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カボチャがないっ!

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翌日。
目が覚めると、テントの中はすっかり明るくなっていた。

あー、よく寝た。
目が覚めて気づいたけれど、ここは家じゃないんだよね。

わたしたちはハッピーエンドを取り戻す続きをしなければならない。

『加奈、外に出る前にこの服に着替えるニャ』

ミミにそう言ってわたしに袋のようなものを渡してきた。

「これは……?」
「ここの世界にとけこむ用の服だニャ」

そっか。
わたしたちの洋服だったら目立っちゃってどこで手に入れたのか、とか騒がれてしまうもんね。

あくまで主役は、シンデレラ。

物語の邪魔はしたくないもん!

でも、こんなのがあるならはじめから渡してくれたらいいのに。

わたしは奥のテントで隠れながら着替えをした。

『いい感じだニャ』

デザインはなく白の布地のワンピースで、可愛らしさはないのだけどすごく動きやすい服だった。

これでこの世界に馴染んだかな?

そんなことを考えていると、シンデレラの住む家から誰かが出てきていた。

そして外の様子もなんだか騒がしい。

「人が出てきたニャ」
「本当だ!」

それはいじわるなお姉さんと、お母さんたちであった。

キレイなドレスを着ておめかしをしている。

もしかしてもう舞踏会に行くの!?

「陽太くん、陽太くん!起きてってば!」

わたしが陽太くんの肩をポンポン揺らすと、ちょっと不機嫌になりながらも陽太くんは起きてきた。

「いじわるなお姉さんとお母さんたちが動き出したよ!行かないと!あとこれに着替えるんだって!」

陽太くんはぼーっとしながらも、言われるがまま服をの中に入った服に着替えた。

陽太くんの服は、膝までの短パンに袖が手首までしっかりあるポロシャツに似た服だった。
デザインはない質素なものだけど、服の素材はしっかりとしていそう。

そしてわたしたちはテントを出て、シンデレラの住む家の前までやってきた。

シンデレラの部屋を窓からのぞいてみると、シンデレラはいつもの通り家の掃除をさせられている。

「何が起きたんだ?」

「昨日、いじわるなお姉さんたちが舞踏会に招待されたでしょ?シンデレラも行きたがっていたのにお前が舞踏会に行ったら笑われるだけだって、シンデレラを置いていってしまうの」

「ヒドイやつらだ!」

「それでシンデレラは今、おうちでひとり掃除をしてるの……」

シンデレラは家の中、悲しそうに涙を流していた。

本当にかわいそう……。

見てると助けてあげたくなっちゃうよ。

でも、ここは物語通り。

わたしたちが物語を動かしてはいけない。

「つーか、これでどうやってハッピーエンドになるんだ?」

陽太くんの言葉にわたしはぱあっと顔をあげた。

そうだ!

「これからね、魔法使いが来るんだよ!シンデレラにドレスをくれて舞踏会に行かせてくれるの」
「ふぅん?」

しばらく見守っていると、シンデレラが洗濯を干しに外に出た時に魔法使いと出会った。

涙を流しているシンデレラを見て魔法使いが言う。
 
「お前も舞踏会に行きたいんだね」
「ええ、本当はわたしも行ってみたいの」

「それならかぼちゃとねずみととかげをとっておいで」
 
わぁ……!物語通りだ!
ここで魔法使いがシンデレラをキレイに変身させてくれるんだよね!

でも……。
全然物語と違うところはないなぁ。

「ミミ、案外物語通りなんじゃないの?」

「そんなはずはないニャ。もし物語通りならふたりがここに来ることはないニャ」

えっ、そうなの……?

じゃあわたしたちって、自分からこの世界に来たみたいに思っていたけれど、ハッピーエンドを取り戻すために連れて来られたってこと?

なんだかミミが大事なことを言っていた気がしたけれど、今は聞けそうにもない。

シンデレラが返事をして、家の畑に向かってしまったので追いかけることにした。

家の前の畑からシンデレラはカボチャを取るんだよね。

シンデレラがカボチャを取るのを見守っていると……。

あれ……。
なにかがおかしい。

畑にカボチャはなっていなかった。

どういうこと!?

ここにはカボチャがあるはずなのに!

「どうしましょう……」

シンデレラは困り果てている。

「どうしたんだ?」

陽太くんがわたしにたずねる。

「本当は物語だと家の畑にカボチャがなっているはずなの。でも今、なんにもなってない……」

「カボチャがなきゃマズイのか?」

「そりゃそうだよ!シンデレラにカボチャはとっても大事なアイテムなんだよ」

陽太くんに説明をしていると、シンデレラが小さな声でつぶやく。

「やっぱり……わたしなんかが舞踏会に行くべきじゃないのかもしれない」
「まずいよ、陽太くん!すぐにカボチャを探しに行かないと……!」

「探すってどこにだよ!?」
「辺りを見渡したら、近くに家がいくつかあったでしょう?聞いてみようよ」

「それがいいニャ」
「分かった」

わたしと陽太くんは急いで近くの家へ向かった。

急がないと……。

シンデレラがやっぱりいいですって魔法使いにいいにいってしまうかもしれない。

わたしと陽太くんはシンデレラの家から少し歩いたところの家にたどり着いた。

コンコンとノックをする。

すると、中からおじいさんが顔を出した。

「なんだね」
「あ、あの……どうしてもカボチャが必要で……家にあったら分けてもらえませんか?」

わたしがたずねると、そのおじいさんは困った顔をした。

「ああ、今年はダメダメ!かぼちゃなんか取れないよ~!」
「えっ」

「今年は不作なんだ。天候の影響でかぼちゃがなかなかならなくてね、きっとどこへ行ってもダメだろうね」
「そんな……っ」

わたしたちはダメ元で色んな家を回ってみたけれど、どこの家もカボチャを持っている人はいなかった。

「どうしよう……このままカボチャが無かったらシンデレラは舞踏会に行けない……」
「だいたいなんでそんなにカボチャが大事なんだよ。なんかで代用できねぇのか?」

「できないよ!カボチャは馬車になるんだよ!」
「はぁ?なんだそれ、カボチャは馬車になんかならねぇだろ」

「陽太くんは、物語の世界が分かってない!」

わたしがかんかんになって伝えると、ミミが言った。

「ケンカしてる場合じゃないニャ。家にないのなら市場に行ってみるしかないのニャ」
「市場があるの?」

「少し歩くけど、向こう側にあるニャ」
「行こう陽太くん!」

迷ってはいられない。

ハッピーエンドを取り戻すために頑張らないと!



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