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第二章 青い薔薇
青い瞳の女性
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「地球の子」
二、青い薔薇
乾季が訪れた緑の大草原に、一人、肌の黒い女性が佇んでいた。彼女の瞳は綺麗な青で、黒い髪に覆われた顔の中でひときわ大きな存在感を放っていた。彼女は手織りの鮮やかな布を体に巻いていた。美しいボディー・ラインを綺麗になぞるように、その布はきちんと彼女の体を包んでいた。
周りには危険な動物が跋扈しているというのに、なぜか彼女のもとには恐ろしい動物は来ない。それどころか、彼女のいく場所には安心しきった動物が、その膝の、その腕の中で眠る姿が見られた。草原の民は彼女を尊敬し、また、畏怖した。
彼女と草原の民の距離はちょうどいい塩梅に保たれていた。付かず離れず、神でも人間でもない。それは双方に良い影響を与えていた。
しかし、国が進める都市開発の波が押し寄せてくると、彼女の住むその村もそれに飲まれ、土地の明け渡しを余儀なくされた。外国の偉い投資家が始めた開発で、村は跡形も無くなってしまった。
村人は散り散りになった。当然、例の女性も行く場所を失って、やがて姿を消した。それ以来彼女を見た者はいない。しかし、彼女がいた村の彼女の家に、最後に残されていたあるものが、彼女の形見として村の代表者の手に渡った。彼は、その形見を自分の知り合いである英国の実業家に預け、彼女を守ってほしいと告げた。
そして、その村の代表者もまた、姿を消した。
開発は順調に進められ、そこにできた町や畑を拠点にする密猟集団が跋扈するようになり、その土地は荒れた。村があった頃の秩序は失われ、動物たちと人間は完全な敵同士になった。
ある日、女性の形見を託された英国実業家がこの地を訪れた。
そして、こう言った。
「哀しみの青い薔薇、君はついにそう呼ばれることとなったね」
二、青い薔薇
乾季が訪れた緑の大草原に、一人、肌の黒い女性が佇んでいた。彼女の瞳は綺麗な青で、黒い髪に覆われた顔の中でひときわ大きな存在感を放っていた。彼女は手織りの鮮やかな布を体に巻いていた。美しいボディー・ラインを綺麗になぞるように、その布はきちんと彼女の体を包んでいた。
周りには危険な動物が跋扈しているというのに、なぜか彼女のもとには恐ろしい動物は来ない。それどころか、彼女のいく場所には安心しきった動物が、その膝の、その腕の中で眠る姿が見られた。草原の民は彼女を尊敬し、また、畏怖した。
彼女と草原の民の距離はちょうどいい塩梅に保たれていた。付かず離れず、神でも人間でもない。それは双方に良い影響を与えていた。
しかし、国が進める都市開発の波が押し寄せてくると、彼女の住むその村もそれに飲まれ、土地の明け渡しを余儀なくされた。外国の偉い投資家が始めた開発で、村は跡形も無くなってしまった。
村人は散り散りになった。当然、例の女性も行く場所を失って、やがて姿を消した。それ以来彼女を見た者はいない。しかし、彼女がいた村の彼女の家に、最後に残されていたあるものが、彼女の形見として村の代表者の手に渡った。彼は、その形見を自分の知り合いである英国の実業家に預け、彼女を守ってほしいと告げた。
そして、その村の代表者もまた、姿を消した。
開発は順調に進められ、そこにできた町や畑を拠点にする密猟集団が跋扈するようになり、その土地は荒れた。村があった頃の秩序は失われ、動物たちと人間は完全な敵同士になった。
ある日、女性の形見を託された英国実業家がこの地を訪れた。
そして、こう言った。
「哀しみの青い薔薇、君はついにそう呼ばれることとなったね」
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