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第二章 青い薔薇
呼び捨てもいいかも
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夕食が終わり、輝は、明日の打ち合わせをするために町子を部屋に呼んだ。町子はきちんとした格好で来て、輝が出したココアを受け取ってソファーに座った。
「町子のおじいさんがいいホテルを押さえておいてくれて、助かった」
少し落ち着いた口調で輝が話すと、町子はほっとしたような顔をした。
「昼間の男の人、どんな人だった?」
町子がそう聞いて来るので、輝は少し嬉しくなった。あの時助けられて以来、どうもおじさんのことを思い出すと嬉しくなる。まるで自分が褒められたような錯覚に陥る。
「俺を助けてくれた。母さんでもできない方法だった。でもなんでだろう。話を聞いてもらっただけで、特に何もなかったのに、すごくスッキリした」
「そう」
町子はなんだか嬉しそうだった。あの男性を知っているのだろうか? それとも、見るものである彼女もあの時何かを感じ取っていたのだろうか。そういえば何か様子がおかしかった気がする。
「おじさんって言ったっけ」
町子は、そう言って手に持っていたココアを小さなテーブルに置いてソファーを立ち、窓際に向かった。カーテンを少しずらして夜景を見る。
「きっと、ここで私たちがあれこれ考えるより、おじさんって人に現地に連れて行ってもらったほうが早いのかもしれない。今の私たちにはなんの情報もない。どこにクリスタルの持ち主がいて、どんな状況かもわからないんだもの」
そう言われて見れば、なんの情報もないまま明日の再会の約束をしていた。輝はそれに気がついて、自分がどれだけ注意不足だったのか思い知った。色々考えることが多すぎて混乱していたのかもしれない。自分自身のことで精一杯だった。その自分自身のことだけでもせめて、どうにかなったのは、おじさんのおかげだったのかもしれない。
輝は、一つ、大きく息を吸って吐いた。そして、大きく伸びをした。するとさらに気分がスッキリしてきた。
「町子、なんだか君をこう呼ぶのもいいかなって思えてきたよ」
輝は、自分でも不思議なほど気持ちが落ち着いていることに気がついた。町子を見ると、少し笑みを浮かべている。
「ありがと、輝。明日は早いから、おじさんって人と早めに合流するためにも、早く寝よ」
そう言って、町子は輝に笑いかけてくれた。
その日は、輝も町子も早めに休んだ。
「町子のおじいさんがいいホテルを押さえておいてくれて、助かった」
少し落ち着いた口調で輝が話すと、町子はほっとしたような顔をした。
「昼間の男の人、どんな人だった?」
町子がそう聞いて来るので、輝は少し嬉しくなった。あの時助けられて以来、どうもおじさんのことを思い出すと嬉しくなる。まるで自分が褒められたような錯覚に陥る。
「俺を助けてくれた。母さんでもできない方法だった。でもなんでだろう。話を聞いてもらっただけで、特に何もなかったのに、すごくスッキリした」
「そう」
町子はなんだか嬉しそうだった。あの男性を知っているのだろうか? それとも、見るものである彼女もあの時何かを感じ取っていたのだろうか。そういえば何か様子がおかしかった気がする。
「おじさんって言ったっけ」
町子は、そう言って手に持っていたココアを小さなテーブルに置いてソファーを立ち、窓際に向かった。カーテンを少しずらして夜景を見る。
「きっと、ここで私たちがあれこれ考えるより、おじさんって人に現地に連れて行ってもらったほうが早いのかもしれない。今の私たちにはなんの情報もない。どこにクリスタルの持ち主がいて、どんな状況かもわからないんだもの」
そう言われて見れば、なんの情報もないまま明日の再会の約束をしていた。輝はそれに気がついて、自分がどれだけ注意不足だったのか思い知った。色々考えることが多すぎて混乱していたのかもしれない。自分自身のことで精一杯だった。その自分自身のことだけでもせめて、どうにかなったのは、おじさんのおかげだったのかもしれない。
輝は、一つ、大きく息を吸って吐いた。そして、大きく伸びをした。するとさらに気分がスッキリしてきた。
「町子、なんだか君をこう呼ぶのもいいかなって思えてきたよ」
輝は、自分でも不思議なほど気持ちが落ち着いていることに気がついた。町子を見ると、少し笑みを浮かべている。
「ありがと、輝。明日は早いから、おじさんって人と早めに合流するためにも、早く寝よ」
そう言って、町子は輝に笑いかけてくれた。
その日は、輝も町子も早めに休んだ。
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