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第九章 ひまわり亭
喧嘩は必要?
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ジャンヌが言ったことは、リゼットやエリクたち全員の中を駆け巡った。
喧嘩や衝突、そういったことが、今までの中で一度たりともあっただろうか。皆が考えを巡らせていると、ある事実が明るみに出た。
「セリーヌが入ってからは、一度もないよ」
確かに、そうだった。今までみんな喧嘩したことがなかった。それは、サニアたちとの決定的な差だった。
「喧嘩は、必要不可欠なの? 必ずやらなきゃならないの?」
エリクが不安そうにしている。その問いには、やはりここで初めての発言となるソルアが答えた。
「必ずやらなければならないことではないよ。でも、そうなると、一度大きな喧嘩をしたときに、それが原因で別れてしまうことがある。小さな喧嘩を繰り返していれば、喧嘩慣れしてくるし、そのたびに皆を繋ぐ絆は強まる。深く相手を理解することもできる。喧嘩は何も悪いことじゃないんだよ」
ソルアの口調は優しかった。レイテナみたいな女性が惹かれるのがなぜなのか、皆理解できたような気がした。
エリクはソルアの言葉にホッとした。喧嘩は悪いことじゃない。それが聞けたのが何よりも嬉しかったからだ。
「ジャンヌとリゼットは、すごく互いのことを理解しているよね」
エリクは、今度は嬉しそうにジャンヌとリゼットを見た。すると、二人は目を見合わせて笑い合った。
「そう言えば、私たち、町にいたころはよくケンカしていたっけ」
ジャンヌは嬉しそうだ。
「今でも時々するけどね!」
リゼットも、嬉しそうだ。
「しかし、喧嘩はやれと言われてできるものじゃないぞ。それに今まで気になっていたことがあるんだが」
クロヴィスが、突然真剣な顔で皆を見たものだから、エリクたちはまた何かあるのではないかと構えてしまった。
サニアたちにあって自分たちにないもの、逆に、自分たちにあってサニアたちにないもの。それに、クロヴィスは気が付いていた。
「俺たち、今まで家族ごっこをやってきただけなんじゃないか? 家族らしさとはどういうものかとか、これが家族だよなとか、そういうことにこだわっていたと思う。もっと自然に、家族ってことを意識しないでいられるから、喧嘩だってするし、喧嘩も怖くないんじゃないか?」
「確かに、それはそうだけど」
リゼットが、今までのことを振り返る。家族らしいことをしたいから旅行気分で観光をしてきた。それがかえって家族でないことの証明になるのなら、いったい自分たちは何をしてきたのだろう。
「その課題は」
レシェスが、ためらいがちに手を挙げた。顔が真っ赤だ。声も震えている。
「その課題は、私たちにもありました」
「そうだね」
サニアが、それを受けて腕組みをして笑った。エリクやクロヴィスたちを見回す。
「それに気が付いただけでもよかったじゃない。これからどうやって家族の在り方を考えていくか。その方針が立てられるんだから」
すると、エリクがぎこちなく笑った。
「うん、でも、どんな方針を立てたらいいのかが分からないよ」
「そんなこと、すぐにわかるもんですか」
レイテナがエリクの肩に手を当てる。ポン、と音を立てて叩くと、エリクは心まで叩かれた気がして、背筋を伸ばした。そんなエリクを見ながら、セルディアが一度皆を見渡した。
「エリク、クロヴィス、ジャンヌ、リゼット、セリーヌ。あなた方がどのような方法で真の家族になれるのかは、私たちを見ていれば分かってくるでしょう」
セルディアは続ける。
「喧嘩をする家族もいれば、しない家族もいる。人それぞれでいいと思いますよ。自分たちの中で納得いくまで、本当の家族像を探してみてください。その参考になるのなら、この町にいくらでもいて、私たちの姿を見ていてくれてもいい。あなた方は自由に決められる権利を持っているのですから」
喧嘩や衝突、そういったことが、今までの中で一度たりともあっただろうか。皆が考えを巡らせていると、ある事実が明るみに出た。
「セリーヌが入ってからは、一度もないよ」
確かに、そうだった。今までみんな喧嘩したことがなかった。それは、サニアたちとの決定的な差だった。
「喧嘩は、必要不可欠なの? 必ずやらなきゃならないの?」
エリクが不安そうにしている。その問いには、やはりここで初めての発言となるソルアが答えた。
「必ずやらなければならないことではないよ。でも、そうなると、一度大きな喧嘩をしたときに、それが原因で別れてしまうことがある。小さな喧嘩を繰り返していれば、喧嘩慣れしてくるし、そのたびに皆を繋ぐ絆は強まる。深く相手を理解することもできる。喧嘩は何も悪いことじゃないんだよ」
ソルアの口調は優しかった。レイテナみたいな女性が惹かれるのがなぜなのか、皆理解できたような気がした。
エリクはソルアの言葉にホッとした。喧嘩は悪いことじゃない。それが聞けたのが何よりも嬉しかったからだ。
「ジャンヌとリゼットは、すごく互いのことを理解しているよね」
エリクは、今度は嬉しそうにジャンヌとリゼットを見た。すると、二人は目を見合わせて笑い合った。
「そう言えば、私たち、町にいたころはよくケンカしていたっけ」
ジャンヌは嬉しそうだ。
「今でも時々するけどね!」
リゼットも、嬉しそうだ。
「しかし、喧嘩はやれと言われてできるものじゃないぞ。それに今まで気になっていたことがあるんだが」
クロヴィスが、突然真剣な顔で皆を見たものだから、エリクたちはまた何かあるのではないかと構えてしまった。
サニアたちにあって自分たちにないもの、逆に、自分たちにあってサニアたちにないもの。それに、クロヴィスは気が付いていた。
「俺たち、今まで家族ごっこをやってきただけなんじゃないか? 家族らしさとはどういうものかとか、これが家族だよなとか、そういうことにこだわっていたと思う。もっと自然に、家族ってことを意識しないでいられるから、喧嘩だってするし、喧嘩も怖くないんじゃないか?」
「確かに、それはそうだけど」
リゼットが、今までのことを振り返る。家族らしいことをしたいから旅行気分で観光をしてきた。それがかえって家族でないことの証明になるのなら、いったい自分たちは何をしてきたのだろう。
「その課題は」
レシェスが、ためらいがちに手を挙げた。顔が真っ赤だ。声も震えている。
「その課題は、私たちにもありました」
「そうだね」
サニアが、それを受けて腕組みをして笑った。エリクやクロヴィスたちを見回す。
「それに気が付いただけでもよかったじゃない。これからどうやって家族の在り方を考えていくか。その方針が立てられるんだから」
すると、エリクがぎこちなく笑った。
「うん、でも、どんな方針を立てたらいいのかが分からないよ」
「そんなこと、すぐにわかるもんですか」
レイテナがエリクの肩に手を当てる。ポン、と音を立てて叩くと、エリクは心まで叩かれた気がして、背筋を伸ばした。そんなエリクを見ながら、セルディアが一度皆を見渡した。
「エリク、クロヴィス、ジャンヌ、リゼット、セリーヌ。あなた方がどのような方法で真の家族になれるのかは、私たちを見ていれば分かってくるでしょう」
セルディアは続ける。
「喧嘩をする家族もいれば、しない家族もいる。人それぞれでいいと思いますよ。自分たちの中で納得いくまで、本当の家族像を探してみてください。その参考になるのなら、この町にいくらでもいて、私たちの姿を見ていてくれてもいい。あなた方は自由に決められる権利を持っているのですから」
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