恋の紹介

いってらっしゃい

　今、僕は空港にいる。何故空港にいるかというと、彼女が留学することになり、その見送りに来たのだ。　
「ごめん！今着いた。」と彼女はスーツケースを片手に手を振りながら歩いてきた。僕は彼女の所により、スーツケースを持った。
「大丈夫、僕も今着いたから。」
「そうなんだ。」
僕たちはゆっくり歩きながら、搭乗ゲートに向かった。
「ねえ、私が居なくてさみしくない？」
彼女が聞いてきた。
「さみしくない訳ないだろ。これまでずっと居たんだから。」
僕は正直なことを言うと留学に着いて行きたい。けど、僕も学校がある。留学制度がないから行けないのだ。
「そっか、やっぱりさみしいよね。私もさみしいよ。けど、留学して学びたいことがたくさんあるんだ。だからごめんね。」
「いいよ。僕は君の夢を応援するって決めてるから。」
「ありがとう。」
気がついたら、搭乗ゲートの近くまで来ていた。
「そろそろ、行くね。」
彼女はそう言うと、スーツケースを持って歩き出そうとした。僕は咄嗟に彼女の手を握った。
「こんなことを聞いたことがあるんだ。いってらっしゃいと行ってきますの意味。」
彼女は「どんな意味なの？」と言った。
「日本には言霊って言葉があるのを知っているよね。いってらっしゃいは行って無事に帰ってらっしゃいって意味が込められていて、行ってきますは、再びあなたの元に帰ってきますって意味が込められているんだ。」
僕はそう言うと彼女を抱きしめて、
「いってらっしゃい。」とだけ言った。
彼女は「大丈夫、一年後にちゃんと帰ってくるから。じゃあ、行ってきます。」と言った。そして、彼女はスーツケースを持って搭乗ゲートの中に入っていった。
「無事に帰ってきて。」と心からそう願い、彼女を見送った。

　一年後
僕は彼女を迎えに空港に来た。搭乗ゲートの所で待っていると　彼女がスーツケースを持って早歩きをしながら、僕の所に来て抱きしめた。そして「ただいま」と彼女が笑顔で言った。僕は、笑顔で「お帰り。」と言い、彼女を抱きしめた。