじゃろうか?」

 リリアがそう問う。

「問題ないさ。こいつに、秘密を口外しないように言っておけばいい」

「そやつは信頼できるのか?」

「ああ。決して口を滑らせたりしないだろう。……なあ? わかっているよな?」

 俺がそう問いかけると、女性はビクッと体を震わせた後、「はいぃ!」と答えた。

「それならいいのじゃが……。どうにも心配じゃの」

 リリアがなおもそう懸念を示す。

「まあいいじゃないか。どうしても信頼できそうになければ、口を封じる手段はいくらでもある」

 俺はチラリと女性の方を見る。

「ひっ! あ、ああ……」

 女性がよろけて尻もちをつく。
 そして、彼女の股間あたりからジョボボという音が聞こえた。

「あまりイジメてやるな。また漏らしておるようではないか」

「ふむ。さほど殺気を込めたつもりはなかったのだがな。漏らし癖がついているんじゃないか?」

 俺は少し呆れてしまう。

「うう……。でも、大丈夫です……。対策はしていたので……」

 女性がよろめきながら立ち上がる。

「……? 何かしていたのか?」

 そう言えば、対策をしているとか言っていたか。

「はい。今日、街を出る前に、それ用の下着をつけたのです。防水性に富んだものです」

「なるほどの。確かにそれは賢明な判断かもしれんの」

「それならいい。しかし、そのような下着があったのだな。便利そうだ」

 まあ、俺が漏らすことはないが。

「ええ。一般的にはオムツと呼ばれていますね。最近、とある商会から販売が始まりました」

「ほう。それは興味深い。どれ、一度見せてもらえるか?」

 新製品は興味深いものだ。
 今の俺は王子ではないが、かつてはブリケード王国の次期国王として様々な教育を受けていた。
 市井に出回る斬新な新製品にも適度に触れてきた。
 ここは、ぜひ実物を確認しておくべきだろう。
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