2 / 123
第一章 真夜中のラジオ
特別なラジオ
しおりを挟む
高校二年生になったばかりの高橋輝は、学校と部活が終わったあと、夜十時まで飲食店でアルバイトをしていた。朝早く学校へ行き、サッカー部の練習を朝と放課後にこなしてからアルバイトに行っていた。休む暇もなく職場へ行ってしまうので、学校で行う授業の予習や復習は帰ってから深夜にやっている。だから、寝るのは深夜の十一時半を回ってしまう。
同じ家に住んでいる母親もパートに出ていて、朝早くから夜遅くまで仕事をしている。輝ほど派手な仕事ではないが、電子部品を組み立てる工場の勤務は毎日忙しかった。
父親は、輝が幼い頃に交通事故で亡くなっていた。母は再婚はしていないが、たまに知らない男性と付き合っていることがある。しかし、付き合う以上になることはなく、すぐに別れていた。
学校の授業を終え、部活を一通りこなすと、夜のバイトに行ってから十時に上がって家に帰る。暗い部屋に灯りをつけると、少しほっとした。
「ただいま」
小さな声でそう言って、台所を見渡す。
テーブルの上には、ラップにくるまったおにぎりが置いてある。いつも腹を空かせて帰ってくる輝のために母が作っておいてくれるのだ。そのおにぎりを持って自分の部屋に行き、真夜中のラジオを音量を抑えめにしてつけると、そこからは、軽快な音楽とともに、少しテンションを抑えたパーソナリティーのアナウンスが聞こえてきた。真夜中、普通の人間ならば眠りに落ちているこの時間が、輝はなんとも言えず好きだった。
「母さん、いつもありがとう」
ふと、感謝の言葉が出てくる。いつも忙しいのにおにぎりを作ってくれる母。彼女には、懸命に勉強して恩を返していこう。
ラジオを聴いていると、一日の疲れが吹き飛んでいくようだった。なぜかその、一人で過ごす深夜の時間に安心を覚える。
そんな真夜中のラジオは、輝にとって特別なものだった。
しかし、ある日から、輝は、真夜中のラジオを聴かなくなった。
それは、ある女子高生との出会い、そして、そこから広がる人間たちとのつながり、そのつながりがきっかけで発覚したある事件が発端だった。
同じ家に住んでいる母親もパートに出ていて、朝早くから夜遅くまで仕事をしている。輝ほど派手な仕事ではないが、電子部品を組み立てる工場の勤務は毎日忙しかった。
父親は、輝が幼い頃に交通事故で亡くなっていた。母は再婚はしていないが、たまに知らない男性と付き合っていることがある。しかし、付き合う以上になることはなく、すぐに別れていた。
学校の授業を終え、部活を一通りこなすと、夜のバイトに行ってから十時に上がって家に帰る。暗い部屋に灯りをつけると、少しほっとした。
「ただいま」
小さな声でそう言って、台所を見渡す。
テーブルの上には、ラップにくるまったおにぎりが置いてある。いつも腹を空かせて帰ってくる輝のために母が作っておいてくれるのだ。そのおにぎりを持って自分の部屋に行き、真夜中のラジオを音量を抑えめにしてつけると、そこからは、軽快な音楽とともに、少しテンションを抑えたパーソナリティーのアナウンスが聞こえてきた。真夜中、普通の人間ならば眠りに落ちているこの時間が、輝はなんとも言えず好きだった。
「母さん、いつもありがとう」
ふと、感謝の言葉が出てくる。いつも忙しいのにおにぎりを作ってくれる母。彼女には、懸命に勉強して恩を返していこう。
ラジオを聴いていると、一日の疲れが吹き飛んでいくようだった。なぜかその、一人で過ごす深夜の時間に安心を覚える。
そんな真夜中のラジオは、輝にとって特別なものだった。
しかし、ある日から、輝は、真夜中のラジオを聴かなくなった。
それは、ある女子高生との出会い、そして、そこから広がる人間たちとのつながり、そのつながりがきっかけで発覚したある事件が発端だった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
PMに恋したら
秋葉なな
恋愛
高校生だった私を助けてくれた憧れの警察官に再会した。
「君みたいな子、一度会ったら忘れないのに思い出せないや」
そう言って強引に触れてくる彼は記憶の彼とは正反対。
「キスをしたら思い出すかもしれないよ」
こんなにも意地悪く囁くような人だとは思わなかった……。
人生迷子OL × PM(警察官)
「君の前ではヒーローでいたい。そうあり続けるよ」
本当のあなたはどんな男なのですか?
※実在の人物、事件、事故、公的機関とは一切関係ありません
表紙:Picrewの「JPメーカー」で作成しました。
https://picrew.me/share?cd=z4Dudtx6JJ
最強のエンターテイメント
sky-high
ライト文芸
主人公、神宮寺直人(じんぐうじなおと)はレスラー生活10年の中堅プロレスラー。
過去に総合格闘技にも出場した経験もあり、今回初のタイトルマッチに挑む。
チャンピオンは同期入団のエース、財前洋介(ざいぜんようすけ)
シナリオでは神宮寺が財前に善戦するも、惜しくも敗れ去るというブック(結末)だ。
プロレスラーは強くなくてはならない。だが、強さだけを追い求めるだけでは一流のプロレスラーにはなれない。
観客をどうやって魅了させるのかファイティングエンターテイメントであり、それがプロレスだ。
レスラーだけではなく、観客との真剣勝負、それがプロレスラーたる所以だ。
ようやくこぎつけたタイトルマッチに挑むが、エンターテイメントと強さとの間に葛藤する神宮寺はどのような闘い方をするのか。
【完結】限界離婚
仲 奈華 (nakanaka)
大衆娯楽
もう限界だ。
「離婚してください」
丸田広一は妻にそう告げた。妻は激怒し、言い争いになる。広一は頭に鈍器で殴られたような衝撃を受け床に倒れ伏せた。振り返るとそこには妻がいた。広一はそのまま意識を失った。
丸田広一の息子の嫁、鈴奈はもう耐える事ができなかった。体調を崩し病院へ行く。医師に告げられた言葉にショックを受け、夫に連絡しようとするが、SNSが既読にならず、電話も繋がらない。もう諦め離婚届だけを置いて実家に帰った。
丸田広一の妻、京香は手足の違和感を感じていた。自分が家族から嫌われている事は知っている。高齢な姑、離婚を仄めかす夫、可愛くない嫁、誰かが私を害そうとしている気がする。渡されていた離婚届に署名をして役所に提出した。もう私は自由の身だ。あの人の所へ向かった。
広一の母、文は途方にくれた。大事な物が無くなっていく。今日は通帳が無くなった。いくら探しても見つからない。まさかとは思うが最近様子が可笑しいあの女が盗んだのかもしれない。衰えた体を動かして、家の中を探し回った。
出張からかえってきた広一の息子、良は家につき愕然とした。信じていた安心できる場所がガラガラと崩れ落ちる。後始末に追われ、いなくなった妻の元へ向かう。妻に頭を下げて別れたくないと懇願した。
平和だった丸田家に襲い掛かる不幸。どんどん倒れる家族。
信じていた家族の形が崩れていく。
倒されたのは誰のせい?
倒れた達磨は再び起き上がる。
丸田家の危機と、それを克服するまでの物語。
丸田 広一…65歳。定年退職したばかり。
丸田 京香…66歳。半年前に退職した。
丸田 良…38歳。営業職。出張が多い。
丸田 鈴奈…33歳。
丸田 勇太…3歳。
丸田 文…82歳。専業主婦。
麗奈…広一が定期的に会っている女。
※7月13日初回完結
※7月14日深夜 忘れたはずの思い~エピローグまでを加筆修正して投稿しました。話数も増やしています。
※7月15日【裏】登場人物紹介追記しました。
※7月22日第2章完結。
※カクヨムにも投稿しています。
百々五十六の小問集合
百々 五十六
ライト文芸
不定期に短編を上げるよ
ランキング頑張りたい!!!
作品内で、章分けが必要ないような作品は全て、ここに入れていきます。
毎日投稿頑張るのでぜひぜひ、いいね、しおり、お気に入り登録、よろしくお願いします。

幕末女史と移り気の少年
喜岡 せん
ライト文芸
放課後の図書室。興味本位で始めた部活も飽きてきて、サボり目的で足を運んだのが全ての始まりだった。
「どうして彼らは最期まで戦ったんだろう」
これは、『女史』とオレの、ちょっとした思い出の話。
拝啓、隣の作者さま
枢 呂紅
ライト文芸
成績No. 1、完璧超人美形サラリーマンの唯一の楽しみはWeb小説巡り。その推し作者がまさか同じ部署の後輩だった!
偶然、推し作家の正体が会社の後輩だと知ったが、ファンとしての矜持から自分が以前から後輩の小説を追いかけてきたことを秘密にしたい。けれども、なぜだか後輩にはどんどん懐かれて?
こっそり読みたい先輩とがっつり読まれたい後輩。切っても切れないふたりの熱意が重なって『物語』は加速する。
サラリーマンが夢見て何が悪い。推し作家を影から応援したい完璧美形サラリーマン×ひょんなことから先輩に懐いたわんこ系後輩。そんなふたりが紡ぐちょっぴりBLなオフィス青春ストーリーです。
※ほんのりBL風(?)です。苦手な方はご注意ください。
そらのとき。~雨上がりの後で~
雨ノ川からもも
ライト文芸
弱くて優しい少年が、恋に、運命にもがく、ちょっと不思議な成長物語
『あなたとはもう無理なの。ごめんなさい』
付き合って間もない恋人に振られた大和。別れの手紙をもらい、何がいけなかったのかを冷静に分析するも、それを彼女に伝えようとはしなかった。
そんな現状を双子の妹、栞奈に厳しく叱咤された翌日、彼に思わぬ試練が訪れて――!?
初めての絶望。交錯する想い。最初で最後の決断。
自分の気持ちを押し隠してしまう彼は、平穏で、ときに大きく変化する日常の中で、何を見つけだすのか――
伝えたいけど伝わらない。
苦くて甘い、たくさんの「想い」が詰まった青春物語。
※他サイトにも掲載中。
思い出を探して
N
恋愛
明神 怜 はウエディングドレスを見に行った日の帰り、交通事故にあって記憶を失った。不幸中の幸いか、多くのことは数日中に思い出し、生活を営める。だが、婚約者だけ分からない。婚約者である賢太郎は、ショックを受けつつ前向きに、怜に向き合いゼロから好きになってもらう努力をする。
二人はどうなる…
超絶奥手なラブストーリーが今、幕を開ける
こちらは、最新版です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる