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11話

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 「失礼ですが、校長先生。それでしたら五組にいる小島君はどういうことでしょうか。勉学において秀でた成績を修めている彼が一組にいないのは、私としては不思議でしょうがないのですが」

 一度も言葉を交わしたことがないにもかかわらず、会長が俺のことを知っていたのは意外だった。だが、会長が俺の名前を出したことでみんなが一斉にこちらを向いているのはなんとも居心地が悪かった。

 「さすが生徒会長だ。いいところに注目するね。確かに今回のクラス分けは優秀な者から一組に振り分けているが、それじゃ勝負事になった時に初めから結果が見えていてつまらないとは思わないかい?  一組はトランプの七並べで例えたら六と八ばかり持っているような者だ。当たり前に強い。だが七並べではワイルドカードであるジョーカーがあるはずだ。それに該当するのが小島龍君ということだよ。知識は重荷にならない武器となる。研究者の方から一人生徒を選んでくれと言われた時はお陰ですぐに決まったよ」
 
 俺は校長の説明にあんぐりと口を開ける。きっと周りから見れば、さぞアホな顔になっていたことだろう。

 ってことはなんだ。本当なら存在したはずの優秀な仲間たちと切磋琢磨できる機会がなくなったうえ、梓を起こす役割を交代できていたかもしれない可能性も奪われたってこと!?

 覚えとけよ、研究者どもめ。あとは俺の名前を出しやがった校長も。

 はあ、俺がジョーカーとか本当に勘弁してくれ。心の嘆きは体育館の天井へと吸い込まれていった。






 校長先生の話が終わり教室に戻ったあと。ホームルームを終えた俺は今梓、夏樹、白百合先生と七並べをしていた。白百合先生が校長の七並べの話を聞いていたらやりたくなったと言ってトランプを持ってきたのが始まりなのだが、教師としていいのか、これ。

 「校長先生の話、研究と言っていましたが僕たちは去年と変わらずに過ごせばいいってことですよね?」

 夏樹は自分の手元からカードを出しながらみんなに聞いていた。七並べはすでに中盤に入っているため、全員会話を交わしながらも視線は手元のカードと机上に出されたカードの間を行ったり来たりしている。

 「おそらくね。生徒の学校生活に影響が出るようなことを国も校長も認めることはないはずだ。安心したまえ。でも私もさっきの話初めて聞いたんだよな」

 「え?  先生にも事前に伝えられてなかったんですか?」

 「いや、初耳だと思って隣のクラスの担任の先生に聞いたら職員会議で言っていたらしい。私あれ基本寝てるから」

 大丈夫だろうか、うちの担任……。五組は情報弱者になるんじゃないかと心配する俺の前で先生は悩ましげに眉根を寄せていた。
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