37 / 48
36.素敵な場所ですね
しおりを挟む
いつの間にか寝てたみたい。温もりに包まれてるなって感じて、目を開けてびっくり。王が俺を抱きしめてすやすやと寝ている。
何か凄く無防備な状態だよな。こんな風に近くで王様の寝顔見れちゃうなんて、俺くらい?って、何考えてんの俺。
じっと彼を見つめていると、ふと目を覚ました彼と、ばっちり視線が交わる。何だか逸らせなくて、多分5秒くらいは見つめ合っている。
「如何した遙。私に見惚れていたか?」揶揄う様に笑いながら彼が問い掛ける。此の人は俺を揶揄ってばかり。
「そうだと言ったら如何しますか?」素直に認めて頷くと、彼は表情を和らげながら俺の頬を撫でた。
「其れは嬉しい。だが確実に私の方が遙を眺めていた」…ん?其れはつまり…俺の寝顔を見ていたって事?
「…まさか、俺が寝てる時に眺めてたんですか!?」俺が尋ねると、満足気に笑みを浮かべながら彼が頷いた。全く、恥ずかし過ぎる。
「部屋に戻ったら愛おしい人が寝ているんだ。眺めない訳が無かろう?しかも私の布団で」愛おしむ様な優しい手つきで頬を撫でられ、兎に角恥ずかしくて、顔に熱が集中してしまう。
「…其れは王様が此処で寝ろと言ったから…」小さな声で告げると、彼は楽しそうにくすりと笑う。
「遙は直ぐに照れるな。愛い奴だ」目を細めながら見つめられ、再び視線が交わるとまた暫く見つめ合う。
外は薄らと明るくなり、小鳥の囀りが聞こえる。とても爽やかな朝。なのに俺は、出会って二日目の王と一緒に寝ている。何此の状況。
「目が覚めたのなら散歩にでも行くか、遙」そう言うと彼は起き上がり、ベッドを降りる。散歩か…確かに朝散歩するのは気持ちが良いよな。
「はい、是非」俺も起き上がると、手櫛で髪を整える。彼は既に扉の前に立っている。行動の早い人だな。
扉を開けると、既にカレンが立って見張りをしていた。
「カレンさん!おはようございます。カレンさんのお陰で、ぐっすり眠れました。カレンさんも休めましたか?」心配そうにカレンを見つめると、あの優しい笑顔で俺を見つめてくる。
「おはようございます王様、遙様。眠れたのでしたら良かったです。私も休む事が出来ました。お心遣いありがとうございます。しかしこんな朝早くにお二人揃って、如何されたのですか?」カレンが不思議そうに俺と王を見つめる。
「噫、折角早起きしたからな。遙を散歩に誘ったんだ」王が答えると、カレンはくすりと微笑んだ。
「ふふ、では私もお供致します。勿論お邪魔しないよう、後ろに控えておりますので」カレンの提案に王が頷き、3人…?で朝の散歩をする事になった。
朝はほんの少し肌寒い感じ。でも空気が澄んでいて、とても気持ちが良い。自然も多いお城だからか、沢山小鳥の囀りが耳に届く。
少し歩くと、小さな池に辿り着いた。此の池は魔法で管理されているんだとか。魔法って本当に便利だよな。
「此処は私のお気に入りの場所の内の一つだ。小さい頃はよく父に怒られては此処で泣いていた。父が休みの日は、此処で魔法や剣の相手をしてくれた事もあった。父が亡くなってからは偶に一人で此処へ訪れていたが…今は遙とこうやって訪れている。其方にも此処を気に入って貰えると良いんだが…」昔を懐かしむ王の表情は、何だか今にも壊れてしまいそうな程で、胸が締め付けられる。きっと彼にとって、父親という存在はとても大きくて大切だったんだろう。
「とても素敵な場所ですね。王様にとって沢山の思い出が残る場所なんですね。俺も此処がお気に入りの場所になりそうです。連れて来てくださりありがとうございました。王様、また二人で来ましょうね」俺が王を見つめて伝えると、王は表情をぱっと明るくさせ大きく頷いた。
だいぶ陽も昇り、すっかり外も明るくなってきた。他愛もない話をしながら、王の部屋へと戻る。
「遙、其方も一緒に湯浴みへ行くか」部屋に到着して早々に王から告げられた言葉に、俺は唯々ぽかんとする。
「…へ?えっと、あの、どうぞお一人でゆっくり入って来てください」動揺しながら俺が答えると、彼は明らかに不機嫌になる。
「私と入るのが嫌か?」やべ、機嫌損ねちゃったか…何て言えば良いんだろうか…
「まさか…!折角の湯浴みの時間ですから、お一人で寛ぐのが宜しいのではと思いまして…」当たり障りのない言葉を紡ぐと、少し彼の表情が和らいだ。
「ふむ、だが私は其方と入りたい。嫌でないのなら支度して後で来い。待っておるぞ」俺の意見にはお構いなしで、そそくさと彼は部屋を出て行ってしまった。…もう、強引な人だな。
これさ、絶対行かなきゃ機嫌悪くなっちゃうやつだよな。行かなきゃだよな。
はぁ…優しいかと思えば強引だったり…よく分からない王様だな…
何か凄く無防備な状態だよな。こんな風に近くで王様の寝顔見れちゃうなんて、俺くらい?って、何考えてんの俺。
じっと彼を見つめていると、ふと目を覚ました彼と、ばっちり視線が交わる。何だか逸らせなくて、多分5秒くらいは見つめ合っている。
「如何した遙。私に見惚れていたか?」揶揄う様に笑いながら彼が問い掛ける。此の人は俺を揶揄ってばかり。
「そうだと言ったら如何しますか?」素直に認めて頷くと、彼は表情を和らげながら俺の頬を撫でた。
「其れは嬉しい。だが確実に私の方が遙を眺めていた」…ん?其れはつまり…俺の寝顔を見ていたって事?
「…まさか、俺が寝てる時に眺めてたんですか!?」俺が尋ねると、満足気に笑みを浮かべながら彼が頷いた。全く、恥ずかし過ぎる。
「部屋に戻ったら愛おしい人が寝ているんだ。眺めない訳が無かろう?しかも私の布団で」愛おしむ様な優しい手つきで頬を撫でられ、兎に角恥ずかしくて、顔に熱が集中してしまう。
「…其れは王様が此処で寝ろと言ったから…」小さな声で告げると、彼は楽しそうにくすりと笑う。
「遙は直ぐに照れるな。愛い奴だ」目を細めながら見つめられ、再び視線が交わるとまた暫く見つめ合う。
外は薄らと明るくなり、小鳥の囀りが聞こえる。とても爽やかな朝。なのに俺は、出会って二日目の王と一緒に寝ている。何此の状況。
「目が覚めたのなら散歩にでも行くか、遙」そう言うと彼は起き上がり、ベッドを降りる。散歩か…確かに朝散歩するのは気持ちが良いよな。
「はい、是非」俺も起き上がると、手櫛で髪を整える。彼は既に扉の前に立っている。行動の早い人だな。
扉を開けると、既にカレンが立って見張りをしていた。
「カレンさん!おはようございます。カレンさんのお陰で、ぐっすり眠れました。カレンさんも休めましたか?」心配そうにカレンを見つめると、あの優しい笑顔で俺を見つめてくる。
「おはようございます王様、遙様。眠れたのでしたら良かったです。私も休む事が出来ました。お心遣いありがとうございます。しかしこんな朝早くにお二人揃って、如何されたのですか?」カレンが不思議そうに俺と王を見つめる。
「噫、折角早起きしたからな。遙を散歩に誘ったんだ」王が答えると、カレンはくすりと微笑んだ。
「ふふ、では私もお供致します。勿論お邪魔しないよう、後ろに控えておりますので」カレンの提案に王が頷き、3人…?で朝の散歩をする事になった。
朝はほんの少し肌寒い感じ。でも空気が澄んでいて、とても気持ちが良い。自然も多いお城だからか、沢山小鳥の囀りが耳に届く。
少し歩くと、小さな池に辿り着いた。此の池は魔法で管理されているんだとか。魔法って本当に便利だよな。
「此処は私のお気に入りの場所の内の一つだ。小さい頃はよく父に怒られては此処で泣いていた。父が休みの日は、此処で魔法や剣の相手をしてくれた事もあった。父が亡くなってからは偶に一人で此処へ訪れていたが…今は遙とこうやって訪れている。其方にも此処を気に入って貰えると良いんだが…」昔を懐かしむ王の表情は、何だか今にも壊れてしまいそうな程で、胸が締め付けられる。きっと彼にとって、父親という存在はとても大きくて大切だったんだろう。
「とても素敵な場所ですね。王様にとって沢山の思い出が残る場所なんですね。俺も此処がお気に入りの場所になりそうです。連れて来てくださりありがとうございました。王様、また二人で来ましょうね」俺が王を見つめて伝えると、王は表情をぱっと明るくさせ大きく頷いた。
だいぶ陽も昇り、すっかり外も明るくなってきた。他愛もない話をしながら、王の部屋へと戻る。
「遙、其方も一緒に湯浴みへ行くか」部屋に到着して早々に王から告げられた言葉に、俺は唯々ぽかんとする。
「…へ?えっと、あの、どうぞお一人でゆっくり入って来てください」動揺しながら俺が答えると、彼は明らかに不機嫌になる。
「私と入るのが嫌か?」やべ、機嫌損ねちゃったか…何て言えば良いんだろうか…
「まさか…!折角の湯浴みの時間ですから、お一人で寛ぐのが宜しいのではと思いまして…」当たり障りのない言葉を紡ぐと、少し彼の表情が和らいだ。
「ふむ、だが私は其方と入りたい。嫌でないのなら支度して後で来い。待っておるぞ」俺の意見にはお構いなしで、そそくさと彼は部屋を出て行ってしまった。…もう、強引な人だな。
これさ、絶対行かなきゃ機嫌悪くなっちゃうやつだよな。行かなきゃだよな。
はぁ…優しいかと思えば強引だったり…よく分からない王様だな…
0
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
天涯孤独になった少年は、元兵士の優しいオジサンと幸せに生きる
ir(いる)
BL
ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元兵士の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。
※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。
※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話)
※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい?
※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。
※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。
※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる