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36.素敵な場所ですね

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いつの間にか寝てたみたい。温もりに包まれてるなって感じて、目を開けてびっくり。王が俺を抱きしめてすやすやと寝ている。

何か凄く無防備な状態だよな。こんな風に近くで王様の寝顔見れちゃうなんて、俺くらい?って、何考えてんの俺。

じっと彼を見つめていると、ふと目を覚ました彼と、ばっちり視線が交わる。何だか逸らせなくて、多分5秒くらいは見つめ合っている。

「如何した遙。私に見惚れていたか?」揶揄う様に笑いながら彼が問い掛ける。此の人は俺を揶揄ってばかり。

「そうだと言ったら如何しますか?」素直に認めて頷くと、彼は表情を和らげながら俺の頬を撫でた。

「其れは嬉しい。だが確実に私の方が遙を眺めていた」…ん?其れはつまり…俺の寝顔を見ていたって事?

「…まさか、俺が寝てる時に眺めてたんですか!?」俺が尋ねると、満足気に笑みを浮かべながら彼が頷いた。全く、恥ずかし過ぎる。

「部屋に戻ったら愛おしい人が寝ているんだ。眺めない訳が無かろう?しかも私の布団で」愛おしむ様な優しい手つきで頬を撫でられ、兎に角恥ずかしくて、顔に熱が集中してしまう。

「…其れは王様が此処で寝ろと言ったから…」小さな声で告げると、彼は楽しそうにくすりと笑う。

「遙は直ぐに照れるな。愛い奴だ」目を細めながら見つめられ、再び視線が交わるとまた暫く見つめ合う。

外は薄らと明るくなり、小鳥の囀りが聞こえる。とても爽やかな朝。なのに俺は、出会って二日目の王と一緒に寝ている。何此の状況。

「目が覚めたのなら散歩にでも行くか、遙」そう言うと彼は起き上がり、ベッドを降りる。散歩か…確かに朝散歩するのは気持ちが良いよな。

「はい、是非」俺も起き上がると、手櫛で髪を整える。彼は既に扉の前に立っている。行動の早い人だな。


扉を開けると、既にカレンが立って見張りをしていた。

「カレンさん!おはようございます。カレンさんのお陰で、ぐっすり眠れました。カレンさんも休めましたか?」心配そうにカレンを見つめると、あの優しい笑顔で俺を見つめてくる。

「おはようございます王様、遙様。眠れたのでしたら良かったです。私も休む事が出来ました。お心遣いありがとうございます。しかしこんな朝早くにお二人揃って、如何されたのですか?」カレンが不思議そうに俺と王を見つめる。

「噫、折角早起きしたからな。遙を散歩に誘ったんだ」王が答えると、カレンはくすりと微笑んだ。

「ふふ、では私もお供致します。勿論お邪魔しないよう、後ろに控えておりますので」カレンの提案に王が頷き、3人…?で朝の散歩をする事になった。


朝はほんの少し肌寒い感じ。でも空気が澄んでいて、とても気持ちが良い。自然も多いお城だからか、沢山小鳥の囀りが耳に届く。

少し歩くと、小さな池に辿り着いた。此の池は魔法で管理されているんだとか。魔法って本当に便利だよな。

「此処は私のお気に入りの場所の内の一つだ。小さい頃はよく父に怒られては此処で泣いていた。父が休みの日は、此処で魔法や剣の相手をしてくれた事もあった。父が亡くなってからは偶に一人で此処へ訪れていたが…今は遙とこうやって訪れている。其方にも此処を気に入って貰えると良いんだが…」昔を懐かしむ王の表情は、何だか今にも壊れてしまいそうな程で、胸が締め付けられる。きっと彼にとって、父親という存在はとても大きくて大切だったんだろう。

「とても素敵な場所ですね。王様にとって沢山の思い出が残る場所なんですね。俺も此処がお気に入りの場所になりそうです。連れて来てくださりありがとうございました。王様、また二人で来ましょうね」俺が王を見つめて伝えると、王は表情をぱっと明るくさせ大きく頷いた。

だいぶ陽も昇り、すっかり外も明るくなってきた。他愛もない話をしながら、王の部屋へと戻る。

「遙、其方も一緒に湯浴みへ行くか」部屋に到着して早々に王から告げられた言葉に、俺は唯々ぽかんとする。

「…へ?えっと、あの、どうぞお一人でゆっくり入って来てください」動揺しながら俺が答えると、彼は明らかに不機嫌になる。

「私と入るのが嫌か?」やべ、機嫌損ねちゃったか…何て言えば良いんだろうか…

「まさか…!折角の湯浴みの時間ですから、お一人で寛ぐのが宜しいのではと思いまして…」当たり障りのない言葉を紡ぐと、少し彼の表情が和らいだ。

「ふむ、だが私は其方と入りたい。嫌でないのなら支度して後で来い。待っておるぞ」俺の意見にはお構いなしで、そそくさと彼は部屋を出て行ってしまった。…もう、強引な人だな。

これさ、絶対行かなきゃ機嫌悪くなっちゃうやつだよな。行かなきゃだよな。

はぁ…優しいかと思えば強引だったり…よく分からない王様だな…
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