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第八章 トネリコ
星の人が来る
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第八章 トネリコ
エリクが猛毒に侵されてから一時間半後、ナリアが到着した。
皆はたったの一時間ですでに疲れ切っていて、何かを話す気力もなかった。エリクには充分な水分を与えて、毒をなるべく抜くためにたくさんの汗を出させた。熱は下がらないが上がりもしない。苦しい状態だが悪くなることはなかった。
そんな状態を話すと、ナリアは、もう一頭の馬に乗ってきた医者にそのことを告げた。医者は、馬を降りると、すぐにエリクのもとへ向かった。
ナリアは、汗を拭いてゆっくりとエリクの部屋に入ってきた。相当急いだのだ。医者は、ずいぶんと年老いていた。本当にこんな老人で大丈夫なのだろうか。
「大丈夫なのか、ナリアさん?」
不安に思ったクロヴィスがナリアに問いかけると、ナリアは息を吐いて、笑顔を見せた。
「大丈夫です。見ていてください」
しばらくすると、猛毒を扱うために、医者はエリク以外の人間を部屋から出した。そして、何時間かすると出てきて、ナリアと少しだけ何かを話した。エリクを心配する皆のもとに出てきたのはそのあとだった。
「毒は抜いた。生命に危険が及ぶことはもうあるまい。しかし、熱だけは下がらなんだ。これは彼の特質ゆえかもしれん。この先は、わしの手には負えん」
「手に負えないって、じゃあ、エリクはどうなるの? どのみち熱が下がらないんじゃ、旅も続けられないよ!」
ジャンヌが医者に食って掛かったが、医者は首を振るばかりだった。
「ナリアさん、この先俺たちはどうしたらいいんだ?」
この中で、最も責任を感じているのはクロヴィスだった。彼の心の中の焦りは半端なものではなかった。それを汲んでか、ナリアは少し、真剣な顔をした。
「この町から二、三日歩いていった場所に小さな村があります。馬の早駆けならば一日でつくでしょう。そこに、一人の医者が、来るかもしれません。その医者ならもしくは」
「来るかもしれない?」
リゼットが訝しんだ。かもしれないとは、ずいぶん不確かではないか。ナリアともあろう人がどうしてそんなにおかしなことを言うのだろう。
リゼットが思いっきり疑問を抱いた顔をしたので、ナリアはリゼットを見た。
「その村に感じることは感じるのです。ただ、いるかどうかの保証はありません。もう一つのわたくしは、医者ですから」
「じゃあ、まさかナリアさんの言っていることって!」
みんなは、顔を見合わせた。
ナリアは、星の人が来ると予言した。
星の人におおよそできないことはない。だが、得手不得手はある。そう聞いた。ナリアが治せないほどのエリクの病を、その星の人は治すことができるのだ。
「星の人が来るんですね!」
リゼットは、心が躍るのを感じた。新しい星の人に会える。それはどんな人なのだろうか。もう一人のナリアだとしたら、素敵な人に違いない。
「早駆けで一日。馬は今ここに二頭。ナリアさんとエリクが一頭に乗るとして、あと一頭は、もう一人」
クロヴィスが計算をしていると、誰もがその星の人に会いたくて、手を挙げた。しかし乗れるのは一人だ。ここは、公平にくじ引きで決めることにした。
勝ったのはセリーヌだった。
「意外と、セリーヌみたいなのがくじ運強いのよね」
泣く泣く諦めたリゼットが、自分の引いたハズレくじを握りしめた。
「それでも、責任は感じます。エリクは必ず治します。後からくる皆に、いい報告ができるように」
セリーヌの言葉に、他の皆は強く頷いた。
ナリアはそれを確認すると、すぐにエリクを馬に乗せた。先程より苦しそうではないが、熱は下がっていない。セリーヌが医者と一緒に馬に乗るのを確認すると、すぐに馬を走らせた。
クロヴィスやリゼット、そしてジャンヌは、それを宿から見守っていた。そして、一時間ほど休むと、さっそく次の村に向かった。
エリクが猛毒に侵されてから一時間半後、ナリアが到着した。
皆はたったの一時間ですでに疲れ切っていて、何かを話す気力もなかった。エリクには充分な水分を与えて、毒をなるべく抜くためにたくさんの汗を出させた。熱は下がらないが上がりもしない。苦しい状態だが悪くなることはなかった。
そんな状態を話すと、ナリアは、もう一頭の馬に乗ってきた医者にそのことを告げた。医者は、馬を降りると、すぐにエリクのもとへ向かった。
ナリアは、汗を拭いてゆっくりとエリクの部屋に入ってきた。相当急いだのだ。医者は、ずいぶんと年老いていた。本当にこんな老人で大丈夫なのだろうか。
「大丈夫なのか、ナリアさん?」
不安に思ったクロヴィスがナリアに問いかけると、ナリアは息を吐いて、笑顔を見せた。
「大丈夫です。見ていてください」
しばらくすると、猛毒を扱うために、医者はエリク以外の人間を部屋から出した。そして、何時間かすると出てきて、ナリアと少しだけ何かを話した。エリクを心配する皆のもとに出てきたのはそのあとだった。
「毒は抜いた。生命に危険が及ぶことはもうあるまい。しかし、熱だけは下がらなんだ。これは彼の特質ゆえかもしれん。この先は、わしの手には負えん」
「手に負えないって、じゃあ、エリクはどうなるの? どのみち熱が下がらないんじゃ、旅も続けられないよ!」
ジャンヌが医者に食って掛かったが、医者は首を振るばかりだった。
「ナリアさん、この先俺たちはどうしたらいいんだ?」
この中で、最も責任を感じているのはクロヴィスだった。彼の心の中の焦りは半端なものではなかった。それを汲んでか、ナリアは少し、真剣な顔をした。
「この町から二、三日歩いていった場所に小さな村があります。馬の早駆けならば一日でつくでしょう。そこに、一人の医者が、来るかもしれません。その医者ならもしくは」
「来るかもしれない?」
リゼットが訝しんだ。かもしれないとは、ずいぶん不確かではないか。ナリアともあろう人がどうしてそんなにおかしなことを言うのだろう。
リゼットが思いっきり疑問を抱いた顔をしたので、ナリアはリゼットを見た。
「その村に感じることは感じるのです。ただ、いるかどうかの保証はありません。もう一つのわたくしは、医者ですから」
「じゃあ、まさかナリアさんの言っていることって!」
みんなは、顔を見合わせた。
ナリアは、星の人が来ると予言した。
星の人におおよそできないことはない。だが、得手不得手はある。そう聞いた。ナリアが治せないほどのエリクの病を、その星の人は治すことができるのだ。
「星の人が来るんですね!」
リゼットは、心が躍るのを感じた。新しい星の人に会える。それはどんな人なのだろうか。もう一人のナリアだとしたら、素敵な人に違いない。
「早駆けで一日。馬は今ここに二頭。ナリアさんとエリクが一頭に乗るとして、あと一頭は、もう一人」
クロヴィスが計算をしていると、誰もがその星の人に会いたくて、手を挙げた。しかし乗れるのは一人だ。ここは、公平にくじ引きで決めることにした。
勝ったのはセリーヌだった。
「意外と、セリーヌみたいなのがくじ運強いのよね」
泣く泣く諦めたリゼットが、自分の引いたハズレくじを握りしめた。
「それでも、責任は感じます。エリクは必ず治します。後からくる皆に、いい報告ができるように」
セリーヌの言葉に、他の皆は強く頷いた。
ナリアはそれを確認すると、すぐにエリクを馬に乗せた。先程より苦しそうではないが、熱は下がっていない。セリーヌが医者と一緒に馬に乗るのを確認すると、すぐに馬を走らせた。
クロヴィスやリゼット、そしてジャンヌは、それを宿から見守っていた。そして、一時間ほど休むと、さっそく次の村に向かった。
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