73 / 147
第十章 月下美人
朝ごはんを作ろう
しおりを挟む
エリクの放った一言で、一瞬、皆は喧嘩をやめた。
そして、朝ご飯の準備をするエリクの様子を見て、顔を赤らめた。
「皆の中で一番冷静で良い判断をするのは自分、皆一人一人がそう思っていたから、今回みたいになっちゃったんだよ」
かまどになっている焚火に火をつけながら、エリクは笑ってそう言った。
「でもさ、よく考えてみると、冷静で正しくていい判断ができる人間なんて、そうはいないと思うよ。星の人は別として」
すると、少し遠くで見ていた星の人二人は、ぶんぶんと首を横に振った。
「ないない」
「わたくしたちも間違うことはたくさんありますよ」
それを聞いて、エリクは笑った。
「徹夜をしていて、おなかも空いていたからみんなイライラするよね。そこに火種があったから、より大きな火になっちゃったんだ」
エリクは、かまどに起こった火の上に鍋を置き、ナリアからもらった玉ねぎを切って炒めた。鍋に熱が伝わり切ったころになると玉ねぎはあめ色になっていて、そこにエリクが水を入れると、琥珀色のスープが出来上がった。その手つきがぎこちないので、つい、皆の中からクロヴィスがやってきてエリクの手伝いをしだした。
「水の量はこれくらいでいいが、玉ねぎはもっと薄く切ったほうがいい。ここに入れる調味料は分かるな?」
エリクは、頷いた。
「クロヴィスのをいつも見ているからね。セリーヌさんの荷物の中にあるよね」
クロヴィスは、頷いた。するとエリクはセリーヌの荷物の中から塩と複合調味料を取り出した。
「これ、鹿肉からとった出汁を固形にしたんだよね。リゼットがやってくれたんだ」
エリクがそう言うと、リゼットは赤い顔をして胸を張った。
「まあね。やっぱり私がいなきゃだめでしょ?」
「うん」
エリクがそう言って笑うので、リゼットは嬉しくなってきて、皆の中に混ざり始めた。するとまたエリクが誰かを呼んだ。セリーヌだ。
「ねえセリーヌ、このスープの出来は良いかな? セリーヌは舌がいいから分かると思うんだ」
セリーヌは少し戸惑ってエリクのもとに行くと、おそるおそるスープを口にしてみた。すると、神妙な顔をしてスープを飲み込んだ。
「塩気が足りないわ。あと、この人数分のスープだから、もう一つは鹿肉の出汁を入れたほうがいいと思う」
そう言って、味見をするための皿をエリクに戻した。エリクはもう一度、セリーヌの荷物の中から固形スープを出そうとした。しかし、うまく見つからない。エリクは、何とか見つけようとセリーヌの荷物の中に手を突っ込むがうまくできなかった。それを見ていたジャンヌがため息をついてエリクのもとへ行き、セリーヌの荷物の中からあっさりと固形スープを取り出した。
「あんまり荷物の中を荒らすと、セリーヌが困るでしょ」
そう言って、固形スープをエリクに渡した。エリクは嬉しそうに笑って、ジャンヌが皆の中に入ってくるのを眺めていた。
こうして、徹夜の後の美味しい朝食が始まった。怯えていたイェリンも中に入って、楽しい食事を共にした。
そして皆は、その日の昼前から、近くの森で薬草を探すことにした。
そして、朝ご飯の準備をするエリクの様子を見て、顔を赤らめた。
「皆の中で一番冷静で良い判断をするのは自分、皆一人一人がそう思っていたから、今回みたいになっちゃったんだよ」
かまどになっている焚火に火をつけながら、エリクは笑ってそう言った。
「でもさ、よく考えてみると、冷静で正しくていい判断ができる人間なんて、そうはいないと思うよ。星の人は別として」
すると、少し遠くで見ていた星の人二人は、ぶんぶんと首を横に振った。
「ないない」
「わたくしたちも間違うことはたくさんありますよ」
それを聞いて、エリクは笑った。
「徹夜をしていて、おなかも空いていたからみんなイライラするよね。そこに火種があったから、より大きな火になっちゃったんだ」
エリクは、かまどに起こった火の上に鍋を置き、ナリアからもらった玉ねぎを切って炒めた。鍋に熱が伝わり切ったころになると玉ねぎはあめ色になっていて、そこにエリクが水を入れると、琥珀色のスープが出来上がった。その手つきがぎこちないので、つい、皆の中からクロヴィスがやってきてエリクの手伝いをしだした。
「水の量はこれくらいでいいが、玉ねぎはもっと薄く切ったほうがいい。ここに入れる調味料は分かるな?」
エリクは、頷いた。
「クロヴィスのをいつも見ているからね。セリーヌさんの荷物の中にあるよね」
クロヴィスは、頷いた。するとエリクはセリーヌの荷物の中から塩と複合調味料を取り出した。
「これ、鹿肉からとった出汁を固形にしたんだよね。リゼットがやってくれたんだ」
エリクがそう言うと、リゼットは赤い顔をして胸を張った。
「まあね。やっぱり私がいなきゃだめでしょ?」
「うん」
エリクがそう言って笑うので、リゼットは嬉しくなってきて、皆の中に混ざり始めた。するとまたエリクが誰かを呼んだ。セリーヌだ。
「ねえセリーヌ、このスープの出来は良いかな? セリーヌは舌がいいから分かると思うんだ」
セリーヌは少し戸惑ってエリクのもとに行くと、おそるおそるスープを口にしてみた。すると、神妙な顔をしてスープを飲み込んだ。
「塩気が足りないわ。あと、この人数分のスープだから、もう一つは鹿肉の出汁を入れたほうがいいと思う」
そう言って、味見をするための皿をエリクに戻した。エリクはもう一度、セリーヌの荷物の中から固形スープを出そうとした。しかし、うまく見つからない。エリクは、何とか見つけようとセリーヌの荷物の中に手を突っ込むがうまくできなかった。それを見ていたジャンヌがため息をついてエリクのもとへ行き、セリーヌの荷物の中からあっさりと固形スープを取り出した。
「あんまり荷物の中を荒らすと、セリーヌが困るでしょ」
そう言って、固形スープをエリクに渡した。エリクは嬉しそうに笑って、ジャンヌが皆の中に入ってくるのを眺めていた。
こうして、徹夜の後の美味しい朝食が始まった。怯えていたイェリンも中に入って、楽しい食事を共にした。
そして皆は、その日の昼前から、近くの森で薬草を探すことにした。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
公爵令嬢の私に騎士も誰も敵わないのですか?
海野幻創
ファンタジー
公爵令嬢であるエマ・ヴァロワは、最高の結婚をするために幼いころから努力を続けてきた。
そんなエマの婚約者となったのは、多くの人から尊敬を集め、立派な方だと口々に評される名門貴族の跡取り息子、コンティ公爵だった。
夢が叶いそうだと期待に胸を膨らませ、結婚準備をしていたのだが──
「おそろしい女……」
助けてあげたのにも関わらず、お礼をして抱きしめてくれるどころか、コンティ公爵は化け物を見るような目つきで逃げ去っていった。
なんて男!
最高の結婚相手だなんて間違いだったわ!
自国でも隣国でも結婚相手に恵まれず、結婚相手を探すだけの社交界から離れたくなった私は、遠い北の地に住む母の元へ行くことに決めた。
遠い2000キロの旅路を執事のシュヴァリエと共に行く。
仕える者に対する態度がなっていない最低の執事だけど、必死になって私を守るし、どうやらとても強いらしい──
しかし、シュヴァリエは私の方がもっと強いのだという。まさかとは思ったが、それには理由があったのだ。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
報酬を踏み倒されたので、この国に用はありません。
白水緑
ファンタジー
魔王を倒して報酬をもらって冒険者を引退しようとしたところ、支払いを踏み倒されたリラたち。
国に見切りを付けて、当てつけのように今度は魔族の味方につくことにする。
そこで出会った魔王の右腕、シルヴェストロと交友を深めて、互いの価値観を知っていくうちに、惹かれ合っていく。
そんな中、追っ手が迫り、本当に魔族の味方につくのかの判断を迫られる。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる