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12.安心してください
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「私と結婚しろ。私の結婚相手となれば処刑は免れる。其れにお前は光属性。王家は光属性の者を喉から手が出る程欲している。誰も反対する者は居ない筈だ」王から告げられた言葉にきょとんとする。…結婚?俺は男だ。そんな事、出来る訳がない。
「あの…俺は男なんですが…」
「うむ、其れが如何した」
「え?男と男が結婚なんて出来ないでしょう?」
「そのような法律は無いから安心しろ。妃になれば良い暮らしが出来るぞ」王は俺の頬を撫でる。
「でも…王様であれば次の世代の事も考えなければいけない筈。世継ぎの事とか…」
「心配ない。男でも子を宿せるであろう?」王はきょとんとしている。そして俺もきょとんとする。男が子供を産める訳がない。こんな事口が裂けても言えないけど、目の前の王は馬鹿…なのだろうか。
「はい?男が子供を産める訳がありません」
「普通であればな。しかしお前は光属性だ。光属性であれば男も子供を宿せる身体つきの筈だ」王は俺の下腹部をそっと撫でる。子供を宿せる身体?俺が?意味が分からない。
「王様、訳が分かりません。其れと結婚はお断りさせていただきます」
「私からの求婚を断ると?王に結婚を申し込まれる事がどれ程名誉な事か知らぬのか。其れに処刑を免れる方法を提示しているのに断るとは。もう一度言おう。私と結婚しろ」王は真っ直ぐに俺を見つめてくる。でも結婚なんて出来ない。好きでもない人と結婚したくはない。
「では俺ももう一度お答えいたします。結婚はお断りさせていただきます」俺がはっきり告げると王は眉間に皺を寄せ、明らかに不機嫌オーラを放っている。
「何故断る。処刑されたいのか」
「まさか。処刑なんてされたくありません。結婚は愛し合ってするものです。まだ出会ったばかりですし、俺は王様の事を好きではありません。結婚する気もありません。そこで王様、処刑を免れる方法を1つ、俺からも提示させていただいても?」
「結婚してから愛し合えば良いではないか。お前を沢山愛してやる。ほう、処刑を免れる方法が結婚以外にあると?」
「順番がおかしいですよ其れ。愛し合ってから結婚すべきです。俺って王家が喉から手が出る程欲しいとされる光属性、なんですよね?其れなら王様をお守りする側近にしてください。光属性として。もしくは治癒専門の医者みたいに扱うとか…」
「ならば愛し合ってからなら私の求婚を受けると?ほう、側近か。確かにどの王も此れまで各属性の魔術を持つ強者を側に置いていた。悪くない提案だ。しかしお前に私を守れるか?」
「…っ、求婚を受けるかはまだ分かりません。…はい、今のままではきっと王様を守れません。なので俺も強くなるよう努力いたします。其れに黒い羽を処理出来るのは光属性だけだとあれば、私を処刑する事は出来ない筈です」真っ直ぐに王を見つめる。暫く見つめ合うと王はふっと笑みを零した。
「まだ、という事は結婚する気が全く無いという訳でも無いのだな。…面白い、お前の言う通りだ。光属性は希少な存在。手離す事をする方が愚かだ。良いだろう。私には一人として側近は居らぬ。お前が初の側近になるが良い。そして魔術、剣術についても修行を積むように。羽についてもお前に任せよう」王は俺の頭を優しく撫でた。
「結婚とか、そういうのはまだよく分かりませんから…しかし、王様なのに側近が居ないのですか?王様をお守り出来るよう日々精進いたします。羽に関しては知識を身につけ務めを果たします」未だに手元にある黒い羽を見つめる。
「まぁ良い。結婚は急ぐものでも無いからな。じっくりお前を愛してお前が結婚に応じるまで待とう。あぁ、側近はいない。王は命を狙われる身。側近は命に代えてでも王を守る存在。私の為に命を無駄にして欲しくなくてな。どこまでお前が強くなるか楽しみだな」…この人、やっぱ優しい人だ。自分の為に誰も死んで欲しくないから側近を置いてないんだ…
「…ずっと疑問だったんですが、どうして俺と結婚したいとお考えなんですか?やっぱり王様はお優しいお方ですね。貴方の事をお守りすると誓います」俺は王に深くお辞儀をした。
「…何故か私にも分からぬ。お前を一目見た瞬間電撃が走ったのだ。何が何でも手に入れたいと渇望した。一目惚れ、というものかもしれぬ。私は優しくなどない。大切な者を失うのが怖いだけだ。噫、私を守れるよう強くなれ」王は俺を抱きしめる。とても力強く。俺も迷う事なく王を抱きしめ返した。何となく、この人から悲しい感情が伝わってくる。
「俺一目惚れされる程イイ男では無いんですが…大切な人を失うのは怖い、ですよね。俺も其の気持ちよく分かります。俺は簡単に王様の前から消えませんから、安心してください」俺は王の背中をそっと撫でながら告げる。大切な人を失う怖さは痛い程分かる。目の前で最愛の人を失ったあの記憶を忘れる事はない。でも不思議とその人の顔も声も思い出せない。
「お前は見た目も中身もイイ男だと思うぞ。…何かそういう経験をしたのか。ならば私と同じだ。噫、お前は私の前から消えるな。手離さぬ」王はぎゅっと俺を抱きしめている。何か辛い過去があるのだろうか。
腕の中にいる俺の主。威圧的で少し強引で、でも誰よりも優しい此の人を守ろうと俺は心に誓った。
「あの…俺は男なんですが…」
「うむ、其れが如何した」
「え?男と男が結婚なんて出来ないでしょう?」
「そのような法律は無いから安心しろ。妃になれば良い暮らしが出来るぞ」王は俺の頬を撫でる。
「でも…王様であれば次の世代の事も考えなければいけない筈。世継ぎの事とか…」
「心配ない。男でも子を宿せるであろう?」王はきょとんとしている。そして俺もきょとんとする。男が子供を産める訳がない。こんな事口が裂けても言えないけど、目の前の王は馬鹿…なのだろうか。
「はい?男が子供を産める訳がありません」
「普通であればな。しかしお前は光属性だ。光属性であれば男も子供を宿せる身体つきの筈だ」王は俺の下腹部をそっと撫でる。子供を宿せる身体?俺が?意味が分からない。
「王様、訳が分かりません。其れと結婚はお断りさせていただきます」
「私からの求婚を断ると?王に結婚を申し込まれる事がどれ程名誉な事か知らぬのか。其れに処刑を免れる方法を提示しているのに断るとは。もう一度言おう。私と結婚しろ」王は真っ直ぐに俺を見つめてくる。でも結婚なんて出来ない。好きでもない人と結婚したくはない。
「では俺ももう一度お答えいたします。結婚はお断りさせていただきます」俺がはっきり告げると王は眉間に皺を寄せ、明らかに不機嫌オーラを放っている。
「何故断る。処刑されたいのか」
「まさか。処刑なんてされたくありません。結婚は愛し合ってするものです。まだ出会ったばかりですし、俺は王様の事を好きではありません。結婚する気もありません。そこで王様、処刑を免れる方法を1つ、俺からも提示させていただいても?」
「結婚してから愛し合えば良いではないか。お前を沢山愛してやる。ほう、処刑を免れる方法が結婚以外にあると?」
「順番がおかしいですよ其れ。愛し合ってから結婚すべきです。俺って王家が喉から手が出る程欲しいとされる光属性、なんですよね?其れなら王様をお守りする側近にしてください。光属性として。もしくは治癒専門の医者みたいに扱うとか…」
「ならば愛し合ってからなら私の求婚を受けると?ほう、側近か。確かにどの王も此れまで各属性の魔術を持つ強者を側に置いていた。悪くない提案だ。しかしお前に私を守れるか?」
「…っ、求婚を受けるかはまだ分かりません。…はい、今のままではきっと王様を守れません。なので俺も強くなるよう努力いたします。其れに黒い羽を処理出来るのは光属性だけだとあれば、私を処刑する事は出来ない筈です」真っ直ぐに王を見つめる。暫く見つめ合うと王はふっと笑みを零した。
「まだ、という事は結婚する気が全く無いという訳でも無いのだな。…面白い、お前の言う通りだ。光属性は希少な存在。手離す事をする方が愚かだ。良いだろう。私には一人として側近は居らぬ。お前が初の側近になるが良い。そして魔術、剣術についても修行を積むように。羽についてもお前に任せよう」王は俺の頭を優しく撫でた。
「結婚とか、そういうのはまだよく分かりませんから…しかし、王様なのに側近が居ないのですか?王様をお守り出来るよう日々精進いたします。羽に関しては知識を身につけ務めを果たします」未だに手元にある黒い羽を見つめる。
「まぁ良い。結婚は急ぐものでも無いからな。じっくりお前を愛してお前が結婚に応じるまで待とう。あぁ、側近はいない。王は命を狙われる身。側近は命に代えてでも王を守る存在。私の為に命を無駄にして欲しくなくてな。どこまでお前が強くなるか楽しみだな」…この人、やっぱ優しい人だ。自分の為に誰も死んで欲しくないから側近を置いてないんだ…
「…ずっと疑問だったんですが、どうして俺と結婚したいとお考えなんですか?やっぱり王様はお優しいお方ですね。貴方の事をお守りすると誓います」俺は王に深くお辞儀をした。
「…何故か私にも分からぬ。お前を一目見た瞬間電撃が走ったのだ。何が何でも手に入れたいと渇望した。一目惚れ、というものかもしれぬ。私は優しくなどない。大切な者を失うのが怖いだけだ。噫、私を守れるよう強くなれ」王は俺を抱きしめる。とても力強く。俺も迷う事なく王を抱きしめ返した。何となく、この人から悲しい感情が伝わってくる。
「俺一目惚れされる程イイ男では無いんですが…大切な人を失うのは怖い、ですよね。俺も其の気持ちよく分かります。俺は簡単に王様の前から消えませんから、安心してください」俺は王の背中をそっと撫でながら告げる。大切な人を失う怖さは痛い程分かる。目の前で最愛の人を失ったあの記憶を忘れる事はない。でも不思議とその人の顔も声も思い出せない。
「お前は見た目も中身もイイ男だと思うぞ。…何かそういう経験をしたのか。ならば私と同じだ。噫、お前は私の前から消えるな。手離さぬ」王はぎゅっと俺を抱きしめている。何か辛い過去があるのだろうか。
腕の中にいる俺の主。威圧的で少し強引で、でも誰よりも優しい此の人を守ろうと俺は心に誓った。
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