詩集・風の刻印

るりさん

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詩集・風の刻印

海上の間氷期

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海上の間氷期

僕たちの住んだ時代は
深い海へと呑まれていった
沈んだ都市と空虚の間に映ったもの
それは理を欠いて退化していく者達の
強欲が生み出した幻の島だった

秩序として打ち立てられたものが略奪ならば
生きていくための糧は秩序のもとに正当化される

この世界は一握りの土を奪い合い
一滴の水を求めてあえぐ者の世界だ

土を求めて
旅人はその平たく貧しい船底を海面に滑らす
合理化された法をくぐり抜け
ただ自らを掬い取る手を待つだけの
一握りの土を求めて

僕たちの住んだ時代は
深い海へと呑まれていった
かつて憧れた空に船が浮かぶ

僕らが憔悴しきった白昼夢を見ている間にも
杯一杯の水は空気に変わる
すでに乾ききった僕たちの喉を潤すものは
彼方まで続くその水ではないのだ

打ち捨てられた土地は
もう二度と僕たちを受け容れはしないだろう
僕らは進化を繰り返し
やがて退化に気づくだろう

歴史が繰り返され、掘り返されるがごとく
大きく冷たい氷河がやってくる
長く厳しい時を経て
新しい時代が海の底から浮上する
僕らを見捨てた大地とともに

しかし、決して忘れてはならない
僕たちの住んだ時代は
深い海へと呑まれていったのだ
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