85 / 117
俺変なんだ
しおりを挟む
いきなり抱き締めてきた人と病室に戻った。ベッドに腰掛けてまじまじと相手を見つめる。
「兄さん…如何して此処に…」
「久しぶりだね愛空。入院したって聞いたから帰って来たんだよ」
此の人は俺の大好きな兄さんである黒金優空(くろがね ゆうと)。俺とは歳が10歳離れている。
兄さんは医者を目指していて現役で頭の良い医大に入学した。頭が良くて運動も出来て優しくて…本当に大好きな人だ。
優秀な兄さんは留年する事なく卒業し国家試験も合格した。そして2年間の研修も終えている。兄さんは名医に気に入られ、その人に留学を勧められた。海外で学べば大いにスキルアップ出来るからだって言ってた気がする。そして兄さんが26歳になった時には留学に行った。
留学してから2年が経った今、久し振りに兄さんに会えた。俺の為に帰って来てくれたんだ。
「兄さん…ごめん。留学中だったのに俺の所為で…」
「愛空の所為とか思ってないよ。僕が帰って来たかったから帰って来たんだよ。あっちでの勉強とかはちゃんと終わったしね。今年中には帰って来るつもりだったんだよ」
相変わらず兄さんは優しい。久し振りに感じる温もりに自然と涙が零れた。兄さんは何も言わず優しく抱き締めて背中を摩ってくれた。
「兄さん…俺変なんだ。体の何処にも異常は無いって言ってたけど…でも忘れてる人が居るみたい」
「先生から話は聞いてる。不安だよね。忘れたって事は愛空にとって不都合な人だからだよ。だから思い出そうとしなくてもいい」
不都合な人?でもそんな感じがしないのは何でだろう。来夢って人は俺にとって不都合な人なのか?
兄さんは俺の頭を撫でると見つめてきた。見つめ返すと兄さんは優しく微笑んでくれた。
「無理に思い出そうとしちゃ駄目だからね。それに…それに…そんな人の事なんか一生思い出さなければ良い」
え…?最後の方は声が小さくて何て言ったかは分からない。でも明らかに怒っている。静かに怒りを露にしてる。
何で怒ってんの?兄さんはあまり怒ったりしない。だから如何いう風に接すれば良いか迷った。
目が鋭くてまるで兄さんじゃないみたい。如何しちゃったんだろう。
黙り込んでしまったのに気付いた兄さんがぱっと笑みを浮かべて頭を撫でてくれた。もう怒ってはいないみたい。いつもの優しい兄さんだった。
「兄さん…如何して此処に…」
「久しぶりだね愛空。入院したって聞いたから帰って来たんだよ」
此の人は俺の大好きな兄さんである黒金優空(くろがね ゆうと)。俺とは歳が10歳離れている。
兄さんは医者を目指していて現役で頭の良い医大に入学した。頭が良くて運動も出来て優しくて…本当に大好きな人だ。
優秀な兄さんは留年する事なく卒業し国家試験も合格した。そして2年間の研修も終えている。兄さんは名医に気に入られ、その人に留学を勧められた。海外で学べば大いにスキルアップ出来るからだって言ってた気がする。そして兄さんが26歳になった時には留学に行った。
留学してから2年が経った今、久し振りに兄さんに会えた。俺の為に帰って来てくれたんだ。
「兄さん…ごめん。留学中だったのに俺の所為で…」
「愛空の所為とか思ってないよ。僕が帰って来たかったから帰って来たんだよ。あっちでの勉強とかはちゃんと終わったしね。今年中には帰って来るつもりだったんだよ」
相変わらず兄さんは優しい。久し振りに感じる温もりに自然と涙が零れた。兄さんは何も言わず優しく抱き締めて背中を摩ってくれた。
「兄さん…俺変なんだ。体の何処にも異常は無いって言ってたけど…でも忘れてる人が居るみたい」
「先生から話は聞いてる。不安だよね。忘れたって事は愛空にとって不都合な人だからだよ。だから思い出そうとしなくてもいい」
不都合な人?でもそんな感じがしないのは何でだろう。来夢って人は俺にとって不都合な人なのか?
兄さんは俺の頭を撫でると見つめてきた。見つめ返すと兄さんは優しく微笑んでくれた。
「無理に思い出そうとしちゃ駄目だからね。それに…それに…そんな人の事なんか一生思い出さなければ良い」
え…?最後の方は声が小さくて何て言ったかは分からない。でも明らかに怒っている。静かに怒りを露にしてる。
何で怒ってんの?兄さんはあまり怒ったりしない。だから如何いう風に接すれば良いか迷った。
目が鋭くてまるで兄さんじゃないみたい。如何しちゃったんだろう。
黙り込んでしまったのに気付いた兄さんがぱっと笑みを浮かべて頭を撫でてくれた。もう怒ってはいないみたい。いつもの優しい兄さんだった。
0
お気に入りに追加
263
あなたにおすすめの小説

こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。


男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる