この夏、僕は家出をした

海~4

「悪い。今さっきは答えなくて良いとか言ったに聞いて。」
福田さんは僕の頭を撫でながら言った。今の僕には何も話す勇気はない。話せばきっとあの人たちみたいに冷たい目を向けられるのではないかと考えてしまうから。
「そんな悲しそうな顔をするなよ。いや、俺がさせてしまったのか。俺は少し出かけるから、好きな時に出ていって良いからな。」
福田さんは僕の横を通り過ぎながら、「すまん。」と一言言い、出かけて行った。僕は一人残せれて、どうすれば良いのか分からなかった。
とりあえず、僕は今さっきの軒下に座った。猫吾郎はまだスヤスヤと夢の世界にいた。僕はそんな猫吾郎を横目に見ながら、「きっと僕のことを誰も探しに来てくれないよな。あんな置き手紙をしたのだから。」と考えた。軒下からは今さっき行った海が見えていた。海はとても広くてキラキラしていて綺麗だった。僕には海を見る資格はなかったのだろうか。けど、そんな資格がなくても僕は海を見に来ていただろう。僕は気がつけば、眠っていた。

「なんでこんなこともできないのか。」
「ごめんなさい。」
「翔はこの道に進むことだけ考えればいいの。そのためには友達も遊びも何もいらないの。分かった？」
「…分かりました。」
「こいつほんとの何も知らないな。」

「…い…ろ…。」
何か声が聞こえる。なんだ。
「お…こ…き。」
「おい！声が聞こえるなら起きろ！」
僕は大きな声で目を覚ました。目を覚ますと何か慌てなような顔をした福田さんがいた。
「帰ってきたら、泣きながら、寝ていたから起こしたが。大丈夫か？」
福田さんは不安そうな顔をしながら僕の顔を見た。僕は流れた涙を拭きながら、
「大丈夫です。すみません。」と言った。
福田さんは「そうか。」と言い僕の頭を撫でた。僕はなぜこんなにも頭を撫でられると心が落ち着くのか分からなかった。