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第二十一章 広い休日
賭け事
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輝は、礼服のスーツを一人で着られない。
南棟の空室を男性用の更衣室にしてあったので、そこに行くと、まずはシリウスたちが集まっていた。
シリウス当人はもうすでにバッチリ決めていたし、他にそこにいた人たちも問題なくブラック・スーツを着こなしていた。その中で、アースが輝に気づいてこちらを見た。
アースは例外なく礼装をうまく着こなしていた。普段高度な着こなしができるだけあって、こう言った物も朝飯前なのだろう。
アースの視線を受けてそこまで行くと、皆が囲んでいる中で、メルヴィンと悠太が、向き合ってチェスをしていた。
輝が近づこうとすると、アースが止めた。
「どうやら、悠太に好きな女がいるらしい」
輝は、それを聞いて思いっきり顔を歪めた。
「おじさん、こういう話題にはいつも乗らないですよね」
すると、アースは小声で、輝にこう言って、近くでモップを持って観戦しているメティスを指差した。
「あいつがモップを持っているときは、逆らえない」
訳が分からなかった。そんなアースに事情を聞くと、どうやらこのチェスは、メルヴィンがみんなの前で朝美にプロポーズするか、悠太が好きな女性に告白するかを賭けているのだという。
輝は呆れて、どちらの味方をするのでもなくそのまま見ていた。すると、輝の前に手が差し出されてきた。
エルだ。
「どっちに賭けるかはっきりしろよ、早くしないと勝負が決まっちまう」
輝が嫌そうな顔をすると、いつの間にかアースの後ろまで来ていたメティスが、怖い顔をしてモップを掲げていた。
「あの、そのモップは一体」
聞こうとすると、アースが輝の肩に手を回してきた。
「輝、助けてくれ。とりあえずどちらかに賭けろ」
一体何があったのだろう。訳がわからないまま、輝は迷いに迷ってメルヴィンに賭けた。メティスは、舌打ちをして下がっていった。
勝負はすぐについた。
悠太の勝ちだった。
「この僕が! 負けるなんて!」
メルヴィンは悔しがったが、他の男性たちは皆、楽しそうだった。
「紳士に二言はないな、メルヴィン」
メルヴィンの肩に手を回して、すでに安心しきった悠太が笑う。輝は、負けた代償を払わなければならなかったが、正装でなかったため許してもらうことができた。
スーツはアースが手伝ってくれたのできっちりと着ることができた。パーティーで着崩れてしまっても、すぐに直せるのだという。
輝は、シリウスやアースに付き添われ、後ろからくるメルヴィンと悠太の視線に耐えながら屋敷を出た。
緊張する。
これから正装の女の子たちが出てくる。町子のドレスはどんなものだろう。胸元はどれだけ開いているのだろうか。二の腕は出ているのだろうか。足は、どの程度露出しているだろうか。色は、形はどうなのだろう。想像しただけでドキドキした。
すると、後ろの会話が聞こえてきた。
「お前、いい加減フォーラさんから離れろよ。朝美にぶっ飛ばされるぞ」
悠太の声だった。
メルヴィンの声が返す。
「朝美の貧相な胸を想像すると、辟易するよ。やっぱりドレスが映えるのは豊満な胸」
「知らないぞ、そんなこと言ってて。それより、賭けの件、覚えているだろうな」
しばらく、メルヴィンの声がしなくなった。
「え、ああ」
メルヴィンの声は、うわずっていた。
「いいんじゃないかな? 告白するのは君だろう?」
その時、二人の会話を聞いていたエルが、怖い顔をした。
「いい加減にしないと朝美の前で恥かかせるからな」
エルは、メルヴィンに賭けていた。メルヴィンはヒイッと言って、後ずさった。その頃にはもう、ダンスホールに着いていた。
南棟の空室を男性用の更衣室にしてあったので、そこに行くと、まずはシリウスたちが集まっていた。
シリウス当人はもうすでにバッチリ決めていたし、他にそこにいた人たちも問題なくブラック・スーツを着こなしていた。その中で、アースが輝に気づいてこちらを見た。
アースは例外なく礼装をうまく着こなしていた。普段高度な着こなしができるだけあって、こう言った物も朝飯前なのだろう。
アースの視線を受けてそこまで行くと、皆が囲んでいる中で、メルヴィンと悠太が、向き合ってチェスをしていた。
輝が近づこうとすると、アースが止めた。
「どうやら、悠太に好きな女がいるらしい」
輝は、それを聞いて思いっきり顔を歪めた。
「おじさん、こういう話題にはいつも乗らないですよね」
すると、アースは小声で、輝にこう言って、近くでモップを持って観戦しているメティスを指差した。
「あいつがモップを持っているときは、逆らえない」
訳が分からなかった。そんなアースに事情を聞くと、どうやらこのチェスは、メルヴィンがみんなの前で朝美にプロポーズするか、悠太が好きな女性に告白するかを賭けているのだという。
輝は呆れて、どちらの味方をするのでもなくそのまま見ていた。すると、輝の前に手が差し出されてきた。
エルだ。
「どっちに賭けるかはっきりしろよ、早くしないと勝負が決まっちまう」
輝が嫌そうな顔をすると、いつの間にかアースの後ろまで来ていたメティスが、怖い顔をしてモップを掲げていた。
「あの、そのモップは一体」
聞こうとすると、アースが輝の肩に手を回してきた。
「輝、助けてくれ。とりあえずどちらかに賭けろ」
一体何があったのだろう。訳がわからないまま、輝は迷いに迷ってメルヴィンに賭けた。メティスは、舌打ちをして下がっていった。
勝負はすぐについた。
悠太の勝ちだった。
「この僕が! 負けるなんて!」
メルヴィンは悔しがったが、他の男性たちは皆、楽しそうだった。
「紳士に二言はないな、メルヴィン」
メルヴィンの肩に手を回して、すでに安心しきった悠太が笑う。輝は、負けた代償を払わなければならなかったが、正装でなかったため許してもらうことができた。
スーツはアースが手伝ってくれたのできっちりと着ることができた。パーティーで着崩れてしまっても、すぐに直せるのだという。
輝は、シリウスやアースに付き添われ、後ろからくるメルヴィンと悠太の視線に耐えながら屋敷を出た。
緊張する。
これから正装の女の子たちが出てくる。町子のドレスはどんなものだろう。胸元はどれだけ開いているのだろうか。二の腕は出ているのだろうか。足は、どの程度露出しているだろうか。色は、形はどうなのだろう。想像しただけでドキドキした。
すると、後ろの会話が聞こえてきた。
「お前、いい加減フォーラさんから離れろよ。朝美にぶっ飛ばされるぞ」
悠太の声だった。
メルヴィンの声が返す。
「朝美の貧相な胸を想像すると、辟易するよ。やっぱりドレスが映えるのは豊満な胸」
「知らないぞ、そんなこと言ってて。それより、賭けの件、覚えているだろうな」
しばらく、メルヴィンの声がしなくなった。
「え、ああ」
メルヴィンの声は、うわずっていた。
「いいんじゃないかな? 告白するのは君だろう?」
その時、二人の会話を聞いていたエルが、怖い顔をした。
「いい加減にしないと朝美の前で恥かかせるからな」
エルは、メルヴィンに賭けていた。メルヴィンはヒイッと言って、後ずさった。その頃にはもう、ダンスホールに着いていた。
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