真珠を噛む竜

るりさん

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第十七章 風に舞う葉

レストランの様子

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 レストランには一気に客が訪れることはなかったが、それでもすぐに席が埋まっていったので、慣らし運転の時点でレストラン自体の稼働率は七割ほどだった。二十ある席のうち十六まで客を入れ、厨房とホール、そして何より皿洗いをしているエーテリエとエルヴィールに負担がかからないように声掛けをしながら回して行くことにした。
 外ではナリアが歌を歌い、リゼットがフルートを演奏していた。フルートの音色に乗るナリアの歌声が村中に響き、レストランの良い香りが辺りに満ちていく。
 ナリアは実にたくさんの歌を知っていた。今流行りの歌から自作の歌まで、どんな歌も歌うことができた。リゼットは正直それについていくだけで精一杯で、表現を追求しているほどの余裕はなかったが、ナリアは、伴奏なのだからそれでいいと言っていた。
 ただ、フルートの独奏になると話は別で、ナリアの指導は厳しかった。
 周辺の町の住人が集まってくると、レストランに余裕が出始めたのか、八割ほど客を入れても大丈夫な状態になってきた。
 通し営業のため休憩は声をかけられた順に一時間ずつ取ることになっている。その間、休憩室で食事をしたりくつろいだりしていたが、みな、ローマの時と疲れ方も客層も全く違うことに気がついた。
 一日の営業が終わると、問題点がいくつかあることに気がついた。
「夜営業の時のランプの油が切れそうでヒヤヒヤしたな」
 クロヴィスはそう言ってウドを見た。彼は頷いて、それをメモした。
「ランプの油を多めに入れて、予備もすぐ取り替えられるようにワシがこまめに巡回しよう。今日は割と暇でやることのことのない時間が多かったからな」
「忙しい時に皿洗う水がなくなって、水汲みにエルヴィールさんを取られるのは正直キツかったな」
 エーテリエがそう言うと、エルヴィールが補足をした。
「水は重いので、なるべく男性に手伝って欲しいわ。ホールから回せないかしら?」
 すると、それにはエリクが答えた。
「重いものなら任せてよ。僕は多少ポジションが乱れてもすぐに戻せるから」
「あなたが乱れれば厨房もホールも困るのよ?」
 エルヴィールが心配すると、エリクは首を横に振った。
「水を汲みにいくくらいで乱れるようなチームワークなら、最初からうまくいってないよ。大丈夫だよ、母さん」
 それを聞いて、エルヴィールは目を丸くした。
 それからも、いくつか問題点が指摘されたが、解決策も同時に示されていった。次の日のことを考えて今日は早めに寝ようということになり、その日は皆、それぞれの宿泊先にすぐに行って寝てしまった。
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