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44.俺にも出来るでしょうか

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アルカナが再び、俺を後ろから抱き締める。其れもとても強い力で。

此れは…さっきやっていた様に、一気に屈むのも難しそう。でもやってみない事には始まらない。

カレンにやった様に、一気に下へ屈む。そして同時に、アルカナの腕を上に上げ、其の隙に彼と距離を取る。

「流石ですね遙様。本当に覚えが早いです。此れであれば、体格差の有る男性でも対処出来そうですね」アルカナは、小さく拍手をしながら俺を見つめる。出来ればそういう状況にならない事を、切に願う。

「遙様、どうぞ紅茶を」カレンが気を利かせ、新たに紅茶を淹れてくれている。

「わ…ありがとうございますカレンさん」カレンの用意した紅茶を、一口飲む。何て美味しい紅茶だろう。

「遙様、此処迄順調に来ておりますが…本日最後の護身術は、とても難易度が高いかと」紅茶を飲みながら、アルカナが告げる。一番難易度が高い護身術って、何だろう。

「そんなに難しいんですか…?俺にも出来るでしょうか」何か、急に不安になってきた。此処迄、アルカナとカレンのお陰でなんとかやってこれたけど…

「出来れば此れは…そうですね、護身術の他に武術や魔術を組み合わせて行えると、より効果的かと思います」アルカナが真剣な表情で告げる。つまり…護身術だけでは少し力不足、という事だろうか。

「成る程…其れ程大変な状況に陥った時に使う護身術という事ですね」俺の問いに、アルカナが力強く頷いた。

「はい、お察しの通りで御座います。無論、此の様な状況にならない事が一番最善なのですが…」…どんな状況の事を言ってるんだろうか。殺されそうになる、とか?

「…遙様は此の護身術を多く使う事になりそうで…私は心配です」カレンが心配そうに俺を見つめる。え、だから如何いう状況?そんなに大変な感じ?

「さぁ遙様、そろそろ行いましょうか」…何か緊張してきた。

「大変申し訳無いのですが…床に座って頂けますか?」アルカナの指示に頷くと、俺は床へと腰を下ろした。

俺の前へアルカナが屈んだかと思うと、ぐるりと視点が回転する。そして目の前には、アルカナの顔が迫っていた。

そう、俺はアルカナに押し倒されたのだ。がっちりと両腕を掴まれ、俺の上へと彼が体重を掛けて跨っている。

そうか、此れは確かに難しい。まさか、押し倒された時の護身術を習う事になるとは…

「無礼をお許しくださいませ。遙様、どうぞ私から逃れてください」アルカナが、俺を見下ろし告げる。そんな事言ったって、全然彼はびくともしない。こんなの無理に決まってる。

シャインに押し倒された時の事を、鮮明に思い出す。あの時は確か、油断させておいて俺から攻撃したんだっけ。

でも今かなり体重を掛けられているし、シャインよりも体格の大きいアルカナに攻撃するなんて、きっと出来ない。つか、身体が動かない。

「本来であれば、此の様に貴方が逃げるのを相手側が待つ訳が有りません。此の状況に陥ったら、直ぐに護身術を行う必要が有ります」アルカナが上から告げる。そんなの分かってるけど、でも今の俺には何も出来ない。

「先ずは腕を解放する事を考えてください。遙様の場合腕を解放したら、武術で相手を攻撃するか、若しくは魔術で攻撃をするか、何方かが良いかと。本来は攻撃をして刺激するべきではありませんが…組み敷かれてしまった場合は、何としてでも相手から解放される事だけをお考えください」とは言っても、腕を解放される事すら難しそうなんですけど……

「今遙様の手は、遙様の胴体から離れてしまっていますね。腕が伸びている状態では、力が入れ辛いでしょう?なので先ずは、腕を自分の身体へと近付けてください」アルカナの言う通り腕を近付けようとするも、中々力が入らない。

「腕の力だけでは、力に限界が有りますので、身体全体を動かし、引きつけるようにしてみてください」彼の言う様に身体を動かし、其の反動で、何とか自分の身体に腕を引き寄せる事が出来た。

「次に、肘を地面に押し付ける様にしてください。そして肘を支点にして、手を引き上げる様にしてみてください」彼の言う通りに、手を引き上げる。すると、やっと彼の腕から解放された。

「良いですね。腕が解放されたら、直ぐに武術や魔術で対処をしてくださいね」アルカナはそう告げ、俺の上から退いてくれた。

此の護身術は本当に難しい。今みたいな事を、本当に咄嗟に出来るのだろうか。




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