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4.何か勘違いされてませんか?

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「先輩、お弁当です。お口に合うと良いんですが…」

翌日の昼休み、約束した弁当を先輩に手渡す。先輩は笑顔を浮かべた。彼の笑顔を見るのは初めてかもしれない。

「ありがとな」彼は優しく穏やかな笑みを浮かべて弁当を受け取った。

彼が俺の手作り弁当を食べ始めた。俺は静かに彼の反応を窺う。

「美味い。お前、料理が好きだって昨日言ってたけど、本当に料理が得意なんだな」弁当を頬張りながら先輩は俺を見つめてくる。

「お口に合ったみたいで良かったです」彼の発言に安堵の溜息を吐くと俺も弁当を食べ始める。


他愛もない話をし、俺が作った弁当を食べながら昼食を共にする。こういう日々が半年も続いた。毎日欠かさず一緒にお昼を食べた。

半年が経つ頃には互いの呼び方も変わっていた。先輩は俺の事を『はる』と呼び、俺は先輩の事を『翔先輩』と呼ぶようになった。そしていつしか俺は丁寧語ではなく親しみを込めてタメ語で話すようになった。と言っても話し方についてはタメ語にするように頼まれたから変えたんだけど。

そして呼び方や話し方が変化したように、気持ちにも変化があった。互いに惹かれていったのだ。

昼休みを共にしていた仲だったが今では暇な時はチャットや電話をしたり休日も遊びに出掛けるようにもなった。互いの家に遊びに行く事も増えてきた。


屋上で昼食を食べるには肌寒くなってくる秋が訪れた。俺たちは昼食を食べる場所を変更する事にした。相談の結果、飲食が許可されているラウンジで昼食を摂る事になった。


ラウンジで昼食を食べるのが初めての日の事である。

いつものように昼食を食べていると以前俺を屋上に呼び出し襲ってきた男3人が通りかかった。

「お前、あの時の…あの時はよくも脅してくれたじゃねーかそこの2年坊主。後輩の癖して良い気になってんじゃねーよ。ツラ貸しやがれ」男の1人が翔先輩に告げた。あの男3人はどうやら3年生だったようだ。

「後輩相手にあんな酷い事して、よくノコノコと学校来れますね先輩方」翔先輩は余裕めいた笑みを浮かべて3人を見つめる。ここは挑発せず穏便に済ませるべきだと考えた俺は立ち上がって男3人をじっと見つめる。

「あの…翔先輩は関係ないです。彼は俺を助けてくれただけです。話があるなら俺が行きます」

「おー、可哀想に。君、脅されてこんな奴と絡んでるんだろ?おいで、こんな奴より俺らと一緒に昼飯食おうぜ」1人の男が俺に近寄ると俺の頭を撫でながら耳元で囁く。

「何か勘違いされてませんか?脅されて彼と一緒にご飯を食べてるわけじゃありません。俺の意思で一緒に食べてるんです」俺の頭を撫でる男の手を振り払い睨むとその男は舌打ちをした。

ラウンジにいる他の生徒がざわつき始める。これでは大きな騒ぎになってしまう。

「場所を変えませんか先輩方。ここでは他の方の迷惑になりますから」周りのざわつきを察した翔先輩が提案する。騒ぎになる事は男3人にとっても都合が悪いのであろう。男3人は渋々頷いた。
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