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第十四章 花椒
意外な一面
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大都市ローマは、外にも内にも開かれた町だった。街の入り口にある検問所では、街に入れてはいけない幾つかの食材と交易品をチェックするだけだった。ほとんどの荷物がうまく通り、街の中に入ると、いきなり高い建物がたくさんある市街地に出た。街のなかは緑地が整備され、高い建物も一番高いもので五階建てだった。
「質のいいインスラが整備されているのです」
ナリアが、誰ともなく語りかけると、セリーヌがそれをフォローする。
「インスラは、はるか昔のローマが作っていた集合住宅のようなもの、と、この間誰かに聞きました」
セリーヌは楽しそうにしている。様々な遺跡が残る街の中が、あまりにもきれいだったからだ。
ローマの街は、緑地が整備されて遺跡や史跡が多く残るだけではなく、皆が見たこともない珍しいものが売っている楽しい街でもあった。アースによると、地球のローマよりも街並みはきれいで、道の幅や建物の間も広いという。
ナリアは、先に斥候として行かせたジルに取らせた場所を確認した。
「コロッセオという大きな遺跡があります」
ナリアは、町の広場にある大きな噴水の前でみんなを集めて説明をした。
「その遺跡のある場所は、土地も大きくとってありますから、レストランを開くのも容易でしょう。わたくしはレストラン設営の許可を取ってきます。エリクとアース、エーテリエは買い出しに行ってください。ジャンヌとクロヴィス、セリーヌとリゼットはそれぞれ打合せを。セベルは衛生管理の資格を取りに行ってください」
ナリアがそう言うと、皆はそれぞれの役割をこなすために散って行った。
それぞれの役割をこなしながら、コロッセオの広場に向かう。ジャンヌたちも例外ではなかった。いまだに黙ったまま歩いているジャンヌとクロヴィスを見て、リゼットがため息をつく。
「アース様も、ナリア様も、セベルさんもいない。不安なのは分けるけど、たまには私たちも頼りにしてほしいものだわ」
そんなリゼットを見て、ジャンヌもため息をついた。
「あんたなんかに頼ることなんてひとつもない。頼りにしたところで何ができるっていうのよ。私たちのことは私たちで何とかするから、ほっといてよ」
「そうはいかないわ」
セリーヌが、そう言って腰に手をやった。ため息をついて苦笑いを浮かべる。
「ここにいる四人みんなが話し合わなければ、レストランは運営できないでしょ? 客引きのリゼットだって、どこでやれば接客の邪魔にならないのか分からないし、いつやればいいのかもわからない。私も、会計の声掛けがなければ会計のしようがないし、メニューは覚えていても、ジャンヌたちほど味に詳しいわけでもないもの。二人は、ずっとアースさんについていて料理の味にも詳しいはず。どのお客さんが何をどれだけ食べたのかを紙に書いてくれなければ困るし、そこに書かれた字も読めなければ困るわ。ジャンヌは字が書けないから、料理を運んだり、注文を暗記したりするでしょ? それを紙に書くのは私やクロヴィスなのよ。連携が取れていないと困るの。私たちホール係と厨房、客引き、それぞれがバラバラじゃいけないのよ」
セリーヌは、そう話してほかの三人を見た。よく見ると、遠くに食材を抱えて歩くエリクたちが見える。もう一仕事終えようとしているのだ。
「市場はこの近くなのかしら?」
ふと、リゼットが呟く。
「私たちって、レストランが開くまで、何もやることがないのかしら?」
すると、セリーヌは首を横に振った。
「メニューを書く、それを印刷しに印刷所に持ち込む。メニューの価格を覚えて、お釣りを用意しに換金所に行く。これは私の仕事。レストランの設営をしながら、お客さんの座る席の番号を確認する、座席の配置を工夫する。でないとホール係は動きづらいし、お客さんも歩けない。食べるのに必要なソースや調味料も配置する。調理師免許と土地の使用許可書、衛生管理免許の書類を張り付ける場所を確保する。客引き係のフルートを演奏する時間帯と場所を決める。同じ料理が出てきたときにどの席にいくつ配置するか、紛らわしい料理がどれとどれか、そう言ったことを厨房と相談する。とにかくやることはたくさんあるわ」
コロッセオに行くまでの間、説明を続けるセリーヌに、ほかの三人は何も言えなかった。ただ、口をあんぐり開けて聞いているしかなかった。
三人のうち、リゼットが口を開けるようになったのは、コロッセオにあるレストラン設営場所に着いた時だった。
「セリーヌはどうしてそんなにレストランに詳しいの?」
そう聞かれて、セリーヌは顔を赤らめた。
「私がいたニッコウキスゲの街で、レストランのアルバイトをしていたから」
三人は、それを聞いて歓声を上げた。
「人は分からないもんだね」
ジャンヌが何気なくそう言ってきたので、クロヴィスは、少し戸惑いがちに返事をした。すると、ジャンヌは顔を赤くしてうつむいてしまった。再び互いから目を逸らすジャンヌとクロヴィスを見て、リゼットがまた、ため息をついた。
「まあいいわ。レストランの設営が始まっているわよ。厨房係とセベルさんにナリアさんも来ているから、みんなで打合せよ」
四人は、それ以上何も言わないまま、きれいな石畳が敷かれた広場へと入って行った。
「質のいいインスラが整備されているのです」
ナリアが、誰ともなく語りかけると、セリーヌがそれをフォローする。
「インスラは、はるか昔のローマが作っていた集合住宅のようなもの、と、この間誰かに聞きました」
セリーヌは楽しそうにしている。様々な遺跡が残る街の中が、あまりにもきれいだったからだ。
ローマの街は、緑地が整備されて遺跡や史跡が多く残るだけではなく、皆が見たこともない珍しいものが売っている楽しい街でもあった。アースによると、地球のローマよりも街並みはきれいで、道の幅や建物の間も広いという。
ナリアは、先に斥候として行かせたジルに取らせた場所を確認した。
「コロッセオという大きな遺跡があります」
ナリアは、町の広場にある大きな噴水の前でみんなを集めて説明をした。
「その遺跡のある場所は、土地も大きくとってありますから、レストランを開くのも容易でしょう。わたくしはレストラン設営の許可を取ってきます。エリクとアース、エーテリエは買い出しに行ってください。ジャンヌとクロヴィス、セリーヌとリゼットはそれぞれ打合せを。セベルは衛生管理の資格を取りに行ってください」
ナリアがそう言うと、皆はそれぞれの役割をこなすために散って行った。
それぞれの役割をこなしながら、コロッセオの広場に向かう。ジャンヌたちも例外ではなかった。いまだに黙ったまま歩いているジャンヌとクロヴィスを見て、リゼットがため息をつく。
「アース様も、ナリア様も、セベルさんもいない。不安なのは分けるけど、たまには私たちも頼りにしてほしいものだわ」
そんなリゼットを見て、ジャンヌもため息をついた。
「あんたなんかに頼ることなんてひとつもない。頼りにしたところで何ができるっていうのよ。私たちのことは私たちで何とかするから、ほっといてよ」
「そうはいかないわ」
セリーヌが、そう言って腰に手をやった。ため息をついて苦笑いを浮かべる。
「ここにいる四人みんなが話し合わなければ、レストランは運営できないでしょ? 客引きのリゼットだって、どこでやれば接客の邪魔にならないのか分からないし、いつやればいいのかもわからない。私も、会計の声掛けがなければ会計のしようがないし、メニューは覚えていても、ジャンヌたちほど味に詳しいわけでもないもの。二人は、ずっとアースさんについていて料理の味にも詳しいはず。どのお客さんが何をどれだけ食べたのかを紙に書いてくれなければ困るし、そこに書かれた字も読めなければ困るわ。ジャンヌは字が書けないから、料理を運んだり、注文を暗記したりするでしょ? それを紙に書くのは私やクロヴィスなのよ。連携が取れていないと困るの。私たちホール係と厨房、客引き、それぞれがバラバラじゃいけないのよ」
セリーヌは、そう話してほかの三人を見た。よく見ると、遠くに食材を抱えて歩くエリクたちが見える。もう一仕事終えようとしているのだ。
「市場はこの近くなのかしら?」
ふと、リゼットが呟く。
「私たちって、レストランが開くまで、何もやることがないのかしら?」
すると、セリーヌは首を横に振った。
「メニューを書く、それを印刷しに印刷所に持ち込む。メニューの価格を覚えて、お釣りを用意しに換金所に行く。これは私の仕事。レストランの設営をしながら、お客さんの座る席の番号を確認する、座席の配置を工夫する。でないとホール係は動きづらいし、お客さんも歩けない。食べるのに必要なソースや調味料も配置する。調理師免許と土地の使用許可書、衛生管理免許の書類を張り付ける場所を確保する。客引き係のフルートを演奏する時間帯と場所を決める。同じ料理が出てきたときにどの席にいくつ配置するか、紛らわしい料理がどれとどれか、そう言ったことを厨房と相談する。とにかくやることはたくさんあるわ」
コロッセオに行くまでの間、説明を続けるセリーヌに、ほかの三人は何も言えなかった。ただ、口をあんぐり開けて聞いているしかなかった。
三人のうち、リゼットが口を開けるようになったのは、コロッセオにあるレストラン設営場所に着いた時だった。
「セリーヌはどうしてそんなにレストランに詳しいの?」
そう聞かれて、セリーヌは顔を赤らめた。
「私がいたニッコウキスゲの街で、レストランのアルバイトをしていたから」
三人は、それを聞いて歓声を上げた。
「人は分からないもんだね」
ジャンヌが何気なくそう言ってきたので、クロヴィスは、少し戸惑いがちに返事をした。すると、ジャンヌは顔を赤くしてうつむいてしまった。再び互いから目を逸らすジャンヌとクロヴィスを見て、リゼットがまた、ため息をついた。
「まあいいわ。レストランの設営が始まっているわよ。厨房係とセベルさんにナリアさんも来ているから、みんなで打合せよ」
四人は、それ以上何も言わないまま、きれいな石畳が敷かれた広場へと入って行った。
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