S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

文字の大きさ
上 下
14 / 307
第1章

14話 ゴブリンを一蹴

しおりを挟む
 シルバータイガーの生息域の近くにある、ストレアという街を目指していたところだ。
 偶然通りがかった馬車がゴブリンの群れに追われていた。
 俺は馬車を逃してやり、馬車を追うゴブリンたちの前に立ちはばかる。

 肉弾戦で戦っても一蹴できるだろうが、ゴブリンは不潔な魔物だ。
 ここは、魔法で倒すことにしよう。

「揺蕩う炎の精霊よ。契約によりて我が指示に従え。火の弾丸を生み出し、我が眼前の敵を滅せよ。ファイアーバレット!」

 俺は中級の火魔法を発動させる。
 以前は使えなかった魔法だ。
 竜化スキルの副産物として人間形態の俺の魔力は上がっている。
 そのため、今は使えるようになっているのだ。

「ぎっ!?」

「ぎゃおおぉっ!」

 高熱の炎の弾丸を受け、ゴブリンの群れはあっさりと壊滅した。
 やはり、今の俺にとってはゴブリンの群れごときはまったく驚異ではない。

「さて。街へ再び向かうとするか」

「そうじゃの。しかし、その前に話すことがあるようじゃぞ? ほれ」

 リリアがそう言って、指差す。
 俺は彼女が指差した方向を見る。

 先ほど通り過ぎていった馬車が、少し遠方に停止している。
 御者の男がこちらの様子をうかがっている。

「ふむ? 通り過ぎたのはいいが、心配して様子をうかがっていたのか? 彼に何ができるわけでもないのに、義理堅いことだな」

 このゴブリンの群れは彼が連れてきたわけだし、責任を感じる気持ちはわからないでもないが。
 俺は彼に手を振ってやる。
 彼はゴブリンたちの脅威が取り除かれたことを確認して、こちらに戻り始めた。

 さて。
 彼はどういった反応をするかな?
 助けてあげたことだし、ストレアでの活動にあたって助力を得られると助かるのだが。

「いやあ。助かりました。ありがとうございました」

 御者の男がそう言う。
 彼は行商か何かだろう。
 馬車の荷台には、商品らしい積荷がある。 

「いや、あの程度は大した脅威ではない。お安い御用さ」

 俺はそう返答する。
 一般的にはゴブリンの群れはそこそこの脅威だ。
 ここぞとばかりに恩を強調してもいいが、俺にとって大した脅威ではないことも事実だ。
 あまり恩着せがましくする気にはならない。 

「なんと……! しかし、確かにあなたの言うことも事実なのでしょうな。安全なところから見させてもらいましたが、ずいぶんとお強いですね?」

 男がそう言う。

「まあ、それなりにはな。それで、そちらはなぜ追われていたのだ?」

「隣町からストレアへ向かう道中で、運悪くゴブリンの群れと遭遇してしまったのです。最近は平和だったので、油断していました」

 男がそう言う。
 街から街へ移動する際には、通常は護衛を雇う。
 専属の護衛を常時雇う場合もあるし、その時々で冒険者を雇う場合もある。
 今回は、このあたりの魔物が最近おとなしかったという事情から、経費削減のために護衛を雇わなかったといったところか。

「ふむ。それは危ないところだったな。俺たちがいなければ、マズかっただろう」

「ええ、その通りです。いざとなれば、食料の積荷を捨てるという選択肢も残してはいましたが……」

 食料の積荷を捨てると、メリットが2つある。

 1つは、ゴブリンたちがそれに気を取られる点。
 あわよくば、それで満足して追跡をやめる可能性もある。

 もう1つは、積荷が軽くなって馬車の速度が増す点である。
 単純に逃げ切れる可能性が増す。

 ただし、もちろんデメリットもある。
 言うまでもなく、捨てた積荷の分は純粋な損失となるのだ。
 命には代えられないのでいざとなれば捨てるのだろうが、それは最後の手段というわけだ。

「なるほどな。俺がいなくとも、命までは落とさなかった可能性が高いわけか。俺の助力は、余計なお世話だったかな?」

「いえいえ! とんでもございません! あなたのおかげで、積荷の損失を抑えることができました。それに、積荷を捨てても必ずしも逃げ切れるとは限りませんし。ぜひ、お礼をさせてください」

「そうか。では、お言葉に甘えて礼をもらうことにしよう」

 俺はそう言う。
 ストレアの街で、シルバータイガーの”白銀の大牙”の情報収集をしなければならない。
 直接的に彼から情報を得られれば理想的だ。
 それがムリなら、せめてストレアの街でしばらく活動する上での便宜を図ってもらいたい。

「ええ。それで、どのような形でお礼をさせていただきましょうか? 今現在お渡しできるのは、馬車に積んでいる限られた物品のいくつかか、いくばくかの現金となります。ストレアの街に着けば、もう少し幅広い物品からお選びいただくことも可能ですが」

 男がそう言う。
 先ほど、彼はストレアに向かう途中だと言っていた。
 ストレアに拠点があるのだろう。

「俺たちも、ちょうどストレアに向かうところだった。礼をもらうことは急いでいないし、まずはストレアに向かうことにしよう」

「わかりました。よろしければ、こちらの荷台にお乗りください。狭いところで申し訳ありませんが」

 男がそう言う。
 積荷があるので、確かにそれほど広くはない。
 しかし、一般的な感覚で言えば歩くよりは楽で快適だろう。

 俺とリリアは、人並み外れた脚力を持つ。
 別にムリして狭い馬車に乗り込む必要もないがーー。

「ふむ。人族の馬車に乗るのは初めての経験じゃな。悪くない」

 リリアがちゃっかりと乗り込んでいる。
 わざわざ微妙な環境に飛び込むのか。
 物好きな性格をしている。

「よし。俺も乗るぞ。リリア、詰めてくれ」

 御者の男からのせっかくの好意を無下にするのも悪い。
 俺も乗り込む。
 やや狭いが、不快というほどの狭さでもない。

「では、参りますね」

 男がそう言って、馬車を走らせていく。
 ストレアの街には、今日中には着くだろう。
 ルーシーを蘇生させるための使命感と、見知らぬ街を訪れる高揚感を感じつつ、馬車に揺られていく。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...