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第1章
2話 かつて救った幼なじみのいる村へ逃げる
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ブリケード王国の第一王子であった俺は、王である父上から追放を言い渡されてしまった。
弟のガルドからの提案で、最後のチャンスとして竜化スキルを使った。
しかし残念ながら、いつも通りの羽付きトカゲに変化するだけで終わってしまった。
「はっ! おらおら! もっと速く走らねえと、死んじまうぜ~?」
「うわああぁっ!」
剣を振りかぶりながら追いかけてくるガルドから、俺は必死で逃げる。
王城は既に出て、今は町中を走っている。
ガルドはまだ追いかけてきている。
民衆たちが俺とガルドに視線を向ける。
「なにあれ? トカゲ?」
「大きなトカゲだなあ。第二王子のガルド様が討伐しようとしてくれているみたいだぞ」
「がんばれー! ガルド様ー!」
民衆たちがそう言う。
ガルドはあれでも、そこそこ民衆たちからの人気はある。
一方の俺は、使いこなせていない竜化スキルのことは広まっていないものの、第二王子のガルドと比べて不出来だという噂は広まってしまっている。
「だ、だれか、助けて……」
俺はガルドに何度か斬りつけられている。
血を流しながらも、町中を走り続ける。
「あのトカゲ、何かしゃべったか?」
「気のせいじゃない? トカゲがしゃべるわけないよ」
「それにしても、間抜けな顔のトカゲだねえ。早く追っ払ってほしいね」
民衆たちが俺を見てそう言う。
「くそ。くそおおおぉ!」
だれも助けてくれない。
俺は涙を流しながら、街の出口にまでたどり着いた。
もう日が暮れる時間だ。
これからは、魔物の活動が活発になる。
よほどの戦闘能力がなければ、うかつに外に出るわけにはいかない。
しかしーー。
「はっはっは! 生きたままここまでたどり着くとはな! 逃げ足だけはいっちょ前だな」
ガルドがすぐ後ろに迫っている。
躊躇している場合ではない。
俺は思い切って門を出て、街から離れていく。
「ちっ。もうすぐ夜か。1人で追いかけるのは面倒くせえな」
ガルドが門の付近で立ち止まり、そう言う。
彼が言葉を続ける。
「今日のところは見逃してやるぜ。いつか必ず殺してやるからな、無能」
街から離れていく俺を見て、ガルドは最後にそう捨て台詞を吐いた。
とりあえず、あいつに狙われることはなくなったか。
俺はそのまま、道を進んでいく。
「くそ……。斬られたところが痛む……」
ガルドは俺をいたぶることを楽しんでいた。
剣聖スキルを持つあいつが本気になれば、俺はあっさりと殺られていたかもしれない。
ズキズキ。
俺は体の痛みに耐えながら、道を進む。
「このままじゃマズイ……。止血しないと……。それに、どのタイミングで人間に戻るかもわからない。1人で夜を明かすのは危険だ」
街の外には、魔物が生息する。
外壁で覆われた街に住むのが一番安全だ。
次に安全なのは、街と街の間や山間部に点在する小村だ。
人が住む以上、最低限の対魔物用の柵や堀などは設けられている。
「そうだ。ルーシーの村に行こう。彼女たちであれば、俺を匿ってくれるはず」
俺は第一王子として、勉学や鍛錬に励んできた。
竜化スキルこそ使いこなせていないが、それを抜きにしても次期国王としての素養は身につけてきたつもりだ。
ルーシーの村は、かつて俺が食料事情や魔物の繁殖の問題を解決してあげた村だ。
俺に対する感謝の念も持ってくれているはず。
俺は希望を胸に、トカゲ状態のまま歩みを進めていった。
--------------------------------------------------
数時間後。
もう日が暮れようとしている頃に、ルーシーの村に着いた。
俺はまだトカゲ状態のままだ。
小さなキズから流れる血は止まったが、まだ背中の大きなキズはズキズキと痛む。
「はあ、はあ……」
俺は息も絶え絶えに、村の中に入る。
ルーシーの家に向けて、進んでいく。
「おおい! ルーシー。いるか?」
「あん? だれだよ、こんな時間に」
ガチャリ。
ルーシーの家のトビラが開く。
ショートカットの髪の少女が中から現れた。
彼女がルーシーだ。
「……ト、トカゲぇ!? でけえ!」
ルーシーが大声を上げて驚く。
「お、落ち着いてくれ。俺だ。ライルだ」
「ラ、ライル様? 声は確かにライル様のものだ。でも、その姿はいったい?」
ルーシーが目を丸くして俺を見る。
彼女には、俺の竜化スキルのことは話していない。
「話は後だ。申し訳ないが、まずは中に入れてもらえないだろうか。そして、背中のキズを治療してもらいたい」
「あ、ああ。わかったよ。入ってくれ」
ルーシーの案内に従い、俺は彼女の家の中に入る。
ルーシー、それに彼女の両親によって、俺の背中のキズに応急手当がなされる。
ズキズキ。
まだ痛むが、これで徐々にでも回復に向かうだろう。
そしてしばらくした頃、俺の竜化スキルが解除された。
人の姿に戻る。
スキルの副次的な効果により、服も元通りだ。
全裸というわけではない。
「ふう。これで何とかひと息つけるか……」
無事に人里に保護され、背中のキズに応急手当がなされ、竜化スキルが解除された。
取り急ぎの懸念事項はなくなったと言っていいだろう。
俺はルーシーの家の空き室に案内してもらった。
そこでベッドに寝そべり、安静にする。
ルーシーが付いてきて、ベッドの近くに座る。
「ライル様。事情を説明してくれよ。この国の第一王子様なんだし、あたいみたいな村娘には話せないこともあるんだろうけどさ」
ルーシーがそう言う。
俺はこの村に、幼少の頃から何度も通っている。
彼女は村娘ではあるが、俺にとっては幼なじみのような存在である。
細かな礼儀や規則などは、無視して接してもらっていた。
「ああ。実はな……」
俺は今日の一件について、説明する。
国王である父上から追放を宣言されてしまったこと。
第二王子である弟から追い回され、街を追い出されてしまったこと。
何とかこの村までたどり着いたこと。
「そ、そうか……。苦労したんだな。とりあえずは、この村でゆっくりしてくれよ」
「悪いな。面倒をかける」
「いや、いいさ。ライル様にはいろいろと助けてもらった恩もあるしな。父ちゃんと母ちゃんには、あたいから説明しておくよ」
そんな感じで、俺はしばらくこの村に滞在することになった。
追放された第一王子を匿うなど、この村には負担をかけることになってしまう。
キズが癒えたら、なるべく早く出立することにしないとな。
俺は今後の方針に考えを巡らせる。
弟のガルドからの提案で、最後のチャンスとして竜化スキルを使った。
しかし残念ながら、いつも通りの羽付きトカゲに変化するだけで終わってしまった。
「はっ! おらおら! もっと速く走らねえと、死んじまうぜ~?」
「うわああぁっ!」
剣を振りかぶりながら追いかけてくるガルドから、俺は必死で逃げる。
王城は既に出て、今は町中を走っている。
ガルドはまだ追いかけてきている。
民衆たちが俺とガルドに視線を向ける。
「なにあれ? トカゲ?」
「大きなトカゲだなあ。第二王子のガルド様が討伐しようとしてくれているみたいだぞ」
「がんばれー! ガルド様ー!」
民衆たちがそう言う。
ガルドはあれでも、そこそこ民衆たちからの人気はある。
一方の俺は、使いこなせていない竜化スキルのことは広まっていないものの、第二王子のガルドと比べて不出来だという噂は広まってしまっている。
「だ、だれか、助けて……」
俺はガルドに何度か斬りつけられている。
血を流しながらも、町中を走り続ける。
「あのトカゲ、何かしゃべったか?」
「気のせいじゃない? トカゲがしゃべるわけないよ」
「それにしても、間抜けな顔のトカゲだねえ。早く追っ払ってほしいね」
民衆たちが俺を見てそう言う。
「くそ。くそおおおぉ!」
だれも助けてくれない。
俺は涙を流しながら、街の出口にまでたどり着いた。
もう日が暮れる時間だ。
これからは、魔物の活動が活発になる。
よほどの戦闘能力がなければ、うかつに外に出るわけにはいかない。
しかしーー。
「はっはっは! 生きたままここまでたどり着くとはな! 逃げ足だけはいっちょ前だな」
ガルドがすぐ後ろに迫っている。
躊躇している場合ではない。
俺は思い切って門を出て、街から離れていく。
「ちっ。もうすぐ夜か。1人で追いかけるのは面倒くせえな」
ガルドが門の付近で立ち止まり、そう言う。
彼が言葉を続ける。
「今日のところは見逃してやるぜ。いつか必ず殺してやるからな、無能」
街から離れていく俺を見て、ガルドは最後にそう捨て台詞を吐いた。
とりあえず、あいつに狙われることはなくなったか。
俺はそのまま、道を進んでいく。
「くそ……。斬られたところが痛む……」
ガルドは俺をいたぶることを楽しんでいた。
剣聖スキルを持つあいつが本気になれば、俺はあっさりと殺られていたかもしれない。
ズキズキ。
俺は体の痛みに耐えながら、道を進む。
「このままじゃマズイ……。止血しないと……。それに、どのタイミングで人間に戻るかもわからない。1人で夜を明かすのは危険だ」
街の外には、魔物が生息する。
外壁で覆われた街に住むのが一番安全だ。
次に安全なのは、街と街の間や山間部に点在する小村だ。
人が住む以上、最低限の対魔物用の柵や堀などは設けられている。
「そうだ。ルーシーの村に行こう。彼女たちであれば、俺を匿ってくれるはず」
俺は第一王子として、勉学や鍛錬に励んできた。
竜化スキルこそ使いこなせていないが、それを抜きにしても次期国王としての素養は身につけてきたつもりだ。
ルーシーの村は、かつて俺が食料事情や魔物の繁殖の問題を解決してあげた村だ。
俺に対する感謝の念も持ってくれているはず。
俺は希望を胸に、トカゲ状態のまま歩みを進めていった。
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数時間後。
もう日が暮れようとしている頃に、ルーシーの村に着いた。
俺はまだトカゲ状態のままだ。
小さなキズから流れる血は止まったが、まだ背中の大きなキズはズキズキと痛む。
「はあ、はあ……」
俺は息も絶え絶えに、村の中に入る。
ルーシーの家に向けて、進んでいく。
「おおい! ルーシー。いるか?」
「あん? だれだよ、こんな時間に」
ガチャリ。
ルーシーの家のトビラが開く。
ショートカットの髪の少女が中から現れた。
彼女がルーシーだ。
「……ト、トカゲぇ!? でけえ!」
ルーシーが大声を上げて驚く。
「お、落ち着いてくれ。俺だ。ライルだ」
「ラ、ライル様? 声は確かにライル様のものだ。でも、その姿はいったい?」
ルーシーが目を丸くして俺を見る。
彼女には、俺の竜化スキルのことは話していない。
「話は後だ。申し訳ないが、まずは中に入れてもらえないだろうか。そして、背中のキズを治療してもらいたい」
「あ、ああ。わかったよ。入ってくれ」
ルーシーの案内に従い、俺は彼女の家の中に入る。
ルーシー、それに彼女の両親によって、俺の背中のキズに応急手当がなされる。
ズキズキ。
まだ痛むが、これで徐々にでも回復に向かうだろう。
そしてしばらくした頃、俺の竜化スキルが解除された。
人の姿に戻る。
スキルの副次的な効果により、服も元通りだ。
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無事に人里に保護され、背中のキズに応急手当がなされ、竜化スキルが解除された。
取り急ぎの懸念事項はなくなったと言っていいだろう。
俺はルーシーの家の空き室に案内してもらった。
そこでベッドに寝そべり、安静にする。
ルーシーが付いてきて、ベッドの近くに座る。
「ライル様。事情を説明してくれよ。この国の第一王子様なんだし、あたいみたいな村娘には話せないこともあるんだろうけどさ」
ルーシーがそう言う。
俺はこの村に、幼少の頃から何度も通っている。
彼女は村娘ではあるが、俺にとっては幼なじみのような存在である。
細かな礼儀や規則などは、無視して接してもらっていた。
「ああ。実はな……」
俺は今日の一件について、説明する。
国王である父上から追放を宣言されてしまったこと。
第二王子である弟から追い回され、街を追い出されてしまったこと。
何とかこの村までたどり着いたこと。
「そ、そうか……。苦労したんだな。とりあえずは、この村でゆっくりしてくれよ」
「悪いな。面倒をかける」
「いや、いいさ。ライル様にはいろいろと助けてもらった恩もあるしな。父ちゃんと母ちゃんには、あたいから説明しておくよ」
そんな感じで、俺はしばらくこの村に滞在することになった。
追放された第一王子を匿うなど、この村には負担をかけることになってしまう。
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