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8話

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 「違う、違う。俺が言いたいのは目標に到達するまでの方法がたくさんあった方がいいだろってことだよ。例えばゲームで剣での攻撃が通じない敵が出てきたら、梓ならどうする?」

 俺の質問に梓は急に真剣な顔をして考え始める。いや、別に軽くでいいんだけどな。

 「魔法とか、別の攻撃手段を使って倒すとか?」

 ゲームに例えたのがよかったらしい。今回は梓の頭の中でこんがらがることなく、答えが出てきたようだ。

 「そうそう。そんな感じで目標までの道のりが何通りもあった方が、進んでた道が塞がれても別の道を選べる分有利だろ? それと一緒で推薦が取れなくても一般入試で進学できるように俺は勉強してるんだ」

 おおと梓は感心してくれる。こんなふうに思っていることを何でも話せる友人はそう何人もいるわけじゃない。だから、たまには……お礼を言っとくのも悪くないか。

 「梓。いつも俺の話を聞いてくれて、そのあ――」

 だが、俺がお礼を言い切る前に梓が遮った。

 「だったら目標までの道のりだけじゃなくて、目標も増やしてみない?」

 「???」

 一体何を増やすというつもりだ? というか目標を増やしたら、その分やるべきことが増えて今以上に大変になるじゃないか。やっぱりこいつ俺が言いたかったこと全然分かってない。お礼を言って損するところだった。危ない、危ない。

 「私を将来も養って、起こす役割を一生続けるために頑張るっていう目標はどう?」

 え? 何? 梓のためにお金を稼いで、召使いのように朝起こすの? 冗談じゃない。そんなの特殊訓練を受けたマゾしか喜ばないだろ。

 そんな俺の心の中が全く読めていないらしく、梓は目をキラキラさせながら聞いてくる。どうやら正気のようだ。だから、俺は

 「あ、痛い!  ちょっと何するの!」

 返事の代わりに梓の脳天に向かって軽い手刀をお見舞いしてやった。






 体育館に着くと、すでにクラスメイトは整列を終えてしまっていた。今から入っていっては列を乱してしまう。

 「仕方ない。一番後ろに並ぶか」

 一番後ろに立つことになったのは予定外だったが、そのおかげで三十名×五クラスで構成された二年生全体を見渡すことができた。自分たちのクラスである五組から順に四、三、二、一と見ていく。クラスは変わっても知らないやつは知らないし、有名なやつは知っている。例年ならそれだけのはずなのだが……

 「二年一組豪華すぎないか」

 思わずこぼれた言葉を梓の耳が拾う。俺の目線を追って同じ方向を向いた。
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