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第四章 パレスチナの月
双子の踊り手
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パレスチナへは、ナポリからローマ経由で空を移動した。パレスチナは空港を持たないため、イスラエル側の空港に降りてからパレスチナへ移動した。パレスチナがイスラエルと和解して国家として独立してからは、パレスチナもずいぶん平和になり、観光で入国する人も随分と増えた。
イスラエルの空港は、半分がパレスチナ側になっていて、パスポートを提示してパレスチナ側に入国すると、すぐシリウスに会えた。
シリウスは、町子と輝の持ち物を見て、いるものといらないものを分けさせた。
「これからマフディに会うんだが、一応俺たち、日本から来た留学生とその引率っていう設定になっているから、使う言葉は英語でいい」
町子と輝は、分かったとだけいい、分けた荷物を預けに、クチャナが予約してくれたホテルへ急いだ。パレスチナもイスラエルも、ひどい命のやり取りがあったは思えないくらいに発展している。空港もきれいで、治安もしっかりとしていた。
ホテルに着くと、荷物をフロントに預けてすぐに、目的地へと移動した。手荷物は必要最低限のお金とハンカチ、それと携帯電話だけだった。シリウスはそのほかに、腕時計型の携帯端末を輝と町子に渡した。はぐれた時に使う位置情報と通話、メール、そして、フェマルコート家の設定した町子と輝の銀行口座にアクセスできるクレジット情報が入った決済の機能だけがあるシンプルなものだった。
「必要なものはそれで必要に応じて揃えればいい。パレスチナに来るのは初めてだろうから、土産も買って行きたいだろ?」
シリウスがそう言うので、輝たちはその言葉に甘えることにした。
「それにしても、シリウスさんは何者なんですか? こんなことができるなんて、祖父と何か関係が?」
町子が疑問をぶつけてきたので、シリウスは笑って答えた。
「俺は、町子のおじいさんと知り合いなんだ。聞いていないか?」
町子は、少し不満そうに首を横に振った。シリウスはそれを見て、少しすまなそうに町子の頭を撫でた。
「じいさんらしいな。なんてったって次の行き先も内緒なくらいだもんな」
シリウスは、そう言って笑った。おじさんの親友だからだと思っていたが、実はシリウスもおじさんもそれぞれ町子のお爺さんの友人だったのだろうか。
考えていても答えは出ないので、輝も町子も、シリウスについていって、マフディに会うことにした。整然とした街並みの中に、以前からあった市場や露店が立ち並ぶ姿は圧巻で、色鮮やかな布や貝細工を売る店が所々にあった。市場街を抜けるとちょっとした広場があり、大きな噴水があった。その広場に人だかりができていて、その中にシリウスは入っていった。
人だかりをかき分けて噴水の方を見ると、可愛い女の子が二人、踊っていた。美しい踊り子の服を着て、一人は栗色のロングヘアーを揺らし、もう一人はショートヘアーに合わせた赤い色のイヤリングについた鈴を鳴らしていた。旅芸人だろうか。さまざまな踊りの中に芸を仕込んでもいた。双子だろうか。歳が離れているようには見えないし、よく似ていた。
見せ物が終わると、通行人や見物人がおひねりを落としていったので、彼女たちは集金の帽子を持って回っていた。見物人が去ると、そこには輝たち三人と少女たちだけが取り残された。
「さて」
ロングヘアーの女の子が、シリウスを見る。
「夜の支配者様、今日はどんなご用事で?」
イスラエルの空港は、半分がパレスチナ側になっていて、パスポートを提示してパレスチナ側に入国すると、すぐシリウスに会えた。
シリウスは、町子と輝の持ち物を見て、いるものといらないものを分けさせた。
「これからマフディに会うんだが、一応俺たち、日本から来た留学生とその引率っていう設定になっているから、使う言葉は英語でいい」
町子と輝は、分かったとだけいい、分けた荷物を預けに、クチャナが予約してくれたホテルへ急いだ。パレスチナもイスラエルも、ひどい命のやり取りがあったは思えないくらいに発展している。空港もきれいで、治安もしっかりとしていた。
ホテルに着くと、荷物をフロントに預けてすぐに、目的地へと移動した。手荷物は必要最低限のお金とハンカチ、それと携帯電話だけだった。シリウスはそのほかに、腕時計型の携帯端末を輝と町子に渡した。はぐれた時に使う位置情報と通話、メール、そして、フェマルコート家の設定した町子と輝の銀行口座にアクセスできるクレジット情報が入った決済の機能だけがあるシンプルなものだった。
「必要なものはそれで必要に応じて揃えればいい。パレスチナに来るのは初めてだろうから、土産も買って行きたいだろ?」
シリウスがそう言うので、輝たちはその言葉に甘えることにした。
「それにしても、シリウスさんは何者なんですか? こんなことができるなんて、祖父と何か関係が?」
町子が疑問をぶつけてきたので、シリウスは笑って答えた。
「俺は、町子のおじいさんと知り合いなんだ。聞いていないか?」
町子は、少し不満そうに首を横に振った。シリウスはそれを見て、少しすまなそうに町子の頭を撫でた。
「じいさんらしいな。なんてったって次の行き先も内緒なくらいだもんな」
シリウスは、そう言って笑った。おじさんの親友だからだと思っていたが、実はシリウスもおじさんもそれぞれ町子のお爺さんの友人だったのだろうか。
考えていても答えは出ないので、輝も町子も、シリウスについていって、マフディに会うことにした。整然とした街並みの中に、以前からあった市場や露店が立ち並ぶ姿は圧巻で、色鮮やかな布や貝細工を売る店が所々にあった。市場街を抜けるとちょっとした広場があり、大きな噴水があった。その広場に人だかりができていて、その中にシリウスは入っていった。
人だかりをかき分けて噴水の方を見ると、可愛い女の子が二人、踊っていた。美しい踊り子の服を着て、一人は栗色のロングヘアーを揺らし、もう一人はショートヘアーに合わせた赤い色のイヤリングについた鈴を鳴らしていた。旅芸人だろうか。さまざまな踊りの中に芸を仕込んでもいた。双子だろうか。歳が離れているようには見えないし、よく似ていた。
見せ物が終わると、通行人や見物人がおひねりを落としていったので、彼女たちは集金の帽子を持って回っていた。見物人が去ると、そこには輝たち三人と少女たちだけが取り残された。
「さて」
ロングヘアーの女の子が、シリウスを見る。
「夜の支配者様、今日はどんなご用事で?」
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