上 下
20 / 76

【ジロー】世界は五分前にできた?ジローが語る世界の秘密【切り抜き】

しおりを挟む
「はい。今から『世界五分前仮説』を五分以上かけて説明する遊びをします」



”急にどうした”
”変なキノコでも食べたんか”
”ジローはいつもこんなもんやろ”



「みんなは『世界五分前仮説』って知ってますか? 名前の通り、世界は五分前にできたんじゃないかっていう考えで。いやいや、そんなわけないって思うでしょ? だって宇宙が誕生したのが一三八億年前で、地球が誕生したのが四六億年前で、生命が誕生したのが三五億年前、人類が誕生したのが五百万年前で、そしてダンジョンと繋がったのが七年前。そういう歴史があるんだから。いや、そんな壮大な話をしなくたって、部屋の隅にはほこりが溜まってるし、指名手配犯の顔写真は色褪いろあせてるし、好きな漫画はずっと休載してるし、旅行先で買った瓶詰びんづめは冷蔵庫の奥で賞味期限が切れてるし。……でも全部そういう状態で、世界は五分前にできたんじゃないかって」



”聞いたことある”
”面白い考えだよね”
”俺も中学生のころにその考え知って寝れなくなったわ”



「自分って存在もそう。これまでの記憶や経験を持った状態で、五分前に誕生したのかもしれない。めちゃくちゃな仮説だけど、この考えを否定することって絶対にできないんですよね。できるとしたら、この世界を作った神様くらいで。だからさ、たとえば今カップラーメンを食べてる人とかは、『カップラーメンにお湯を注いで出来上がるのを待ってる』状態でこの世に誕生したことになるんだよね。そう考えると面白いですよねー」



”今まさにカップラーメン食っててドキッとした”
”「カップラーメンが出来るのを待ってる」状態でこの世に生み出されるなんて、モブ中のモブやん”
”俺の人生が冴えないのは、そういうことなんかってなんか納得してしまったわ”
”俺は食べ始めたばかりだから。ケトルのお湯が沸くのを待ってる状態で誕生したから。お前らとは違うから”
”落ち着け。ただの仮説や”



「まあでも、所詮しょせんは思考実験です。誰も本気にしちゃいない。この仮説を提唱した人だって、きっとジョークのつもりだったでしょうし。でも……」



”なんで急にこんな話始めたんやろ”
”なんか精神的に不安定だったりして”
”そりゃいくらジローでも、深層階でソロキャンプなんてしてたら、まともじゃいられないって”
”深層階でソロキャンプしてる時点でまともじゃないからセーフ”



「ほら、なんだろう。ダンジョンって、ゲームのせいなのかな? なんかモンスターは無から湧いて出てきて、倒したらアイテムやお金をドロップして、なんて勘違いしてる人がいるみたいで。でも実際は全然違う。ダンジョンの中には、ちゃんとした生態系があるんです。モンスターだって、当然無から湧いてくるわけじゃない。地上の動物と一緒。普通に交尾して、普通に繁殖してる。食物連鎖も相互関係も成り立っている。同種同士で縄張り争いもするし、社会に近いコロニーを形成してるモンスターもいる」



”確かにダンジョン配信ばっか観てると、現実感が薄れてくるよな”
”特にジローの配信は派手だしね”
”俺はジローさんがこうやってまったり話してるのが好き”
”わかる”



「たとえばこの石ころ。俺なんかは学がないからあれだけど、見る人が見れば、この石ころ一つからだって、時の集積を認めることができる。ダンジョンには、ちゃんとした歴史があるんですよ。だから、よく言われている通り……というか、今じゃそれが常識なのかな。ダンジョンっていうのは、遠い昔からどこかに存在していて、宇宙の果てか、別の次元か、はたまた異世界なのか。それがなんの因果か、ゲートによって地球とダンジョンが繋がってしまった。まあそこでも、ゲートによって繋がったのか、繋がったことによってゲートがしょうじたのか、みたいな論争があるみたいですけど。でもそんな卵か先か鶏が先かみたいな話は別に良くて」



”え? そうじゃないの?”
”こういう話大好き”



「まあ俺も、その考えを否定する気はありませんけどね。それ以外に考えられないし、俺は学者でもなんでもないから。でも……。アマビエ問題って知ってますか? アマビエが広く認知されて以降に繋がったダンジョンで、アマビエが出没するようになったっていう。そうとう話題になったらしいじゃないですか。シンクロニシティだとか、共同体意識がどうたらとか、今でも議論が尽きないみたいで。でも俺が気になったのは、そこじゃないんですよ。俺が初めてアマビエを見たのは、福島の古殿ふるどのダンジョンだったかな。新しくゲートが生じたって聞いたから、早起きして列に並んで」



”そんなパチ屋の新装開店みたいなノリで……”
”俺、その時の配信観てた”



「本当はダンジョンパークができて、ある程度安全が確保されるまでは観光パスは発行されない決まりなんだけど。でもその辺、意外とガバガバで、普通に通してくれたりするんですよね」



”お前が特別なだけやぞ”
”なんでこの人、冒険者登録しないの?”
”「ミボランテ事件」で検索してみ”
”うわー、この流れ懐かしい。ジローのキャッチーさに惹かれて配信を観初めて、深淵しんえんを覗いてさらにのめり込むやつ”
”ジローを覗く時、ジローもまたこちらを覗いているのだ”
”やめろ洒落しゃれにならん”



「その時はとりあえず十五階層くらいまで降りて、そこに拠点を張ったんだったかな」



”浅くない?”
”ジローの目的は攻略じゃなくてキャンプだから。他の冒険者の攻略が進むまでは、意外と上層階にいるよ”
”いや十五階層でも十分おかしいんやけどな”
”A級パーティが一ヶ月かける攻略を、数日でとりあえずだもんな”



「その拠点の近くに、アマビエの巣があって。話題になってたのは知ってたから、なんとなくキャンプしながら観察してたんですよ。凶暴な魔獣でもないから」



”魔獣って……アマビエ食ったんか……”
”一応注意喚起。アマビエは普通に凶暴なので、ジローさんの言葉を真に受けて不用意に近づくのはやめましょう。あくまでジローさん目線の「凶暴ではない」ですから。あと食べないでください”



「それで、気づいたんですよ。アマビエにもちゃんと歴史があることに。昨日今日、ぽっと生まれてきたわけじゃない。何十年、何百年ってダンジョンの厳しい生存競争を生き抜いてきた痕跡があったんです。あの個性的なビジュアルも、ただの飾りじゃない。進化の結果、あの形に行き着いたんだと思う。俺は『妙だな……』って思って」



”少年探偵かな?”
”体は強靭きょうじん、頭脳は狂人きょうじんやん”
”でも確かにおかしいよね”
”アマビエが有名になるまでは、どのダンジョンにもいなかったんでしょ?”



「まあ理由なんていくらでも考えられますけどね。ただの偶然かもしれないし、もしかしたらダンジョンは、星の数ほど無数に存在するのかもしれない。アマビエが認知されたことで、アマビエのいるダンジョンが引き寄せられてきたとか。それならダンジョンに地域性があるのも頷けますからね。無数にあるダンジョンの中から、その土地に一番適したものと繋がるって考えたら。……うん、やっぱりそれが一番論理的な気がします。というか俺が知らないだけで、とっくに誰かがその仮説を提唱してそう。俺が思いつく程度のこと、誰かが思いついてないわけもないし。……うん……うん。やっぱりそうですね。たぶんそれが正しい。一番、筋が通ってる。
 ……でも俺は、アマビエを見た時に、なんとなく『世界五分前仮説』のことを思い出しちゃったんですよね。だから、もしかしてって……。俺も『世界五分前仮説』の説明をしてるって状態で、この世界に生み出されたのかもな、なんて」



”じゃあ俺たちは世界五分前仮説の説明を聞いてるって状態で、この世界に生み出されたのか”
”どこまでもモブやな”
”悲しい”
”ジローにしかない着眼点で、めちゃくちゃ面白い。他の人には、ダンジョンでモンスターの生態観察なんてする余裕あるわけないし”
”そもそもモンスターの生態になんて興味ないだろうしね”
”やっぱりこの人って、冒険者じゃなくキャンパーって感じだよね。ただの自称じゃなくてさ。色々すごいわ”

”さすがにあり得ないのはわかってるけど……なんか鳥肌立った”


 チャンネル登録し、て、ね! チャンネル登録し、て、ね!
 面白いと思った方は、ぜひ高評価ボタンを!


 ~~関連動画~~

【ジローの闇】ジローはダンジョンリンク社と癒着ゆちゃくしている?その根拠と噂をまとめてみた
【ジロー】ダンジョンエラーについて【切り抜き】
【陰謀論】ジローは本当に人間なのか?異星人?異世界人?【解説】
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

処理中です...