真珠を噛む竜

るりさん

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第六章 ダイアンサス

運河の街へ

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 村のこれからは、いいほうへ向かうだろう。
 ナリアはそう言っていた。しかし、村長はこのままではいられないし、まだ花小人の真実が村に浸透するまでは大変な日々が続くだろう、そうも言っていた。
 リゼットたちは村の皆に別れを告げた。この村で泊まることはなく、次にある集落で休むことを決めた。
「次は、大きな町ね。久しぶりだわ、こんな大きな町」
 リゼットが地図を指さした。その指の先には大きな町のマークと、その説明が書かれていた。それを、クロヴィスが読み上げる。
「河岸の町で、交易の要衝。名物は河から運ばれてくる材木の船乗りの歌。観光船から見ることができる。米を使った酒の醸造が盛んで、リピーターになる観光客も多い。交易の要衝であるとともに観光地としても名高い。この運河に流れ込むのは清流で、川魚がおいしいため、食べ物は川魚の塩焼きである」
「川魚!」
 クロヴィスが読み終えると、エリクが目をキラキラさせてクロヴィスを見た。
「川魚って、川に住む魚だよね? きれいな水にしか住まないっていう」
「そうだな。まあ、この辺の水はどこもきれいだし、飲めない水のほうが珍しいからな。今度行く町はこれまでにない街だぞ。水辺だから、垢抜けている」
「楽しみだなあ、どんな街だろう」
 エリクは胸を躍らせていた。リゼットとジャンヌも同じだった。大きな川に面した街は初めてだ。生まれ故郷の町や、その周りの草原くらいしか出たことのない二人にとっては新鮮だった。
「じゃあ、準備をするか。町まではあと最短で一週間はかかる。それまでにたくさんの狩りをして毛皮を集めるぞ。エリクやジャンヌも、腕を上げるいい機会だ」
 クロヴィスは、そう言ってフレデリクの荷物を整理しだした。要らないものは売り、必要なものだけを残していく。そうやってなるべく荷を軽くしてお金を増やさないと、やっていけないからだ。一家の財布を握るリゼットもそれには賛成していた。
 ナリアは、すでに幌馬車の荷物を整理していた。エリクたちが出発するのを待ってくれていたのだ。幌馬車にはある程度の荷物は乗るが、馬に負担がかかってはならないため、二頭の馬を買っていた。
 ナリアは、エリクたちが準備を終えると、にこりと笑って先を先導して出発した。
 次の町は運河の町。
 ほとんどすべての人間が、心躍らせる町だった。
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