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7話

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 「頼むから素直に『寝坊』って書いてくれ。なんでそこで心底不思議そうな顔ができるんだよ」

 口を尖らせる梓に頭を抱える。二年生になってこれからは一年生を引っ張っていく役割も増えるだろうなんて考えたこともあったけど、俺はその前に梓を引っ張り続けなきゃいけないのか!? 

 よくよく考えたら……俺の一年生の時の高校生活、梓に振り回されて全然落ち着けなかったんだ。あまりにも忙しかったせいで記憶が欠落していたのか、梓を迎えにくる前は去年は淡々と毎日を過ごしてたと思ったけど、そうじゃない。

 今年もこのトラブルメーカーに巻き込まれ続けるのだろうか……

 いや、断じてそうなるものか。決意を新たにした俺の前で梓は渋々といった様子で遅刻理由を二重線で消すと、寝坊と書き直した。





 
 「ねぇ、龍は毎日何時に起きてるの?」

 間もなく全校集会が行われる予定の体育館を目指して歩いていると、不意に梓が尋ねてくる。その手には遅刻届がしっかりと握りしめられていた。

 「日によって若干前後することはあるけど、だいたい五時くらいかな」

 「ご、五時!? 龍の家ってお寺かなんかだっけ?」

 そんなわけないだろ。こいつ何年俺と幼馴染やってるんだ。

 「昔から変わらず、サラリーマンと専業主婦だよ。今は二人とも海外にいるけど」

 朝五時に起きていることが驚きらしく、梓は信じられないと目を丸くしたまま首を振っている。毎朝あれだけギリギリまで眠ることができる梓の方が俺には信じられない。

 「龍はなんでそんなに早起きするの?  私を起こすのなら、もっと遅く起きても大丈夫だよ」

 「いやいや、なんで俺の生活が梓中心に回ってるみたいになってんだ。朝早く起きているのは勉強のためだよ」

 思わず拳を強く握りしめる。そんな俺の様子に梓はキョトンとした顔で小首をかしげた。

 「勉強?  それなら去年もずっと一番だったんだし、やる必要ないんじゃ……」

 「まぁ、それはな。だけど俺の目的は学年で一番をとることじゃない。大学への推薦を学費免除付きでもらうことなんだ」

 あまり声を大にして言えないが、正直なところ我が家は裕福じゃない。だからこそ、なんとしても推薦を勝ち取りたいのだ。

 「龍ならどこの大学でも推薦もらえると思うけどなー」

 「ありがとう。確かに第一目標は推薦をもらうことなんだけど、うーん。なんていうか……大学受験って、どこかゲームと似た部分があると思ってて」


 「ゲームみたいに簡単ってこと!?」

 あらやだと近所の主婦のような仕草でわざと口元に手を当ててみせる梓。反応するの面倒だからスルーでいいか。
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